3:脱出後ザイル王国にて
婚約破棄&聖女称号剥奪宣言を受けて直ぐ、
ショックを受けたフリをして、
とっとと我が家ウェストン家の王都邸に戻ってきた。今、皆寝静まっている。
ここからは時間との勝負。闇に紛れて脱出距離を稼ぐぞ。
それに私には光の高位精霊シマ社長とモモ先生がいるので暗かろうが大丈夫。
「この家からもオサラバなのぉ〜」
「オサラバオサラバ。早く逃げなきゃな。あのクソ夫婦に見つからんように」
「うん、婚約破棄されたこととかバレたら金持ち変態ジジイに嫁がされかねないからね」
ウチの両親は残念なことに毒親というやつだ。
私の幸せよりも自分達の利益が1番。
娘が困っていようがお構いなしなのだ。
多分、婚約破棄の慰謝料も入ってくるだろうから、それが私に出来る最期の親孝行だね。
王命(正しくは勝手に王族の第2王子が)?で聖女の称号剥奪と婚約破棄されたしこれで安心して家を出れるわ。
こんな家族でも王命を無視して私が逃げた責任を取らされたら夢見悪いって思っちゃったの。
キレイに婚約破棄出来たらいいなって願っていたんだよね。
さぁて、金持ち変態ジジイに嫁がされる前に逃げるとすっか。
無限収納に自分の部屋の荷物をゴッソリぶち込む。そうすると、シマ社長とモモ先生と3人、家を抜け出した。
◇◇◇◇◇◇◇
「いえぇ~い!」
大成功〜!今夜は呑むぞぉお!
空はめっちゃ曇ってる。だけど、私の心は快晴だ。
思わず前世の某芸人さんバリに叫んで、周りの人にめっちゃ見られたけど後悔していない。何なら、気持ち的にはJUSTICEまで叫んでも良いぐらいだ。
「シャーロット、変人扱いされたくなかったらお口はチャックだからね」
「シマ社長、しょうがなく無くない?あの地獄からの脱出成功だよ?」
「シャーロットの気持ちは分かるよぉ〜。だけどもう、変人扱いされてるかもよぉ〜」
「そうだな、モモ。シャーロットは前から変人扱いされてた気がする。でも、シャーロット、黙っていれば変人とはバレないんだから気をつけろよ」
サラッと残念なことを言われた気がするけど、気にしなぁい!
思い返せば私の人生、生まれ変わってもずっと長い間社畜の様な生活だった。
そんな生活から解放されたら変なテンションになるさ。しょうがない。しょうがなく無くない?
前世と今世合わせてピー歳、地獄を味わった祖国を脱出して精霊’ズと新天地を目指すのだ。
そんな私は前世日本の限界社畜OL兼喪女だった記憶を持って生まれた。
魔法が使える世界で伯爵令嬢として生まれ、のほほんと暮らしていたが、転機が訪れたのは7歳。
神聖魔法の適性と膨大な魔力量で聖女認定されちまった。お陰で第2王子と婚約。第2王子妃教育と聖女の教育と活動が待っていた。地獄の始まりである。
婚約は王命だったし、諦めながら今世も地獄かな?というような生活を送っていた。
「それにしても良かったね。バカ王子が婚約破棄してくれて。オマケに聖女の称号剥奪でしょ?貴族が大勢いる前で宣言してくれたんだから簡単に覆せないし」
「うん!外遊に出ている王様が国に戻って来る前に逃げ出せたから私の勝ち!」
「下手すると側妃とかにされてこき遣われそうだったもんねぇ〜、逃げて正解だよぅ~」
因みに実家は超当てにならない。私がこき遣われると分かっていようが、喜んで側妃に差し出すような輩どもである。
「隣国のザイル王国の国境の街に今いるでしょ。最終目的地は、この街から国境を越えて直ぐのアダルベルト皇国。もうちょっとだね。
今日はもう遅くて国境越えの馬車は出てないそうだから明日移動かな?」
「宿屋は馬車で聞いたところにするの?」
「うん、この辺知らないしね」
「目がさっきから居酒屋ばかり見てるよぉ〜。宿屋先に決めないと野宿になるよぉ〜」
バレてたか!だって美味しそうな匂いもするし、飲んでる人達皆楽しそうなんだもん!気になるし!
それに、飲みたかったが祖国のフリーデルから大分離れないとみつかりそうで飲む気はしなかったのだ。流石にここまでくれば大丈夫、気も緩むものだ。
******
教えてもらった小綺麗な古い宿屋で部屋を確保。晩ご飯は断って、現代でいうところの居酒屋風な店で食べることとする。さぁてお店探しね。
「それにしてもお疲れ様だよぅ~。7歳からよく頑張ったよねぇ。今夜は羽目を外してもワタチとシマが運んであげるからねぇ~」
や、やさしい!こんな感じで私がツライ時2人が助けて、心の支えになってくれた。感謝しかない。
「今夜だけだからね。あと、さっきみたいに急に叫ぶのとかはナシだから!」
夜の帳が下りた通りには居酒屋やバーのような店が建ち並んでいて、楽しそうな笑い声も聞こえてくる。この世界では飲酒が16歳からオッケーだし、何時になったら出歩けないとかの決まりもない。つまり私がウロウロしようが、飲酒しようがノープロブレムなのだ。
「シャーロット、あっちの居酒屋にしなよ。古いけど地元の女性客も多いみたいだ。価格も良心的だし、」
「パンケーキがあったのぉ〜!」
2人は精霊だから、食べなくても大丈夫なんだけど、甘いものは別。大好物なのだ。
「ならそこにしようか!」
この世界は近代ヨーロッパの様な文化水準で、建物もそのイメージに近い。2人が見つけてくれた居酒屋もそんな作りで雰囲気も良かった。テンション上がるぅ~!
外の景色が見える奥まった席しか空いておらず、そこに座った。
精霊なので余っ程な人でなければ2人の姿や声は聞けないけど、パンケーキが急に減るのは流石にわかる。この席なら私が背を向けて座れば2人がパンケーキ食べても怪しまれないのだ、ラッキー!
いくつか(パンケーキも)料理とお酒を頼み、辺りを見渡す。店内は前世の電球色の様な光の魔導ランタンが灯っていて、何処か懐かしい気持ちになる。お客さんは観光客と地元民が半々といったところだろうか?地元民は作業着やエプロンを着けて、如何にも仕事帰りにそのまま飲みに来ました!といった感じだ。何かイイな。
出来上がった料理に舌鼓をうつ。頼んだのは蜂蜜酒に焼きたての白パン。ブラッディバイソンのシチューに粉チーズがかかった香草サラダ。
お客さんが多い訳だ、美味しい!いつもは冷めたご飯ばっかりだったからこの温かさが胃に染みてホカホカする。
2人はパンケーキに夢中だ。キュルキュルお目々がキラキラに輝いてる。お口に合ってヨカッタ。
「ここに決めてヨカッタよぅ~。これから毎日通おうよぅ~」
「毎日はチョット。アダルベルトに行きますし」
近日中に隣国のアダルベルト帝国へ行く予定なのだ。
アチコチの席で盛り上がってるけど、地元民みたいなお姉様方が大きな声で喋っているのが気になった。お行儀は悪いが役に立つことを話しているかもしれないので、聞き耳を立ててみるね。
チョットした好奇心で聞いたお姉様方の話が、私達のこれからを左右することになるなんてこの時の私は考えていなかった。




