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6−4. 男の言い分 (3)

 ノーマン元クラレンス家子息から3ft離れたところでマリエルは立ち止まった。

「ソフィア・リズリーの妹のマリエルです。聞いても無駄とは思いますが、一応聞きます。ソフィア・リズリーの自殺について言う事はありますか?」

もちろん、ノーマンは認める事はない。

「知らない女が勝手に死んだからって、特に言う事はねぇな。下位貴族の女は下品な奴が多いからな」

跪いているノーマンはマリエルより視点が低かったが、嘲る視線をマリエルに向けた。


「なるほど、下品で屑だから上位貴族から縁を切られた男がこの場で一番下品な訳だ。分かっているのか?侯爵家の跡取り、その立場が無ければお前なんて誰も見向きもしない、下品で馬鹿で不細工な男だって。なあ、教えてくれ。外国で平民にまみれて、お前が口説いて靡く女が一人でもいたのか?」

一瞬、ノーマンは呆気にとられた。だけれど、この男の価値観として、言い返さないではいられなかった。

「決まってるだろ?俺は6人も女を口説き落とした男だぜ?外国でも入れ食い状態だ」


 マリエルは男を見下ろし、せせら笑った。

「一瞬口籠ったな?やっぱり外国では誰も見向きもしなかったか。当然だな。他人を馬鹿にしているのが表情に表れているお前に付いて行く馬鹿は外国にはいなかっただろ?侯爵家の跡取りじゃなくなったお前は今、全く価値の無い屑なんだよ。ただのお前は、ただのゴミなんだよ。だから貴族の前でもゴミらしい発言ばかりする。真面な人間だったら出来ない様な恥ずかしい発言が平気で出来るお前は、やっぱり屑だとこの場にいる全員が思ってるよ。正当な評価がされて良かったな、ゴミ!」


 ノーマンは頬を紅潮させた。

「手前ぇ、下位貴族風情が失礼な事を言って、ただで済むと思うなよ!」

「本当に馬鹿だな、お前は。最初にお前は侯爵家から縁を切られたって言われたろ?もう忘れたのか。本当に馬鹿だな。馬鹿で不細工で下品で屑なお前が平民なら、もう騙される女は一人もいないだろう。お前はこれから、本当のゴミとして生きるのさ。自覚を持てよ、ゴミ野郎!」


「適当な事ばかり言ってるんじゃねぇ!俺がそんなに不細工だって言うなら、その俺に靡く女は馬鹿で趣味が悪いって事だろうが!ソフィアの妹って言ったな!?あの女なんて、自分から俺にすり寄って来たんだぜ!?あの女こそ馬鹿で屑だろうが!」

「さっきの事も忘れる馬鹿なお前の事だ、どうせ適当な嘘を言ってるんだろ?お前と同時に魔法学院に通ってた人間は全員、屑なクラレンス家の跡取りの顔を覚えてるんだ。自分から屑に近づく女なんているものか」


「へっ!お前こそ目が腐ってるぜ。学院で3人、卒業後に3人孕ませた俺の顔が悪いってんなら、その女達全員が馬鹿で趣味が悪いって事になるだろ」

クラレンス家の庭園に並んだテーブルに座る6家の全員が険しい顔をした。遂にノーマンが6人と肉体関係を持った事を認めたのだ。

「趣味には目を瞑ったんだろ。屑が侯爵夫人の座を餌に口説いたから、目が曇ったんだな」

「目は開いてたぜ?侯爵夫人にしてやる、って言ったらどいつもこいつも目を輝かせて股を開きやがる。お前も姉が被害者だと思ってるんだろうが、実際にはお前の姉は淫売だったのさ!」


「さっきまで知らぬ存ぜぬと言ってた若ボケが何か言ったって信用出来ないな。また都合よく嘘を吐いてるだけだろ?」

「けっ!お前こそ馬鹿だから現実が見えないだけだろ?言ってやるぜ、ソフィアもベティもステファニーも、カリーナもジョゼフィンもヘイゼルも、侯爵夫人の椅子に目が眩んだだけじゃない。二度目からは向こうから会いたがり、ベッドの上では大喜びする淫乱揃いだったんだ。さんざん喜ばしてやったのに、子供が出来たら俺のせいにしやがる。無責任にも程があるぜ」


「馬鹿だな、騙した事は認めてやがる。口約束だって貴族の間では契約なんだよ。それを一方的に破棄する段階で、お前は詐欺師なんだよ」

「けっ!だったら俺が罰せられてる筈だろうが!所詮口約束は口約束、そんな事言ってないって言えば済む事じゃねぇか!大体、男が遊んでも死ぬほど悪くは言われねぇが、女は死ぬほど責められる。男は悪くねぇ、股の緩い女がいなけりゃ遊び様がないんだからな!俺よりお前の姉達の方が悪い、それが世間の評価なのさ!そして妊娠と言う罰を女だけが受けて、男は受けない。ほぁ~ら、男と遊ぶ淫乱女だけに罪があるのさ」


 口を割らせる為に挑発を続けていたマリエルだが、そろそろ我慢の限界に近づいていた。

「妊娠は男と女の共同作業の結果だろうが。女に罪があると言うなら、男にも等価な罪があるだろ」

「だったらそういう罰がある筈だろ?無いんだから、男は悪くないんだよ。そういう罰が無いんだからな!」


 クラレンス家の人間達も、そろそろメアリ=マリエルの背後に怒りの炎を幻視していた。


 マーティンは思っていた。

(兄は本当に人の心が分からない。どころか相手が怒っているのに無事でいられると思っている。世界はメアリの怒りで揺られていると言うのに、それに気付かない。本当に侯爵家を任せてはいけない人間だったよ)

…別に世界は揺れていなかった。メアリの怒りを感じてマーティンが震えているだけだった。


 ぷちん、マリエルの中で何かが切れた。

「そうか。罰が無いから罪を感じないんだな。だったら、罰を与えてやるよ」


「バンッ」

「ドスッ」

「ボキッ」


三つの音がほぼ重なってクラレンス家の庭園に響いた。

 何でも言い返せば良いってもんじゃありませんね…

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