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作戦会議



「ちょっと、そのブローチ貸しなさい!」



私は呆然と立ち尽くすソフィアの胸元から、無造作にブローチをひったくった。



「な、何をなさるの!? 乱暴ですわよ!」

「うるさいわね、黙って見てなさい。リリアナが言った通り、これ、ただの『安物の模造品』じゃないわ。……ほら、この台座の裏に刻まれた微細な術式。これ、魔力を送信するための『指向性中継器』よ」



私はブローチを空中に放り投げると、指先から翡翠色の魔力糸を伸ばし、空中で固定した。



「いい、アヴィラージュ? 魔法で書類を弄るのは禁止だったけど、目の前にある『不正の現物』を解析するのは別問題よね? 効率的に黒幕を仕留めるには、金の流れを直接叩くのが一番早いわ!」



私はエクス号の計器盤にブローチを接続し、超高速で演算を開始した。

翡翠色のラインがブローチの術式を暴き出し、隠された送金ルートが空中にホログラムとなって浮かび上がる。



「……あ、あ、あああああ……!」



自分の「宝物」がハッキングの踏み台にされ、さらにそれが「偽物」で「盗聴器」だったという事実を突きつけられたソフィア。


彼女はしばらく幽霊のように青ざめて震えていたが、突然、パチンと頭の中で何かが弾けたような音がした。




「――許せませんわ……ッ!!」




怒り。

それも、今までの「お高くとまった傲慢さ」ではない。


一人の人間として、そしてプライドある令嬢として、友だちだと思っていた者に魂まで泥を塗られたことへの、烈火の如き怒りだ。




「私の誇りを、家門の資材を、あんな女の着せ替え人形の予算にされていただなんて……! マリア様、リリアナ様、もう結構ですわ。わたくしが行きます。わたくし自身の手であの泥棒猫を、帝国から追放して差し上げますわ!」



ソフィアはドレスの裾をひるがえし、私のバットを奪わんばかりの勢いで立ち上がった。



「ちょっと、待ちなさいソフィア! 猪突猛進は非効率の極みよ。……でも、その顔、嫌いじゃないわ。あんたが『盾』になってくれるなら、作戦の成功率は120%に跳ね上がるわね」




私はニヤリと笑い、リリアナと視線を合わせた。




作戦の骨子はこう。




まずソフィアには「何も気づいていないお馬鹿な令嬢」を完璧に演じてもらう必要がある。


カトレアが主催する茶会に平然と乗り込ませ、中継器であるブローチの機能を維持させるのが第一段階だ。

カトレアに「まだソフィアを操れている」と誤認させることが、ハッキングの安定性を生む。



その間に、私とリリアナでブローチの信号を逆流させ、カトレアが私服を肥やしている隠し口座へとバックトレースを仕掛ける。




「彼女が今まさに、不正な金を動かそうとした瞬間のアクセス権を物理的に奪い取ってやるわ」



最後に、こちら側の作業が完了した合図を送る。


それからは簡単だ。

ソフィアには、あの「偽物のブローチ」を、最高に冷ややかな蔑みを込めてカトレアに投げつけてもらう。



「それが、彼女の全財産が国庫へ没収され、彼女の野望が更地になった終了のサインよ」




「……ふふ、素敵ですわ。わたくしの最も得意とする『社交辞令の裏での毒殺』、存分に見せて差し上げますわ」



ソフィアの瞳に、かつてないほど鋭い知性が宿る。

リリアナが彼女の乱れた髪を素早く整え、完璧な令嬢へと戻していく。



「マリア様、信号の逆流準備、完了いたしました。……いつでも『ゼロ』にできますわ」


「よし。……アヴィラージュ、あんたは後ろで騎士団の手配でもしてなさい。……さあ、ソフィア。あんたの価値を見せてみなさいよ!」




最強の効率厨、不屈の元社畜、そして覚醒した悪役令嬢。

カトレアという不具合を排除するための、最も「残酷で効率的」な反撃が始まった。


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