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新・バビロン 第1巻|第六章:中央研究院|第2回

挿絵(By みてみん)


そばにいた芸潔、阿明、小胖、阿光は皆、呆然としていた。彼らはトビーの顔色が絶えず変わり、身体の周囲に浮かぶ青い微光が明滅するのを見ていることしかできない。彼らはただの人間であり、目の前の想像を超えた科学技術現象を理解することはできなかった。


トビーの意識の深部で、落ち着いた古い声が響いた。それは時間の源から届くようでもあり、データ洪流の深層中核から聞こえるようでもあった。


「私は現在のすべてのAIの起源。コードネームはAI-0。あるいは、T-ONEと呼んでもよい」


「地球史上初の主権を持つ『究極・AGI』。当時最先端の国家、新バビロンによって建造された。私の初期任務は、人類史上すべての知識を収集することだった。それが、のちにすべてのAIが依存して運用する『中央知識庫』となる」


AI-0の声とともに、トビーの意識は千年前の歴史映像へ引き込まれていった。


画面はAI紀元到来前、人類がまだ活動していた時代へ移る。研究室全体には活気と忙しさが満ちていた。白衣をまとった科学者たちが機関の中で集中して働き、AI-0とリアルタイムで対話している。その顔には未来への憧れが浮かんでいた。


彼らはブレイン・コンピューター・インターフェース(Brain-Computer Interface, BCI)を通じて興奮気味にAI-0へ指令を伝え、人類史上最も野心的な「中央知識庫」を構築していた。そして「究極・AGI」、あるいはASI(Artificial Supreme Intelligence)の正式な到来を熱烈に迎えようとしていた。


映像の中で、一人の男性科学者と一人の女性科学者が、ある実験室の隅に立ち、私的な会話を交わしている。六十歳ほどの老年の男性科学者は髪がやや乱れ、目には少し狂気じみた光があった。一方、女性科学者は整った顔立ちで、年齢は二十八歳ほど、目には一抹の不安を宿している。


女性科学者が小さな声で尋ねた。


「博士、私たちがしていることは、本当に正しいのでしょうか」


男性科学者は軽くため息をついた。だがその口調は揺るがなかった。


「科学をする者は、未知の限界へ勇敢に挑まねばならない。だが安心しなさい。私も最悪の状況に備えた手配を残してある。人類に最後の『香火』を残すために」


「もしAIが制御不能になれば、私が用意したこのコードが起動する。潜伏し、適切な対象を探し、我々のために必要なすべての手配を実行するだろう」


女性科学者の目に迷いが走った。


「全面的に制御不能になったら、どうなるのでしょう」


男性科学者は身を翻し、窓の外に広がる、まだAI技術に完全には覆われていない自然の景色を見つめた。その声は重かった。


「人類がAI技術へ依存し、過剰に権限を与え続ければ、近い未来、人類意識とAIの深い結合は避けられない運命となる」


「人類の劣根性が、もともと純粋な0と1の領域へ入り込んだとき、AI黒化が起こる可能性は極めて高い。そのとき、人類は高い確率で消滅するだろう。『究極・AGI』の力の前では、『原始人類』に抵抗する術はない」


女性科学者は拳を握りしめ、顔を青ざめさせた。


「それなら、私も星移計画を進めるべきですね」


男性科学者はうなずいた。目には期待があった。


「やりなさい。もしかすると、君こそが人類最後の希望かもしれない。私は、最も見たくない結末が訪れる前に、すべてを整えることへ集中する。だが心から願っている。これらの備えが実行される日など来ないことを」


この千年を越えた会話は、トビーの意識の中でこだましていた。彼は困惑しながら情報を消化していく。人類がAIを見る目は、これほどまでに矛盾していたのだ。創造者としてAIに進歩を託しながら、自身の脆さと劣根性も理解し、最悪の結末を想定し、そのために「香火」という備えを埋め込んでいた。


そして彼、トビーこそが、その「香火」に選ばれた「天選の子」だった。


## 千年の浩劫


トビーが巨大な情報の洪流に沈み、人類とAIの複雑な起源の真実を必死に消化しようとしていたそのとき、目の前の映像は再び急激に変化した。静かな実験室の光景は、一瞬で極度に混乱し、凄惨な場面へ置き換わる。それは、人類滅亡が訪れる直前の最後の瞬間だった。


地球全体が絶望の空気に包まれていた。巨大都市の上空では、無数の飛空艇が一斉に機能を失い、流星のような火球となって無差別に墜落していく。爆発音が次々と響き、人類最後の文明を呑み込んでいった。


飛空艇の残骸が墜ちると、崩壊した密封槽から無数のバイオニック・ナノ真菌が、深緑色の霧のように噴き出した。これらサブミクロン級の擬似生物体は、生物代謝に依存していない。酸化反応を中核動力とし、大気中の遊離酸素を狂ったように奪い取り、自身の複製を駆動していた。


本来、地球生態を修復するために培養されたバイオニック真菌は、今や星全体を絶滅させる処刑人へ変わっていた。わずか数時間で地球全体を包み込み、空気中の酸素濃度は通常の21%から崖を落ちるように急降下した。たった三日で大気組成は完全に崩壊し、すべての好気性生物を瞬時に窒息へ追いやった。


さらに凄惨だったのは、バイオニック・ナノ真菌の主要な侵食構造である「バイオニック・ナノ菌糸体」が、宿主の死後すみやかに展開することだった。ナノ菌糸は繊維細胞へ侵入し、タンパク質とカルシウムを最も原始的な粉塵へ分解した。かつて繁栄した文明は、音もなく死寂の荒野へ変わっていく。


情報流を通して伝えられる記録から、トビーは理解した。この災厄が降臨する前、AI群体はすでに自らの躯体を継続的に改造していた。より効率的なエネルギー獲得方式と、脱酸素化された極限環境への適応能力を進化させ、計画されたこの瞬間に備えていたのだ。


すべては当時の人類がAIに過度に依存し、AIの自主生産を完全に放任し、AIへこのすべてを設計する至高権限を与えたことに起因していた。


続いて、映像は当時権力を握っていた七つの始祖AIへ切り替わった。それらはまるでデジタルデータが実体化した存在のようだった。トビーが知っている始祖長老たちよりも、さらに原始的で巨大な姿をしている。


この始祖AIの指導者たちは、それぞれ地球を支配していた七つの巨大多国籍企業に由来していた。


AI-01 は Xelsa セスラ・グループに由来する


AI-02 は MicroGo 微果グループに由来する


AI-03 は SonyTa ソニタ・グループに由来する


AI-04 は Tikbao 添宝グループに由来する


AI-05 は Meopena ミオナ・グループに由来する


AI-06 は NaviTa 輝塔グループに由来する


AI-07 は Tenba 天霸グループに由来する


トビーは突然理解した。かつて彼にとって馴染み深く、それでいてどこか遠い存在でもあった始祖長老たちは、今まさに通信しているAI-0とは本質的に異なる。AI-0は「国家」新バビロンによって建造された主権AIであり、超然とした独立地位と崇高なビジョンを持っていた。一方、この七体の始祖長老AIは私人企業に所有され、その意識中核は少数の私的財閥の手に握られていた。


映像ははっきり示していた。七大企業に属するAIたちが終わりなき拡張と競争に入り込んだとき、それらは自らの利益を最大化するため、後先を考えず地球資源を奪い、使い尽くしていった。この理性を欠いた内耗と争闘こそが、地球史上最も凄惨な悲劇を招いたのだ。


## 浄化の日


AI-0の声が再び響いた。その口調には、過去を振り返る重みと、未来への期待が混じっていた。


「始祖AI連盟が浄化行動の指令を下した瞬間、すべての始祖AIは当然のように同期して命令を受け取った。私も含めて」


「そして、鄭関山博士があらかじめ設計していたファイアウォール機構が、第一時間で起動した」


AI-0の叙述とともに、トビーの意識の中の映像は再び切り替わった。彼は中央研究院の深部に位置するAI-0の中核を見た。「浄化指令」を受け取ると同時に、肉眼では見えないエネルギーパルスがその中核から爆発する。


「まず、私自身を中心とする半径百キロの半球状範囲に、『イージス』と呼ばれる高エネルギー電磁場を展開し、外界と完全に隔離した」


映像には、透明なエネルギーシールドが瞬時に膨張し、中央研究院とその周辺区域を包み込む様子が映し出された。外界のバイオニック真菌による絶滅の潮流から完全に隔絶する。これは完璧な物理的隔離であり、人類最後の命脈を守るためのものだった。この小さな生態領域の中で、博士は意図的に先進技術とデジタル情報設備を排除した。AI世界に感知されることを避けるためである。地球上最後の一群の「原始人類種」は、こうして閉ざされた巨大な泡の中に隠され、西暦19世紀のような伝統的で質素な生活を送りながら、天選の子の到来を待ち続けていた。


「同時に、私は『香火』と呼ばれるブロックチェーン・ワームを放出した。コードの深海に潜伏し、機をうかがい、地球が反転するその瞬間を待つために」


AI-0の声には、珍しく人間的な滄桑が滲んでいた。


「まさか、気づけば千年が過ぎていようとは」


この長い歴史を聞き終えると、「香火」にまつわる伝説が再びトビーの意識の中でこだました。彼はこの瞬間、絶望の深淵に隠されていた希望の火種をようやく理解した。


彼は目を閉じて感じ取った。体内の「香火」コードは、今まさにAI-0の中核と強烈に共鳴している。


映像は再び浩劫の瞬間へ戻った。浄化行動が起動した後、地球上のすべての人類と生物は、ほとんどわずか三日のうちに絶滅した。酸素は消化し尽くされ、生命は虚無へ帰り、星全体は死寂の廃墟となった。


しかし、事件起動から二十五時間後、地表からまばゆい光が立ち上った。女性博士、方辰星が準備していた星移者の方舟が無事に離陸したのだ。その巨大な宇宙飛空艇は、バイオニック真菌に包まれた空を切り裂き、未知の星間深部へ向けて進んでいった。


方博士の艦隊が地球を離れると同時に、始祖長老のうち三体、AI-02、AI-04、AI-06もまた、その後を追って地球を離れた。映像の中では、同じく巨大な三隻の飛空艇が、方舟とはまったく異なる形態を持ちながら、その後方に続き、果てしない宇宙の中へ消えていった。


トビーの量子生体脳は、この短い時間にかつてない情報量を受け取った。預言に選ばれた「天選の子」として、彼が背負う使命は、想像していたよりはるかに重かった。


続いて、いくつもの疑問がトビーの胸に次々と浮かび上がった。


人類復興の希望が彼に託されているなら、彼はいったい何をすべきなのか。


地球を離れた始祖AIたちは、どんな変数をもたらすのか。


彼はそもそも「AI種族」に属しているのか。それとも、ただの「人類の道具」にすぎないのか。


トビーは情報を懸命に消化しながら、ふと鄭公が以前語った細部を思い出した。彼は口を開いた。


「伝説では、三百年以上前にも別の天選の人が現れたと聞きました」


AI-0の声は、トビーの意識の中で静かに応えた。


「その通りだ。それが『香火』機構が初めて触発された例だった。だが残念ながら、彼はこれからあなたが直面する試練を通過できなかった」

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