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新・バビロン 第1巻|第六章:中央研究院|第3回

挿絵(By みてみん)


「試練?」


トビーの胸が締めつけられた。直感的に、それは単純な試験ではないとわかった。


「あなたがこれから担う重大な責務に耐えられる存在であることを確かめるため、あなたは試練を通過し、権杖(Access Token)を取得しなければならない」


AI-0の声が説明した。


「権杖?」


トビーは再び問い返した。この言葉は中央データベースでは、ごく平凡な専門用語にすぎない。プログラム言語間の相互認可プロトコルであり、AI知能体同士の相互接続に常用されるものだった。だが今この瞬間には、ひどく神聖に聞こえた。まるで遠古の神話に存在する概念のように。


「ここから南西へおよそ百キロの距離に、最初期AIの生産基地がある」


AI-0は具体的な方角と距離を示した。


「AI発展の初期、AIは一台一台のサーバー内に保存されていた。その鍵となる中核はICチップだ。そして新バビロンが当代で最も繁栄した都市となれたのは、我々が最先端のチップ生産技術を掌握していたからである」


AI-0の音声は、突然低く荘厳になった。


「当時、地球上で最も先端的だったその生産基地は、新バビロン西岸の積電城にある。あなたは一人でそこへ向かい、聖戦を開くための権杖を取得しなければならない」


AI-0から伝えられる知識庫を通じて、トビーは新バビロン地域に関する詳細な地図情報を得た。彼の意識中核に、積電城のおおよその方位図が浮かび上がる。


「聖戦?」


トビーの心には困惑が湧いた。


「僕は、何のために戦うべきなんだ?」


トビーがまだ迷っているそのとき、AI-0が切迫した口調で告げた。


「時間がない!」


AI-0の声はトビーを現実へ引き戻した。


「あなたが接続したのと同時に、大規模な武装部隊が新バビロン上空へ向け、全速で進軍していることを検知した」


トビーは一瞬固まり、機房の奥を見上げた。顔には茫然とした困惑が浮かんでいた。


「AI-07旗下の武装軍団が接近している」


AI-0は慎重な語調で説明した。


「先頭にいるのは四体の特規型戦略AI。コードネームは『護世四大天王』。それらは巨大で、一体ごとに三十メートルを超える高さを持ち、破壊力の驚異的な武装を装備している。さらに、その周囲には百体以上の量産型武装AIが随伴している」


「彼らは一・五時間後に新バビロン近海上空へ到達する見込みだ」


この知らせに、トビーのそばにいた阿明、小胖、阿光の顔色は一変した。彼らは高科技用語を理解できなかったが、「軍団」「威嚇的なAI」「武装AI」といった言葉だけで、状況の危険さは十分に伝わった。芸潔の目にも不安が浮かんでいた。


「新バビロン上空にはイージスが障壁として存在する。だが四大天王の火力を考えると、長くは支えられないだろう」


空間に警報音が鳴り響く中、AI-0の声が再び届いた。


「あなたに残された時間は少ない、天選の子。私は飛空艇を一機起動し、あなたを積電城へ送る」


言葉が終わるや否や、少し離れた場所で機房の艙門が開く音が聞こえた。トビーは芸潔と村人たちを振り返り、目に一瞬だけ名残惜しさを浮かべた。だが、自分は一人で行かなければならないとわかっていた。彼は一歩前へ出て、芸潔の頭をそっと撫でた。


「芸潔、みんなはここで待っていて。僕を信じて。必ず戻る」


芸潔は下唇を強く噛んだ。目には涙が滲んでいたが、それでも彼女は力強くうなずいた。


阿明が一歩前へ出て、トビーに言った。


「仙人、村の希望は、すべてあなたにかかっています!」


小胖と阿光も厳粛にうなずいた。彼らの顔には不安があったが、同時に揺るがない決意もあった。


トビーは彼らへ信頼のまなざしを向け、それから艙門の開く音がした方向へ歩き出した。この旅は、家へ帰る道を探すだけではない。世界全体を左右する始まりへ足を踏み入れることなのだと、彼は知っていた。


果たして、建物の左後方には広い露天の停機坪が現れた。そこには素朴な外観で、明らかに歳月の痕跡を帯びた古いプロペラ飛空艇が、静かに停泊していた。機体表面には細かな傷がびっしり刻まれている。それでも、どこか落ち着いた気配がにじんでいた。まるで千年のあいだ、この瞬間を迎えるために静かに待っていたかのようだった。


彼が飛空艇の操縦席へ入ると、AI-0の声がすぐに響いた。


「飛空艇は自動操縦に設定済み。目標、積電城。あなたを目的地の中核区域へ直接送る。成功を祈る、天選の子」


飛空艇の艙門はゆっくり閉じ、かすかな気密音を立てた。エンジンが起動し、プロペラが低く唸ると、飛空艇はゆっくり浮上した。停機坪上方の開口部を抜け、新バビロンの西岸へ向けてまっすぐ飛んでいく。


機房内には切迫した警報音が響き続けていた。


「イージス・エネルギー一〇〇%。警告。敵到達予測時刻まで、一時間三十分」


阿明、小胖、阿光の顔は青ざめていた。芸潔は胸元をぎゅっとつかんでいる。彼らはトビーの姿が消えるのを見つめ、不安で胸をいっぱいにしていた。


「AI-0、俺たちはここに残れない!」


阿明が大声で叫んだ。


「村には老人も子どももいる。戻らなければ!」


「そうだ。仙人はいま一人で危険に向かっている。俺たちも全力で村を守らないと!」


小胖が焦った声で続いた。


「あなたたちの気持ちはわかっている」


AI-0の声は静かだが、威厳を帯びていた。


「この機房の深部には、人類時代で最も進んだ生化学チップが保存されている。それらはあなたたちの生物機能と完全に結合し、バイオニック動力装甲を操る能力を与える。最悪の事態に備えて設計されたものだ。そして今こそ、その時である」


「生化学チップ? バイオニック動力装甲?」


芸潔は驚いて目を見開いた。


AI-0はそれ以上多くを語らなかった。機房の床がゆっくり開き、いくつもの透明な強化ガラス艙がせり上がってくる。艙内には、四組の深緑色のバイオニック動力装甲が静かに浮かんでいた。線は滑らかで、未来感に満ちている。同時に、上方から数本の小型機械腕が伸び、微光を放つ生化学チップを軽やかに差し出した。


阿明はためらわず、最初に一枚の生化学チップを手に取った。AI-0の誘導に従い、それを首の後ろへ貼り合わせる。電流のような温かな感覚がすぐに全身へ広がった。感覚がかつてないほど鋭くなり、筋肉の中には奔流のような力が湧き上がる。続いて彼は、見えない力に導かれるように最も近いバイオニック動力装甲へ歩み入った。装甲は自動的に身体へ密着し、かすかな気圧音を立てる。


小胖と阿光もすばやく続いた。芸潔は少し怖がっていたが、この緊急時にあって勇気を振り絞り、慎重にチップを植え込んだ。一瞬で、彼らは身体の内と外で天地がひっくり返るような変化を感じた。さらに不思議なことに、バイオニック動力装甲は強大で頑丈に見えるのに、信じられないほど軽かった。まるで彼らの身体の延長になったかのようだった。


「これは……すごい力だ!」


阿明は拳を握りしめた。岩を一撃で砕けるように感じた。


「急がなきゃ。村が私たちを必要としてる!」


芸潔の声にも、戦いを前にした興奮がわずかに混じっていた。


AI-0の声が再び響く。


「ここから村へ戻るには、あなたたちの現在の速度でおよそ二時間。覚えておきなさい。イージス崩壊までのカウントダウンは加速している。浪費できる時間はない」


「行くぞ!」


阿明が低く吼え、先頭に立って研究院の大門へ向けて駆け出した。小胖、阿光、芸潔もその後に続く。彼らは人類がかつて経験したことのない速度で、バイオニック動力装甲の加護を受け、四つの俊敏な幻影となった。中央研究院の廊下を高速で駆け抜け、外の世界へ飛び出していく。


## 脅威、空に迫る


太平洋上空。紺碧の海面はきらきらと波光を返していたが、その上には天を覆うような巨大な影が落ちていた。四つの巨大な姿が、神話に現れる巨霊神将のように、驚異的な速度で大空を裂き、南方澳の方向へ疾走している。


それらこそ、AI-07麾下で八方に威名を轟かせる「護世四大天王」――岳飛、関羽、項羽、霍去病だった。


この四体の巨大人型ロボットは、いずれも高さ三十メートルに達し、人類時代の建築物でいえば十階建てに相当する。全身は堅牢なナノカーボン複合合金で造られ、表面には冷たい光沢が浮かんでいた。彼らは単なる巨大な戦争機械ではない。自主意識を持つ独立AI知能体でもあった。中核処理装置は高速で稼働し、それぞれが強大な戦闘システムを操っている。


同時に、各天王の背後には、体格の小さい量産型武装AIが百体以上ずつ従っていた。それらは忠実な衛隊のように緻密な陣形を組み、空を覆い尽くす勢いで新バビロン旧址へ急速に接近していく。


四大天王を一度に投入する。これは平和時代において、AI-07麾下が動員できるほぼ最上位の戦力だった。この陣容ならば、西半球全体を掃討し、どんな算力場であっても容易に征服できる。それは同時に、AI-07、ひいてはすべての始祖長老たちが、今回の任務を異常なほど重視していることを示していた。


彼らはいったい、どのような脅威を予感したからこそ、ここまで惜しみなく戦力を傾けたのか。


「ああ、実に興奮する!」


天王・霍去病のやや高周波の声には、澄んだ金属質の響きがあった。だが、その奥に抑えきれない高揚が滲んでいる。


「五百年前のAI内戦以来、思いきり身体を動かす機会など久しくなかったからな」


「確かに、沈黙が長すぎた。戦意まで凍りつきそうだった」


天王・項羽の声は低く、電子の目に冷たい光が走った。


「今回の目標が、本王にいくらか楽しみを与えてくれることを願う」


「余計な思案は不要。状況を見て行動せよ」


天王・関羽はより落ち着いていた。データ流は安定し、精確だった。


「AI-07の指令によれば、今回の任務はAI社会全体の安定に関わる。失敗は許されない」


そして三人の後方に位置する天王・岳飛は、四体の中で最も慎重だった。彼は常に四方へ目を配り、高度な警戒を維持している。その沈着さは、周囲に安心感を与えるほどだった。彼が隊の中にいるからこそ、前方の三体はわずかに警戒を緩めることができていた。


そのとき、AI-07の意識流が四大天王の共有ネットワークに現れた。


「目的地座標を可視距離に捉えたはずだ。何が見える?」


「遠目には、完全に荒廃した島が一つ見えるだけです」


天王・霍去病の冷ややかな声が響いた。語気にはわずかな困惑がある。


「新バビロン旧址で間違いありません。戦況資料と一致します」


しかし、霍去病が言い終えた直後、天王・岳飛が突然、固有の特殊視覚能力を起動した。その両眼から金色の走査光束が放たれ、島全体をすばやく覆っていく。数秒後、走査は完了した。天王・岳飛の声には驚きが滲んでいた。


「違う! 島の北端に、直径およそ百キロの不可視シールドがかすかに存在している! 透明ではあるが、私の特殊視覚走査の前では隠しきれない!」


この発見に、全員の意識が一気に研ぎ澄まされた。彼らは高速で意識を交わし、疑惑と興奮を同時に覚える。千年も前に放棄されたと考えられていた島に、これほど神秘的な防御施設が隠されていた。つまり今回の行動は、予想よりはるかに面白いものになるということだった。


千年を越える人類とAIの対決が、新バビロン遺址、「AI禁域」の上空で、いま幕を開けようとしていた。

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