魔法の夜に part2
アーサーは廊下を後ずさりしながら必死に考えていた。
何これ?
なんで、なんでうちの廊下に虎がいるの?
いや、違う!動物園で一度だけ実物の虎を見た事があるけど、これ、虎じゃない!
いくらなんでも背中が天井に着くかと思うくらい大きな虎はいないはずだ。
第一、カッと見開かれた目は金色で、大きな牙が見える口元からは、唸り声に合わせて冬の吐息の様に、炎が立ち上がっている。
尻尾は五つ?六つ?七つ?に分かれ、鎌首をもたげた蛇のようにうねうねと動いている。
そんな虎は絶対にいない!!!
グルルルルゥ……
虎のような怪物は低い唸り声を上げながら、アーサーにじわり、じわりと近づいてくる。
「あ、あ、あああっ」
身体中から湧き出した冷や汗が背中をぐっしょりと濡らしていくのがわかる。一秒でも早く、この場から逃げだしたいけど、足が震えて動くことができないし、声を上げることすら無理だ。
『いやだ、いやだいやだ。パパ!ママ!誰か!助けて!』
硬直して動けないアーサーに焦れたかのように、怪物はこっちに向かってジャンプして襲いかかってきた
アーサーはとっさに、目をつぶって座り込んでしまった。
『もうだめ、死んじゃう!死ぬ!死ぬ!死ぬ……?ん?んん?何も起こらない?』
恐る恐る目を開けると、怪物はアーサーを軽く飛び越し、二階へと続く階段を登ろうとしている。
『た、助かったの?いや、ちょっと待って、だめ、だめだ!』
怪物と対峙して、初めてアーサーが声をあげた。
「ダメだ!二階には、ママと妹がいる!」




