第2話
北海道へのロシア軍侵攻の前、半年ほど前から極東アジアを含めた国際情勢は激化していた。
(朝鮮半島)
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)はミサイル発射実験を含めた大規模な軍事演習を行った。
北朝鮮国営テレビの女性アナウンサーは全世界に向けて声明を発した。
「我々人民の偉大なる将軍様の指揮の下、米国帝国主義者、その傀儡たる南朝鮮(韓国)と日本帝国主義者達の野望を挫くべく、我が国の勇敢な人民軍の実力を世界に示すことを決定された。もし、侵略戦争の意図を持って我が国を恫喝しようとするならば、愚かな帝国主義者達は自らの愚行を後悔する事となるであろう」
北朝鮮外務省からも「我が国の国防のための必要な大規模軍事演習である」と説明されたが、北朝鮮国営テレビの女性アナウンサーの過激な言葉は「場合によっては核ミサイルを発射する事も躊躇わない」ということを意味していた。
38度線、軍事境界線においても北朝鮮軍の大規模な部隊の集結が確認され、非武装地帯における活発化する北朝鮮軍に対して、在韓米軍と韓国軍は警戒レベルを上げ、半島には緊張感がみなぎっていた。
(中国)
中国(中華人民共和国)ではチベット・新疆ウイグルそれぞれの自治区で分離独立の動きが活発化していた。
ウイグル族の過激派は火炎瓶と爆弾を使ったテロ活動を活発化し、武装警察との衝突を繰り返していた。チベット自治区においても同じ状況で、2つの自治区を担当する中国軍(中国人民解放軍)西部戦区司令部は大規模な暴動に備えて警戒を強めていた。
インド、ベトナム、フィリピンが合同の大規模な軍事演習を行うと発表したのはその数日後のことだった。インド海軍の空母機動部隊がベトナム軍とフィリピン軍と合流する形で行われるもので、印越比3か国の共通の国境問題の相手国である中国を意識したものであった。中国政府は猛反発し、ベトナムとの国境警備防衛を担当する中国軍の南部戦区に所属する全兵士に非常呼集をかけると同時に厳戒態勢に入るように命じた。
(イラン)
経済危機、通貨リアルの暴落、物価高騰をきっかけに、イラン全土で反体制デモが勃発していた。
アメリカは中東へ海軍の空母打撃群を派遣。イランに対し、「ウラン濃縮の永久停止」、「イランの弾道ミサイル計画への厳格な制限」、そして「ハマス、ヒズボラ、フーシなどのイスラム教武装組織への支援の完全停止」という3つの主要な要求を提示した。これに対してイラン国防省はイラン軍、イランの精鋭部隊である革命防衛隊に警戒態勢を最高度に引き上げることを指示し、「我が国へ武力攻撃をした場合にはホルムズ海峡を直ちに封鎖する」と警告した。
その後。ホルムズ海峡、ペルシャ湾で小規模な戦闘が確認されたが、ホワイトハウスとアメリカ国防総省は「自衛の範囲の戦闘だ」と声明を出した。これに対してイラン外務省は「アメリカ側の先制攻撃で我が国の最高指導者が亡くなられた」とアメリカを名指しで激しく非難した。アメリカは「イランによる事実無根の捏造である」と否定した。
(ロシア)
ロシアによるウクライナ侵攻は数年前からロシア軍、ウクライナ軍、両軍共に膠着状態が続き、形ばかりの停戦状態となっていた。
ロシア軍は突如、東部軍管区の南樺太、北方領土を中心にクリル諸島防衛を目的とした大規模な演習を行うと通告し、日本政府はロシア政府に対して抗議の声明を発表した。
ロシア国防省はクリル諸島防衛を目的とした大規模な演習、「スターリン演習」を行うと発表し、「国後島と択捉島に駐留する第18機関銃砲兵師団がロシア本土からの増援部隊と共に我が国の領土であるクリル諸島を防衛するものである」と西側記者に説明した。




