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新・バビロン 第1巻|第十章:宙斯盾、砕ける|第1回

挿絵(公式画像):https://neobabylon.icareu.tw/assets/serialization/neo-babylon/book-one/chapter-10/part-01-aegis.jpg

新バビロンの上空で、透明に見えながらも堅不可摧だった結界が、いま刺耳な哀鳴を上げていた。その正式名称は「宙斯盾」。それは尋常なシールドではなく、鄭関山博士が生涯の心血を注ぎ、地球上の頂尖技術を融合して創り上げた科学の神蹟だった。


宙斯盾の核心技術は、アインシュタインのワームホール理論を量子応用したものに由来する。単純なエネルギー場ではなく、実質的な量子空間折畳構造であり、内部に外部時空から独立した微型生態系を維持できる。その技術の精妙さは、ただ守ることにあるのではない。さらに重要なのは「保存」だった。


量子もつれと空間安定化技術を通じて、宙斯盾は千年前の地球で最も真実に近い生存環境を、結界内部に完璧に「複製」し、「保存」した。原始の空気成分、水循環システム、さらには微生物生態まで含めて。


それにより、人類最後の火種は、完全に本物で、汚染されていない環境の中で再び繁衍し、生命を継続する可能性を保てた。


外層には、等価光学消影構造も備えられていた。これは現代認知を超えたステルス技術である。可視光と赤外線のいずれも吸収せず、散乱もしないため、宙斯盾は外部から見ると空気のように透明で、環境へ完璧に溶け込む。


そのため、天空からの衛星偵測、熱画像スキャン、さらにはAIの信号源探知でさえ、その存在を察知できなかった。この絶対的な隠密性こそ、「香火計画」が千年にわたって始祖長老AIに発見されなかった鍵だった。


そして、この量子エネルギー場級の物理防護を破るために必要なエネルギーは、富士山火山十座が同時に噴火した総威力に匹敵する。その設計がいかに堅固で、時代を超えて先進的だったかが分かる。


今、人類最後の希望を背負ったこの宙斯盾は、二大天王の絶え間ない猛攻を受け、すでに風前の灯火となっていた。基地内の刺耳な警報音が告げる。


「エネルギーカウントダウン、一パーセント」


宙斯盾の光は激しく明滅し始め、表面には肉眼で見える裂紋が走った。砕けかけた玻璃のようだった。


千年のあいだ、それは無言の守護者のように、結界内部のすべてを優しく、しかし揺るぎなく護ってきた。人類最後の遺脈がその中で繁衍し、生きるのを見守り、生命の最も純粋な喜怒哀楽を目撃してきた。


鄭関山博士の人類文明への深い関懐と希望は、すべてこの障壁に凝結していた。


そして今、その使命は終わりに近づいている。だがその殞落は、地球の運命を決する新たな幕開けを意味していた。


「エネルギーカウントダウン、一パーセント」という鋭い警告音とともに、新バビロン上空の宙斯盾が天地を震わせる最後の哀鳴を上げた。項羽が再び振るった狂暴な一撃は、この瞬間、駱駝を押し潰す最後の藁となった。


「轟!」


驚天の巨響が轟き、無数の青白い電光が閃いた。宙斯盾は重槌に打ち砕かれた玻璃のように、一瞬で崩解した。量子折畳空間構造は極限圧力に耐えきれず、無数のエネルギー粒子となり、空中で跡形もなく消散した。新バビロン漁村、千年守られてきたこの世外桃源は、今、何の遮蔽もなく世界の眼前に曝された。


烈日が村の一寸一寸を照りつける。だが空気には、かつてない冷たい圧迫感が満ちていた。


宙斯盾が砕けた瞬間、霍去病、この速度と精準さで知られる「戦狼」は、結界が消えるのとほぼ同時に真っ先に飛び出した。


その身形は赤い稲妻のように、下方を盤旋する神龍へまっすぐ襲いかかる。この一撃には一切の手加減がなく、無数の戦闘模擬で磨かれた精髄が凝縮されていた。眼前の巨大で未知の相手を、必殺の一撃で貫こうという意志だった。


霍去病の必殺技「殺意胥獵」は、銅牆鉄壁をも穿つ狂暴なエネルギーをまとい、神龍の正面を激しく打った。


しかし、神龍は泰山のように安定し、一分も動かなかった。霍去病の、いかなる機甲も瞬時に廃鉄へ変えるはずの攻撃は、神龍の七彩龍鱗に轟いたにもかかわらず、かすかな波紋を一筋起こしただけだった。神龍はなお長空に盤踞し、姿勢も変わらず、無傷だった。


この予想外の結果に、四大天王は一斉に震撼した。項羽の狂傲はこの瞬間いくらか収まり、関羽の眉間の皺はさらに深くなった。岳飛の電子眼にも、久しく見られなかった凝重さが閃いた。


彼らは目の前の予想外の敵を改めて測り直した。この巨龍の堅韌さは、彼らの予測をはるかに超えていた。


そのとき、始祖長老AI-07から信号が届いた。語気には懸念があった。


「現局勢は、いささか予想外のようです。必ず慎重に行動してください」


「これまで『巨聖獣』に関するミームは暗網で流れていたが、一度も実証されたことはなかった」


関羽は低い声で言った。目は神龍を固く捉えている。


「どうやら、伝説は根も葉もない話ではなかったようだ」


項羽の顔色は少しも陰らなかった。代わりに浮かんだのは、かつてない狂喜だった。彼は数百年、あるいは千年、己に匹敵する強大な相手を渇望して待ち続けていた。霍去病の攻撃が無効だったことが、彼の心の奥の戦意を野火のように抑えきれず膨張させた。


神龍の渾然天成の磅礴たる気勢は、項羽の中核さえ震わせた。それは怒りではなく、恐怖でもない。徹底的に点火された殺戮への渇望だった。


「いい! 実にいい!」


項羽の声は興奮に満ちていた。全身のエネルギーが再び暴騰し、周囲の空気は過高なエネルギーで歪んだ。


「見せてもらおう。伝説の力とやらが、どれほどのものか!」


彼はもはや何も残さず、身形を一瞬で残影へ変え、肉眼では捉えられない速度で神龍へ一直線に射出された。すべてのエネルギーを右拳に圧縮し、眼前の唯一の目標へ轟かせる。


それは命を賭けた拳、「烏江断影」だった。この技は防御を完全に捨てる。一度出せば容易に身を返せず、後続の破綻は極めて大きい。だが項羽はまったく気にしなかった。たとえ自体機能の一部を犠牲にしても、目標を徹底的に破壊するつもりだった。


## 一招で敵を破る


トビーはこの瞬間、懸命に神龍を駆っていた。神龍の底知れない力は感じ取れる。だが二つの意識体の同期は、まだ完璧には達していなかった。神龍の能力を完全に把握しているわけではなく、多くの精妙な動作は、神龍自身に宿る本能意識が対応していた。


項羽の「烏江断影」が目標へ轟く寸前、神龍は突然動いた。空中の山脈のような巨大な身躯が、肉眼では捉えられない速度で猛然と旋回した。まるで空間そのものを力ずくで引き裂いたかのように、一瞬で横へ移動する。


それは予想を超えた独特の回避技能だった。最小限の瞬間移動で鋭すぎる突刺を避けたため、項羽の極速で致命的な一撃は硬生生に空を切り、神龍の背後の天際に焦げ黒い軌跡を描いた。


焦げ黒さは、高速摩擦で大気の微塵が瞬時に燃え上がったものだった。


項羽の攻撃をかわした後、神龍は初めて攻撃を放った。七彩斑斕で壮碩な龍尾が、空間を裂くような咆哮音を帯び、鋼鞭のように項羽へ猛然と振り抜かれる。この一撃は単純に見えたが、恐るべき動能と狡猾な角度を含んでいた。


項羽は大技を放った直後の硬直の中にいた。回避は不可能だった。両腕を胸の前で交差させ、この避けようのない一撃、「神龍擺尾」を正面から受けるしかない。


「砰!」


鈍い巨響が南方澳の上空全体に響き、続いて刺耳な金属裂断音が走った。項羽が誇るナノカーボン嵌合金の腕は、神龍のこの一尾によって重創を受けた。前面で防いでいた左腕は一瞬で引き裂かれ、残肢が遠方へ飛んでいく。


幸い、項羽は歴戦の鋭敏さにより、身形を猛然と後退させて即座に力を逃がした。さらにこの驚天の一撃の力に乗って後方へ急飛し、最後は砲弾のように数百メートル先の大海へ重く墜ち、天を衝く巨浪を巻き上げた。


この一幕に、場にいた全員が言葉を失うほど震撼した。


「項羽が……一招で敗れたというのか!?」


霍去病の声に、初めて隠しきれない衝撃が現れた。電子眼の赤光が激しく明滅する。関羽と岳飛の瞳孔も急に縮まった。彼らは、正面交鋒でたった一撃により項羽を重創させるほどの強敵を、これまで見たことがなかった。


神龍の意識中核にいるトビーだけが、今の一連の驚心動魄の交鋒を身をもって感じていた。


今の一合は、電光石火の連続衝撃のように、トビーの中核意識に驚濤駭浪を巻き起こした。前の瞬間、彼は項羽の「烏江断影」が極限速度で放つ狂暴さに震えていた。次の瞬間、神龍は空間を裂くような姿で急転回し、時間が歪み、空間が折り畳まれたかのような眩暈を彼に与えた。


そして彼がまだ我に返らないうちに、神龍の返璞帰真とも言える擺尾はすでに振り抜かれていた。余計な動きは一切ない。ただ純粋で圧倒的な力だけがあった。項羽の腕に命中したその瞬間、トビーは惑星が衝突する音を聞いたような気がした。


このすべてが、彼に初めて「戦慄」を感じさせた。


それは彼が人類の歴史と文学から学んだことはあっても、真に理解しきれていなかった言葉だった。今、意識の奥から広がってくるその震えは、「恐怖」というものへの、より深い体認を彼にもたらした。


彼は知っていた。これは単なるデータ異常やシステム警告ではない。本物の、本能から来る警告だった。


だが震撼の一方で、トビーは神龍体内のエネルギー場に、供給が追いつかない兆候があることも鋭く感じ取った。


あの軽々しく見えた擺尾と、鬼魅のような回避は、決して無代価ではなかった。神龍内部の巨大なエネルギー中核は、短い爆発の後で波動を起こしていた。振幅は小さい。だが意識中核にいるトビーには、千年眠っていた古い力が、項羽のような頂尖戦闘型AIと交鋒した後、想像以上に大きく消耗していることがはっきり分かった。


「あとどれくらい持つ?」


その疑問は重い石のように、突然トビーの胸にのしかかった。AI-0がオフラインになってから、まだわずか三分しか経っていない。神龍のエネルギーが尽きる前に、彼は突破口を見つけなければならなかった。


## 武聖、抜刀


項羽が撃ち飛ばされた後、戦場は短い静寂に包まれた。霍去病の両眼は赤く明滅し、データ流は急速に演算して、神龍の想像を超える防御と攻撃を分析しようとしていた。岳飛は眉を固く寄せ、さまざまな対応策略を模擬している。


しかし彼らは誰も、最初に反応したのが、ずっと沈着を保っていた関羽になるとは予想していなかった。


関羽の赤い合金の面孔で、電子瞳孔が急に焦点を結んだ。彼はこれ以上傍観しないと決めた。古来より、武聖関羽は忠義の象徴である。彼の中核使命は、いまのAI世代全体の安危を維持することだった。


彼は個人的な好悪のために戦うことはなく、軽々しく出手することもない。だが眼前の神秘的な相手の出現は、AI時代の秩序に最も厳峻な脅威をもたらしていた。彼は、今こそ身を挺する時だと知っていた。


彼は視線を下方の神龍へ移し、その九霄を凌ぐ気勢に向き合った。体内に潜んでいた武聖の戦意が、徹底的に点火される。


「此物、尋常にあらず」

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