↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/243

第二十二話「思惑(前編)」(ナチアスチア)

 ナチアは、緊張していた。

 ほほっ。

 少しだけ、可笑しかった。緊張している自分が滑稽だった。

 わたくしともあろう者が、このざまはなんですの?

 自嘲する。

 実機に乗って宇宙空間に出る時、いつもナチアは緊張していた。何度も演習を重ねて、少しずつ薄らいではきていたが。

 最初の時よりは、マシになりましたわ。

 自分に言い聞かせる。

 初めて実機演習を行った時は、取り乱してしまった。ボディ・スーツも体術も、クラーギナの力すら通用しない空間。生きているのが当たり前という、これまでの常識が通じない時間。分かっていたつもりが分かっていなかった。

 二度と、ああはなりたくなかった。だから、実機演習の時は、いつも真剣であった。大好きな宇宙を嫌いになるなど、あってはならない。

 この作戦も、あと僅か。必ず成功させてみせますわよ。

 …ですが。それにしても。

 さすがですわね。

 ナチアは、操縦席を見回す。

 視界のほとんどを覆い尽くすメイン・スクリーン。体を取り囲む大型のコンソール。常人では扱いきれないほどの計器。天才にしか心を許さない制御シート。

 居心地は悪くなかった。

 さすが、クラーギナ財団特製のコクピットですわ。

 ほんの少しですけど、見直しましたわよ、お祖父さま。

 さぁ、あとは、マーベリック博士の遺産を動かすだけですわ。

「ポイント到着。全機レーダー展開」

 教官の声が、通信器から聞こえた。

 指示どおりにレーダーを展開すると、三つの光点が示された。その内の一機は、ナチアの乗る三号機である。

 さらに観測範囲を広げると、新たな光点が七つ現われる。

 なんですの、これは?

 ナチアの心音が、その速さを上げる。

 敵? 宇宙海賊?

 まさか、そんな筈ありませんわ。

 でも。まさか。

「レーダーに七つの機影を確認した筈です」

 ええ、しましたわ。

「彼らは我々を先導してくれます。目標を右端の機体に合わせ、ポイントを設定しなさい」

 先導? ポイント設定?

 言われれば、やってさしあげますけど、ですけど、何をするつもりですの?

 まさか、このまま、なんて、ありませんわよね?

「我々はこれより、長時間の移動に移ります」

 まさか、本当ですの?

「各機のポイント設定をこちらでも確認しました。これより先は、私がコントロールを行います。各機、一切の操縦は不要です。指示のあるまで、コンソールへの接触を禁じます」

 この船に乗るのは初めて。

 いくらなんでも…ですわよね?

「それではこれより、あなた達が今回の航行中、唯一扱う事のできる機器の取り扱いについて、説明を行います」

 説明ですって?

 いまさら?

 それよりも、これから、本当に行くんですの?

「この機器は、若干特殊であり、今までの訓練で扱っていません。簡単ではありますが、説明を良く聞く様に」

 え?

 今までの訓練で、扱わなかった物があると言いますの?

「各機・各席のスクリーンに、ガイドを送ります」

 ちょっ、ちょっと、これっ!

「つまりそれだけ、長い航行になる、という事です」

 ちょっと、お待ちなさい、許しませんわよっ。

「各自、モニターに注目」

 嫌ですわ…。

「これより、簡易排泄物処理装置の説明を行います」

 助けなさい、ユーキぃっ!

<次回予告>


 ユーキは、悩んでいた。

 別に、簡易排泄物処理装置の使い方で悩んでいた訳ではない。


次回マーベリック

第四章 第二十三話「思惑(後編)」


 こんなことなら学校で、もっと聞いておけばよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。