表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/243

第二十四話「真相」(2)

 監察衛星オルドープは消滅した。

 レーダー撹乱用のコン・シールドを、展開する時間もなかった。白く、太い光の矢に中心部を貫かれ、爆発し、そして消滅した。

 光の矢を放った宇宙船の中では、沈黙が続いていた。

 沈黙を破ったのは、ボーイの呟きであった。

「すげぇ…」

 呟いたのは、自分達の乗る船が発射した、レーザーの威力についてであった。

 時空震が到達して、レーダーがホワイト・アウトする。

 いくらコン・シールドを張っていなかったとはいえ、交易ステーション並みの大きさを持つ監察衛星を、ただの一撃で屠った、その結果である。最後の爆発自体は、監察衛星のエネルギー機関の暴走によるものであったが、それを導いたのは、レーザーである。その威力は、通常考えられる戦闘機の主砲のスケールを遥かに凌駕していた。

 だが彼らは、その破壊力について称賛していられるような状況にはなかった。

 すでに、ヘレンからの命令を破って、通信器は六人全員オープンになっている。

「どういう事か、説明してもらいましょう、教官」

 揺れる艦内に、恫喝を孕んだシンの声が響いて、一同は我に返った。

「どういうことなんだっ?」

「なぜっ?」

「どうしてですのっ?」

 ボーイと、ユーキと、ナチアが叫んだ。

 ヘレンは無言で、叫び声を受けとめた。

 唯一叫ばなかったクリスが、その口を開いた。

「教官は…、初めっから、こうするつもりだったんだね…」

 クリスの声は、静かな怒りに包まれていた。とめられなかった、という、自分自身に対する怒りも混ざっていた。

「あなたは、初めっから、こうするつもりだったんだっ!」

 シンも、ボーイも、ユーキも、ナチアも。クリスの声に聞き入った。

 少年は続けた。

「ウイルスを侵入させたのも、あなただ。ハッキングを行わせたのも、みんな…、みんな、あなたがやったんだっ!」

 五人の沈黙。

 そしてヘレンの、答えが返る。

「その通りです」

「…なぜ?」

 呟くように尋ねたのは、ユーキである。

 しかし、ヘレンからの回答は得られず、無言の教官に代わって答えたのは、クリスである。

「レベル・セブンの、消去のためなんだ」

 声は苦渋に満ちていた。

 消去を食いとめられなかったのは、他ならぬクリスである。少なくとも、本人はそう思っていた。

「この、マーベリックという名の新型ワープ機関の開発は、連邦最高機密だった。レベル・セブンだった。初めから、ヘブンのメモリーを消去する目的で、サイバー・ビーングを送り込んだんだっ」

 クリスはいったん息を吐き、そして話を続けた。

「目論見どおり、メモリーは消去された。あとに残るのは、あのオルドープだった…。機密厳守が徹底される中、このワープ実験は行われたんだっ」

 オルドープが本体データだと思っていた。だが、違った。

「おそらくは、シンさんとボーイさんを襲った人間は、教官には関係がない。二人が殺されちゃったら、作戦が遅れちゃうもの。でも、結果として二人は無事に生還して、さらに作戦は早められた。教官としては、願ったり叶ったりだった…」

 そこまで言って口を閉ざしたクリスに、シンが話しかけてきた。

「クリス」

「なに、シンさん?」

「何故、教官は、そんな事をしたんだ?」

 シンの質問は、質問ではなかった。確認であった。

「…もう、シンさんは気付いてるかな。結果を見れば一目瞭然だよね。ヘブンのデータが消え、最後のバック・アップであるオルドープが消滅した以上、今、この宇宙に、新型ワープ機関に関する情報は、どこにもなくなった。この、マーベリック本体を除いてね…」

 ここまで聞いて、他の三人も気が付いた。

「まさか…」

「そんな…」

「本気ですの?」

 ボーイと、ユーキと、ナチアが小さく呻いた。

「そう、そのまさかだよ」

 三人の声に、クリスが静かに応える。

「連邦に残っているのは、このマーベリックだけ。そして教官は、もはや連邦に残ってはいられないことをしてしまった…」

 クリスは、ゆっくりと、結論を告げた。

「教官は…、ヘレン・スタイナーは、このマーベリックをもって、銀河帝国に亡命するつもりなんだ」

 重苦しい沈黙が、艦内を包んだ。

 時間にすれば、僅か数秒。だが、果てしない時間。

 この沈黙を破ったのは、ヘレンである。

「その通りです、クリス」

「どうしてっ? どうして、こんなことをっ?」

 クリスの問いに、だが、ヘレンは答えなかった。

 代わりに、一同に告げる。

「さぁ、少し遅れてしまったけれど、ワープ航法に移行しましょう」

 機体は再び旋回を始め、帝国領へと、その船首を向けた。

<次回予告>


 ヘレンとの通信を切られた五人は、必死の抵抗を試みた。


次回マーベリック

第四章 第二十五話「跳躍」


「幸せになる権利は、おまえにもあるってこと、忘れんな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ