32:砦の占拠②
「…所でなにがあったのですか?スタンビートが起こりそうな所がこの辺りにありましたっけ?」
「いえ、そうではないんです。盗賊と思われる集団のせいでして」
「余っ程強い盗賊なんですか?」
「強いかどうかはよく分かりませんが結構な集団で東の魔の森の方へ繋がる砦を占拠してしまったんです。シャーロット様はご存知ではないでしょうが、砦はスタンビートが起こった時の防波堤の役割を担っていて、砦を通らないと東の森やその先のダンジョンに進めないのです。そんな所を占拠されたので、冒険者ギルドを上げて奪還に向かったのですがご覧の通りで」
相手が上手ってことね。
「砦なら軍とか駐在していたのでは?」
「それが、砦近くで爆発がありましてそちらへ向かった間に、ということのようです」
「陽動作戦にかかってしまったのですね。砦を占拠する程であれば何らかの要求とかしているんですか?」
「今の所はただ占拠をしているだけのようです」
意図が読めないな。捕らえられた仲間の釈放とか、金銭の要求とかあるものだと思ったのに。
と、シマ社長が念話で話しかけてくる。
『シャーロット、偵察に行ってこようか?ボク達の平穏な日常が脅かされる可能性があるものは排除しておきたいし』
『お願いします!』
流石の高位精霊、あっという間に姿が見えなくなった。
シマ社長が偵察に行ってくれている間にラビニアさんと色々交渉して、エリアハイヒールの代金は取らないその代わりに、上級ポーションの買取に色を付けてもらった。
「領主様も動いていらっしゃるそうですか、軍も冒険者達と同様にボロボロなのだそうです。砦を壊すことが魔の森の安全上出来ないので攻めあぐねているとか。
3日前に占拠されてからずっと膠着状態で、昨日薬師ギルドにポーションの協力依頼が来たのです。今、頑張ってポーションを作っていますが、間に合わなくて。シャーロット様が来て下さってよかったです」
よく見ればラビニアさんには濃いクマが出来ている。
上級ポーションは砦奪還作戦本部に持って行くことになり、あれだけあれば今日出るかもしれない重傷者は大丈夫だろうと言われひとまずは良かった。
ラビニアさんも今夜は眠れそうですと苦笑いを浮かべた。
「冒険者ギルドにも怪我人が収まらないので、隣のウチにも怪我人が運び込まれている状態です」
「なら、ポーションの材料があれば調合室で作るけど」
「残念ながら材料が…」
「そっかぁ……。えぇと。…私はこれからお買い物に行ったりして夕方には帰りますね。街にいる間は呼んでくれればヒールを掛けに来ますから。あと、私が聖女だってバレないように口裏を合わせてくれませんか?
上級ポーションは家で作って明日持ってこれるようにしますね」
「有り難いです!宜しくお願いします!」
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私は偵察に行ってくれたシマ社長の労いも兼ねて喫茶店でケーキを頼む。喫茶店の奥の周りに見えにくい席を陣取った。
『シャーロット、帰って来たよ。』
戻って来たシマ社長の表情は何処か硬い。
『シマ社長お疲れ様。食べながらでいいから、どうだったか教えてくれる?』
『うん。シャーロット、先ずこの件は迅速に正しく慎重に解決しないとイケナイようだよ。
それがね、盗賊だと思っていた人達はザイルのドハルバティ公爵の領地の村人だったんだ。今年の税が重すぎてさ、納めるのが困難だった村の女子供が人質になっているみたい。人質を解放する条件が東の魔の森砦の占拠だ。バカげているだろ?』
そんな事って…。
人質をとって、脅して悪いことをさせるような人が碌な人間であるわけない。恐らく人質は口封じで殺されるか奴隷にされるのが関の山だわ。砦を占拠している村人達も殺されてしまうだろう。
『黒幕はドハルバティ公爵?砦を占拠する理由って…?砦で指揮している人がいるの?』
『指揮する人は居たけど、村長だったね。でも、特に砦を占拠する理由を何かを知ってそうとか、これから更に事を起してやろうとする感じじゃなかったな。砦を守るのに精一杯、戦いも不慣れな様子だったし』




