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6−7. 先代夫人の帰還 (1)

 翌日曜の10時に先代侯爵夫人、ダイアナ・クラレンスがタウンハウスに戻って来た。一番豪華な応接室にダイアナ、マーティン、マリエルが集まり、執事のエドガーも控えていた。


「私がマーティンの母、先代侯爵ハーマン・クラレンスの妻のダイアナです。マリエル・リズリーさんの婚約者教育は私が指揮します。だから、以後、私はあなたの事をマリエルと呼びますし、あなたから見て私の事はマーティンの母なので、お母様とだけ呼んでください」

「分かりました」

「また、下女、あるいはメイドとしてのメアリなる人物はいなかった事にします。あなたは最初から侍女として当家で働いていた、だから下女メアリなる詐称は無かった事になります。よって謝罪も贖罪も一切不要です」

マリエルとしてはそう割り切れないが、侯爵家の総意がそれであるなら承諾するしかなかった。だから、ただ深く頷いた。


「さて、マーティンにもマリエルにも説明が必用でしょうね。まず今回の裏側について、私の兄のスティーブ・コクラン伯爵と複数の貴族からなる集団が長年調査して来た内容が生かされ、概要が判明しています。『N・B対抗同盟』…子供っぽい名前だけど、男っていうのはそういう子供っぽい名称を何時までも好きなものだから仕方がないわね」

マーティンが口を挟んだ。

「『N・B』って言うのは『ニナ&ブリジット』の事?」

「そう。マーティンはお兄様から詳しく聞いた?」

「簡単な事しか聞いてないよ」

「じゃあ、説明しましょう」


「先代スペンサー伯爵夫人のニナ・スペンサーとゴードン侯爵夫人のブリジット・ゴードンは、魔法学院の同級生で、1年と2年の間に二人の男子生徒と三人の女子を退学に追い込んだの。最初の男子は婚約者以外に手を出して、その婚約者がニナに泣きついたらしいの。それで表ではニナが糾弾して、陰ではブリジットが仲間を使って扇動して、退学に追い込んだそうよ。それからはブリジットとその仲間と衝突した女子三人と男子一人が同様に退学に追い込まれたとの事。ニナとブリジットの同級生だった男子生徒達は、その二人目の男子の無念を見せられて、いつか復讐してやると心に決めたそうよ」


(その思いを中年になるまで抱えていた?それも凄い執念だと思うけど)

マリエルとしてはそんなに長い時間恨みを抱えていられる自信は無かった。


「とりあえず魔法学院の騒動は、彼女達の2年下に今の王妃様、当時は王太子の婚約者が入学した事で収まったの。流石に将来の王妃の前で学院の支配者を気取る訳にはいかなかったのでしょうね。ただ、そう言う事で、ブリジットの方は王妃様に思うところがあった様でね。今回、王妃様の友人である私の嫁ぎ先のクラレンス家が騒動を起こした事で、王妃様の権威を揺るがす事が出来ると思った様ね。それで被害者6家の関係者を唆して、クラレンス家に関する騒動を大きくして何らかの処分に追い込もうとしたと考えられるの」


 そこでマリエルとしては言うべき事があった。

「あの、発言してもよろしいですか?」

「ええ、どうぞ」

「リズリー家にもゴードン家の手が回っていると言う事でしょうか?」

「あなたは実行犯の殆どを見ているわね?全員被害者の親ではなく兄弟や甥と言う子供世代が唆されているでしょう?だから、リズリー家には話は行っていないと思うわ。ブリジットとその手下達は子供世代、つまりあなたを狙ったの。偽名である下女メアリの推薦状を書いたのはオークニー子爵。彼がそんな危ない橋を渡る理由があったと思う?」

「…オークニー子爵の娘のベリンダが領地が近くて知り合いで、話をつけてくれたんです。『クラレンス家の内情を見たいでしょ?』って言われて…」


「N・B対抗同盟の20年がかりの調査で、オークニー子爵の仕事上の付き合いがある伯爵家の夫人が、ブリジットが社交界に張った蜘蛛の巣の一本だと言う事よ」


 さすがにマリエルはショックを受けた。自分の怒りで行動した筈が、実は誰かの道具として踊らされていたなんて…


「追い討ちになると思うけど、言わせてもらうわ。3家がクラレンス家を訴えたあたりから、3家に対する風当りが強くなったでしょ?これもブリジットの蜘蛛の巣が社交界に広めた悪評よ。扇動とは先導なの。普通は言う事を躊躇う様な事を先導して広める事で、人々がそう言う誹謗中傷を話す抵抗感を無くす事が出来るの。だから、被害者である女性とその家族が責められる様になった。そうする事で頭に来た被害者家族を復讐に追い込む、これがブリジット達の狙いなの」


 マリエルは流石に俯いた。自分の感情まで道具として使う為にコントロールされていたなんて…


 そんなマリエルを見て、マーティンが椅子を近づけてマリエルの膝の上の手の上に手を重ねた。


「そうして、そこまで追い込んで、家を守るという意識の低い子供世代に復讐の手助けをする様な行動を取ったと言う訳。そして散発的に復讐を行っても騒ぎが大きくならないから、タイミングもコントロールして、連続して復讐を行わせたと言う訳」


 言葉が出ないマリエルに代わって、マーティンが声を上げた。

「それはN・B対抗同盟が調べて分かる事?そこまで詳しく分かったなら、制止してくれれば良かったのに」

「いえ、事件を起こした人達の関係者がブリジットの蜘蛛の巣の一端と思われる人と関係していたのよ。実は、ハミルトン公爵の花見会の前に、N・B対抗同盟の知るところの蜘蛛の巣の人間関係の情報が王室に提出されたの」

「同盟は王室に取り入る個人的なルートを持っていたの?」

「だから私が領地から呼ばれたのよ。極秘裏に王都に戻り、情報を持って王妃様と会ったのよ。私が王妃様と会ったと分かれば、ブリジット達は警戒する可能性があったから、クラレンス家には伝えずにコクラン家に滞在していた訳」


 マリエルもそろそろ回復して来た。それで頭が回って来た。

(クラレンス家には伝えなかった、は公な意味でしょうね。執事には伝えた筈。彼なら上手く秘匿してそれなりに行動出来るでしょう)

 この話は次回に続きます。

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