閑話:滅びの第2楽章
一方その頃聖女シャーロットの居なくなったフリーデル王国。
シャーロットの家族ウェストン伯爵一家が晩餐を囲んでいた。
「シャーロットから連絡はないのか?」
シャーロットの父は鉱山を持っており裕福だが、使用人を奴隷のように扱っており評判の悪い男だ。シャーロットの父だけあって確かに顔はいいが神経質で軽薄なところが顔にでている。
「いいえ、御座いません」
美しさを武器に裕福な伯爵妻の座を勝ち取った人。
シャーロットの母は自分の利益に敏感。
それまでは夫同様愛人と日頃遊び歩いていたのだが、シャーロットが婚約破棄され聖女の称号を剥奪された話が貴族の間で出回ってからは家にいる。
家にいるのは婚約破棄等のショックで家を出てしまった我が子の帰りを待つ悲劇の母親を演じる為であって泣いている振りをしながらソロバンを弾いているのだ。特にシャーロットを心配しているわけではない。
シャーロットが生み出す名誉には惹かれるが。
王家的にはシャーロットに嫁入りして欲しい事には変わらないのだが、あの婚約破棄劇もあったことだし強く出れず、この母のご機嫌とりに尽力している。悲劇の母親を演じ注目を集める母は王家にとって無視が出来ない存在なのである。
「……」
シャーロットの弟サイモンは日頃からあの聖女の弟と言われ内心自分が1番注目されないことに苛立ちを抱える位にプライドが高かった。
学業(前世のアドバンテージで)も優秀、魔法(転生チートで)も優秀、しかも筆頭聖女として人気もある姉のシャーロットは彼にとって目障りだった。
だが、いざ居なくなると見向きもされなくなった。
彼はシャーロットの弟だから注目されていたに過ぎないのだ。
「程よく戻ってくればいいがな。賠償金をたんまり頂いた後でな」
王家には婚約破棄の慰謝料請求をして、シャーロットが家を出ることになった事を責め、更に慰謝料を釣り上げようとしている。
慰謝料を受け取った後に返却なんてないだろうから、シャーロットには程よく戻ってもらった方が都合が良かった。
そんな彼等の頭のてっぺんの毛束が頭を動かす度にびょんびょんと跳ねる。
N字になって形がついた強力なくせ毛は何をやっても落ち着かずイライラしていた。が、やがて王族と神職も同じ様になっていると知り、気になるものの今では選ばれた一族の気分でくせ毛を誇らしく思っていた。
—その時。
「にゃあぁぁぁぁん!!」
耳を劈くような猫の鳴き声が聞こえた。
皆が顔を見合わせた刹那、ウェストン伯爵、伯爵夫人、弟のサイモンの頭の髪の両サイドが一瞬で刈り上げになった。N字の剃り込みも入っている。頭頂部の毛がN字のようにハッキリとしたクセはそのままに、刈り上げられた頭。テクノカット風。
「滅びの第2楽章―」
何者かの囁きが聞こえた。
「なんだ?ちょっと頭がスースーするが…」
「あなた…髪、髪が…」
「父上、母上、髪!」
「なんだ、お前の髪!」
使用人は驚いた顔をしたまま微動だにしない。
主人一家の髪型が不思議なチカラで一瞬のうちに奇っ怪な髪型になった。
これは吉兆か、はたまた不穏な事の始まりか―?
時を同じくして王族、神職も同じ髪型に変わった。
前回のN字型のくせ毛については、お互いに王族もなっているから、神職もなっているからと安心材料にしていて、なんならいい事があるのでは?と楽観視していた。が、刈り上げは別だ。刈り上げだ。
未だに理由も分からない現象に彼等は戸惑っていたが、まだ更なる神罰が待っているのをまだ知る由はなかった。




