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第二十四話「真相」

 監察衛星オルドープには、千人を超える技術者が存在していた。

 いずれも、連邦最高峰の能力を有する者達であった。

 マーベリック博士を中心とした開発チームが発足したのが、五年前。その後、クラーギナ財団の庇護下に入り、膨大な資金力と技術力を吸収した。メンバーも増えた。三年前には、連邦政府直轄の開発部隊となり、二年前からは、機密保持のために外界との接触を断って、開発が進められてきた。

 技術者達は、監察衛星オルドープに移り、そこで生活した。周囲とは一切の連絡を閉ざし、新型ワープ機関の実現に努めた。

 ようやく見通しがついてきた時に、チームの中心であった、マーベリック博士が死んだ。宇宙空間での機関確認中の事故であった。

 一同は悲しんだが、開発は続けられた。

 三基で一組の新型ワープ機関の雛形が完成し、あとはそれらを接続し、外装となる機体を作成する段階まで達した。

 そんな時に、情報が漏洩した。

 新型ワープ機関開発の噂が、サイバー・スペースの一部で流れはじめた。漏洩者がいたためか、それとも、多くの技術者が、表舞台から遠ざかったことが目立ったのか。

 理由は不明であったが、計画には変更が加えられた。

 三基の新型ワープ機関は、宇宙ステーション・ヘブンに運ばれ、カモフラージュ用の機体に搭載された。

 カモフラージュ用の機体は、連邦軍が極秘で建造していた、最新鋭の試作戦闘機であった。新型ワープ機関とは別個に開発が進められていたものであったが、その数は、ワープ機関の数と同じ、三隻であった。

 三基のワープ機関に、三隻の試作戦闘機。そこに、何らかの意図が初めからあったのかどうかは、技術者達の知ることのできる範疇を越えていた。

 ともあれ、三基のワープ機関は、新しい衣装を身に纏い、彼らのもとに帰ってきたのである。

 途中、ヘブンへと出張する者も多かったが、技術者全体の半分以上が、この時初めて“マーベリック”を見ることになった。

 艦内の状態も知った。

 ヘブンに出張した人間から聞いてはいたものの、大型のスクリーンに映し出された六人の姿に、一同は嘆息した。あれが噂の、クレイジー・ボーイズ。マーベリックの搭乗者達。パイロット用のヘルメットは、透明で球型をしており、六人の表情は過不足なく伝わってくる。

 情報の制御等、任務を持って管制室にいる者とは別に、現状での任務はないが、新型ワープ機関の開発に携わった技術者達も、マーベリックの勇姿を見ようと、管制室に詰めかけてきていた。

 全員が、熱い気持ちに取り付かれていた。

 もちろん緊張もしていたが、それ以上に、喜びが大きかった。

 自分達の造ったワープ機関が完成した。目の前の空間に浮かんでいる。人類の夢が、五年間の努力の結晶が、すぐ、そこにある。

 管制官の長も、そんな技術者達を咎めはしなかった。

 彼らの献身的な努力の結晶が、このマーベリックなのである。はしゃぐ気持ちは、よく分かる。任務と役職さえなければ、自分も一緒になって、ダンスでもしたい気分であった。同じ目標に向けて、共に歩んできた仲間達。いわば巨大な家族のような連帯意識が、オルドープには存在していた。

 管制官の長は、もう一度まわりを眺めた。

 男性技術者がいる。

 女性技術者がいる。

 管制官達がいる。

 新型ワープ機関の開発者達がいる。

 新型試作戦闘機の開発者達もいる。

 カモフラージュに使用されたとはいえ、三隻の試作戦闘機も、開発の当初からレベル・セブンに指定されていたほどの機体である。そこに携わった技術者達の頭脳は、ワープ機関の技術者達のそれと比べても、決して劣るものではない。

 この場に納まらない者達も含めて、総数千人超。堂々たるメンバーであった。

 人類の夢に向かい、これだけの才能を率いて、指揮を執ることの喜びを、長は噛み締めていた。彼ら、彼女ら、そのすべてが、自分の背中を後押ししていた。

 スクリーンに視線を戻す。

 遂に。カウント・ダウンが六百秒を切り、管制官達も、時計を見るのが一番の仕事という状況となった。

 ワープ自体には、危険性は少ないものと想定されていた。問題は、ワープ・アウトの場所である。はたして、予想どおりの地点なのかどうか。予定どおりの距離を跳躍できるのかどうか。

 だが、彼らがその結果を知るのは、まだ先のことである。ワープの前と後に、宇宙船は亜光速空間に入る。中のパイロット達にとっては十分にも満たない時間であるが、通常空間にいる管制官達にとっては、数日の出来事となる。亜光速空間とは、外部から見れば時間の進みの遅い空間なのである。さらには、ワープ・アウト後の空間からの通信が届くのにも、多少のタイム・ラグが存在する。

 いずれにせよ、監察衛星オルドープの管制官達ができることは、もはや限られており、あとはマーベリックが、亜光速空間に向けて、発進するのを待つばかりである。

 そこまできた時、変化が起こった。

 白い機体が、旋回を始めたのである。

 予定外であった。

 機体のパイロット達がヘレン・スタイナーに状況説明を求めている姿が、巨大スクリーンに映し出されている。

 管制官達も連絡を取ろうとしたが、一向に回線は繋がらなかった。

 不穏な空気に、管制室の緊張は高まった。

 集まっていた技術者達も、異常を悟った。

「マーベリックのエネルギーが急速に上昇中っ」

 それまでのざわめきが、一気に大きくなった。

 いったい、何が起こっているのか?

 何が起こるのか?

「マーベリックの旋回が停止っ。エネルギー上昇っ。しゅっ、主砲の照準がこちらに合わされていますぅっ!」

 報告した管制官の声は、悲鳴に変わっていた。

 数百の人間が、パニックに陥ろうとした。

 その、直前に。

 巨大なスクリーンが、白色に輝いた。

続く

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