”存在感”
かぁかぁとからすが鳴く。
空は、いつにもなく赤く燃えるように夕焼けを描いている。
「おなかすいたな。」
窓の外。焼ける空を見ながら、呟く。少年か。あるいは、少女か。
年齢的には中学生、あるいは高校生だろうか。あの子は性や齢を感じさせない。どんな人格なのか、どんな声なのか、はたまたどんな表情見せるのか。その薄色で透明で、窓越しの夕焼けに負けてしまう存在感は他人に疑問を与えはするが、解決させる気力を持たせない。
「今日の晩御飯はなにかな。」
薄色の存在感はおなかをさすりながら、体に響く「ぐぅ~」という音に耳を傾ける。
p.m5:32
あまりにも存在感とマッチしすぎている白いベッドの横で、デジタル時計は時刻を示す。
かぁかぁ。かぁかぁ。
「かぁかぁ、だって。君たちはいいねぇ。黒くて。僕なんか白だよ。君たちみたいに元気に夕焼けに負けないくらい黒く元気に動けたらな。」
ここは総合飛松原病院。この街で一番大きい総合病院。その中の一室でこの存在感は生まれながらにもつ病の治療を受けるため、入院していた。
入院してから、早5年。子供としての約4分の一をここで消費してしまったことについて、存在感はどう思っているのだろうか。存在感は「もう慣れっこだ」とよく言う。何に対しても、慣れっこだ、と。学校の行事に参加できない。遊べない。頻繁に続く手術も。嫌気すらその存在感ごと透りぬけてしまったのだろうか。
「寝よ。」
存在感はこの地球に吸い込まれるように、毛布を深々と体にかけ、眠りにつく準備をした。
彼女の、あるいは、彼の名は、守乃。
ベッドの上のネームプレートにはそう記されていた。
お久しぶりの二乗でございます。小説を書けない環境と気力のせいで、しばらくの二乗、更新できずにいました。やっと更新できました。ここから二章ですので、ぜひ更新をお待ちいただけたらと...




