表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/38

6−8. 先代夫人の帰還 (2)

 マリエルも回復した為、質問が出来る様になった。

「詐欺事件があのタイミングなのは、計算していたのでしょうか?」

マリエルが上を向ける様になったのをダイアナ・クラレンスは好意的に捉えた。

「コクラン家に向かうのは人手を借りる為と分かるでしょうから、当然、人手が増える前に詐欺なり襲撃をするべきと考えたのでしょう。ただ、そこは使嗾する側からは成功する必用はなく、ただ連続した騒ぎが起きてクラレンス家に責任が及べば良いという考え方でしょうね」


「さて、ここで問題があるの。4件目の襲撃は王都近郊の観光地に向かう途中で襲われたけど、庭園は王領にあるので、その管理は王宮管理部門がやっていて、ブリジットの蜘蛛の巣の糸が入り込んでいないの。だから、情報はどこで漏れたと思う?」

ダイアナはマリエルを見た。

「家の者から漏れた、と言う訳ですか?」

「そう。その説明は後でエドガーからあるので、そういう者がいた事だけ覚えておいて」


「それで最後の5件目については、これはブリジットがフォーブス家を焚きつけた訳ではないのね。ハミルトン家の花見会に無理やりブリジットが押し込んだ。ブリジットと現ハミルトン公は魔法学院で同級生だったの。そして上位貴族同士だから、ハミルトン公はN・B対抗同盟よりブリジットに近い。王妃様に聞くと、『多分、現国王陛下に代替わりしてから、王弟の家で無くなったから影響力が低下している、それを取り戻す為に無念の家の後押しをしたのではないか』と仰っていたわ」


 その言い方ならマリエルも気付く。

「つまり、ノーマン氏が帰って来る事が漏れていて、強行したと?」

「そう。ところが、入国管理は第三騎士団が行っていて、二日に一回の機密の早馬で王都に連絡されるの。だから、それが漏れるとしたら騎士団にブリジットの蜘蛛の巣の糸が入り込んでいると言うことね」


 これにはマーティンが顔を顰めながら訊ねた。

「じゃあ、僕が騎士団でいじめられたのもブリジット・ゴードンの仕業だと?」

「いえ、それは確認出来なかったわ。普通にやっかまれていたのじゃない?」

「母さんは僕に冷たいよ…」

「ノーマンが跡を継いだ場合、悪評が流れる可能性が高かったから、文官になるより実力主義の騎士団の方が良いと思っていたのよ」

「そもそも向き・不向きがあるじゃないか…」

「そこはもう少し強くなって欲しかったのよ」


 ここには婚約者候補の他家の者が一人いるのである。あまり母親に甘える様な発言は控えた方が良いのではないか、とマリエルは思ったし、執事も思っていた。まあ、今更か、と二人とも思ったのだが。


「まあ、その辺りはN・B対抗同盟のリストに入っていたから、処理をどうするかは王家の匙加減によるでしょうね。それで、もう一件、漏洩情報があるわね。マリエル、分かっているでしょう?」

自分に振る以上はあの件か、とマリエルは答えた。

「メアリの身元情報ですか」

「そう。その件はエドガーから報告するわ」


 そうして老執事がダイアナの横に進んで話しだした。

「そもそもの疑問は、二件目の襲撃者、ジェイソン・アーバスノットと当家の護衛だったジェイクの接点ですね。顔を知らなければ、手引きをしてやると申し出る事も出来ませんので。よって、ジェイソンの正体をジェイクに知らせた者がいたと考えられます」

マリエルもそれは思った。偶然会ったにせよ、話しかけるには確信出来る情報が必用だ。


「そして、三件目の襲撃の際に賊の一味が書斎に侵入する、これも事前情報がなければ出来ませんし、当家の護衛を出し抜くには手引きした者もいると考えました。二件目と併せて考えれば、外回りに出る事が多いメイド・侍女が疑われました。その中でメイドのジル、そして護衛のキースには襲撃当時の目撃証言が無かったのです」

(あれは私の対応を見る為に態と突入させた訳ではないのか)

マリエルは執事が敢えて賊を書斎に入れたのかと疑っていたのである。そしてメアリ=マリエルの行動を直に確認したのかと考えていた。


「続けて、四件目の襲撃も問題です。王領内の庭園内部の貴族の予約は機密事項です。それを関係者が意図的に漏らせば、当主様が受けたように襲撃を受ける事もあるでしょう。これも家人が漏らしたと考えますが、ジルとキースにそう言った行動はありませんでした。それでも何らかの情報伝達手段があると思われました」

(それはそうだ。行動予定が不明でも跡をつける事は出来るが、一本道で待ち伏せするには事前情報が必用だ)

予約情報が機密なら、家人が漏らしたと考えるべきかとマリエルも思った。


「極めつけはメイドのメアリの身元が不審な件。これについては、ランバート家の侍従と当家のメイドのジルが事前に会っているのを確認しました。身元が不審、ここまでは分かるでしょうが、リズリー家に辿り着くのには時間がかかります。オークニー子爵の方には当家の監視も付けてありましたので、そちらには接近しておりません。だからジルはメアリの正体を知る者、と結論付けました」


「これで、一件目の共犯者達と、二件目の共犯者がともかく疑いを下女・メイドのメアリに向けようとした理由が分かります。身元が不審なのですから、推薦人に疑いが向けば、オークニー子爵がリズリー家に脅されたとでも証言して、そちらに捜査の目を向ける作戦でしょう」

マリエルとしてはまた落ち込む情報だった。なるほど、襲撃が成功すればそちらに疑いを向けさせる。失敗しているからジルという蜘蛛の糸はそのまま姿を現さなかったんだ。


 執事は微笑んで声を上げた。

「マリエル様、俯く必要はございません。あなた様がいればこそ、当主様は今もこうして生きているのですから」

(くそ、こいつは私の心理まで読んで泳がせていやがったな!)

マリエルの心理としてマーティンを助ける、しかもその力もある、そこまで読み切ってこの執事はメアリ=マリエルを泳がしていたのだろう。

 大体の裏事情は執事が説明してくれる、っての元ネタはアシモフ先生?それとももっと上流があるんですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ