↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/243

第四十二話「疎外」(2)

 漂流七日目。

 エネルギー・バイパスの修復が進み、ようやく、ワープができる状態となった。

 シンとしては、もう少しワープを先に延ばしたかった。ワープすれば、帝国側に見つかる可能性が上がる。いまだ船の戦闘能力は二十パーセントを超えたばかりで、敵に遭遇した場合、仲間を危険に晒すことになる。

 しかしその一方で、食料の節約も完璧には進んでおらず、全体のスケジュールから考えて、ワープを延期することもできなかった。

 せめて、システム上に展開するサイバー・スペースに直接ダイブできれば作業効率が上がるのだが、この船に限っては、レベル・セブンに相応しいセキュリティがかかっている。一人ダイブするのに、二人が必要となる。トータルとしての効率は、落ちるのが明白であった。

「マーベリック、ワープ航法へ移行、亜光速へ突入」

 シンの声が各操縦席に響き、三人の声が応答する。

 スクリーンが一瞬白色に輝き、艦周辺の空間が歪む。

 見かけ上、巨大な重力場を前方に発生させ、落ちていくかのようにマーベリックが加速する。

「第一次亜光速に突入」

 クリスの声が聞こえる。声だけではない。スクリーンの隅には、多くのモニターに囲まれながら、三つの顔が表示されている。

「第二次亜光速に突入。第三次亜光速までは、約百五十秒」

 シンの体が、僅かにシートに押しつけられる。

 あくまでも簡易ワープのため、四人が帝国領へワープした時ほどの長い加速は必要なかった。

「第三次亜光速に突入しました。これより、カウント・ダウンに入ります」

 加速が増し、シンの体が、さらにシートへと押しつけられる。振動も、より大きいものになっていく。

 重力制御の要であった二号機が接続している時でさえ、ある程度の振動はあった。短距離のワープとはいえ艦内重力の制御不足は、仕方ないところである。低重力下での生活が続いている中、高重力の機会は貴重ですらある。

 ヘレン。ボーイ。生きているのか、死んでいるのか。

 シンは、ワープ空間に消えた二人のことを考えていた。

 クリスの提案どおり、できるだけの情報収集は行いたいが…。

 こちらからの漏洩は避けなくてはならない。難しい舵取りであった。

 帝国が、どの程度の情報を得て、どの程度の戦力をぶつけてくるのか。何事も無く、平安のままに連邦に戻れるなどという考えは、おそらくは甘いものであろう。

 護らねばならない。

 シンは、マーベリックに搭乗した時の誓いを、心の中で繰り返した。

 ユーキを、ナチアを、クリスを。護らなければならない。

「ワープ・インまで、あと二十秒…」

 護るべき人間の数は、減っていた。これ以上、減らす訳にはいかない。

「十秒…」

 三人を護り、帝国領を脱出し、そして、姿を消す。

「三…、二…、一…」

 船体は光に包まれた。

 ゼロ、の声とともに、跳躍に入る。

 …これ以上は、巻き込まない。

 眩い光の中、シンは、ただ一人でシートに座っていた。



  第六章 終

<次回予告>


 ワープ・アウトは、上手くいった。

 上手くいったのは、ワープ・アウトのみであった。


次回マーベリック

第七章 第四十三話「遭遇」


「エネルギー・ラインに異常発生っ。臨戦態勢に移行できませんっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。