第十七話「対ウイルス戦」(5)
「ウイルス、レベル・スリーを突破っ」
「焦るな、クリス。大丈夫だ」
「はいっ」
「新しいワクチンは?」
「あと百二十秒で完成しますっ」
すでに、約百人の管制官達がクリスの手足となり、新たなワクチンの作成に取りかかっている。
クリスとシンの会話に入ってきたのは、ヘレンであった。
「クリス」
「はい?」
「最悪でも、レベル・セブンの最高機密だけは、護らなければなりません」
「はい」
「いざとなれば、メモリーの全てを、私の手で消去します。その前に、敵がレベル・セブンに接触する前に、決着をつけなさい」
「はいっ!」
クリスが勢いよく答え、ヘレンはゆっくりと頷いた。問題はないと、言い聞かせるように。
すでに、ハッカーの逆探知を行う余力は管制室に残っていなかった。ウイルスに占拠されていた通信機能が回復できていないため、逆探知も、外部からの応援要請も、やはり不可能なことであった。
「ウイルス、レベル・フォーを突破っ」
少年は、息を大きく吸い込む。
「みんなっ、ぼくについてきてっ!」
クリスの声に、五人が答える。
「了解した」
「オーライっ」
「がんばろう!」
「よろしいですわ」
「了解しました」
孤立無援の、状況の中で。
管制室の戦いは加速度を増していった。
ぼくがやらなきゃ。
クリスは心の中で呟いていた。
ぼくが頑張らなきゃ。
呟きは、いつしか強い想いへと変化していく。
「ウイルス、レベル・ファイブを突破っ。レベル・シックスに接触っ!」
自分で言って、自分で復唱する。
ウイルス、レベル・ファイブを突破。レベル・シックスに接触。
時間がない。
すでに、決して流れてはならない情報が流れている。
ぼくが、とめなきゃ、だめなんだ。
レベル・シックスの四十パーセントがハッキングされた。
負けちゃあ、だめなんだ。
シンさんや、ユーキさんや、ボーイさんや、ナチアさんや、教官のために。
ぼくを助けてきてくれた、大勢のみんなのために。
負けちゃあ、だめなんだっ!
連邦最高機密、レベル・セブン。
ぼくが、護ってみせる。
でなければ。
ぼくの来た、意味が無いっ。
レベル・シックスの七十パーセントがハッキングされた。
時間がない。いや、ある。
護ってみせる。防いでみせる。
ぼくと。
みんなで。
護ってみせるっ。
レベル・シックスの八十パーセントがハッキングされた。
しまった。
ウイルスが、また進化した。ハッキングのスピードが上がる。
レベル・シックスの九十パーセントがハッキングされた。
間に合うのか?
間に合わせてみせる。
負けるもんか。
レベル・シックスの九十五パーセントがハッキングされた。
負けるもんか。
レベル・シックスの九十七パーセントがハッキングされた。
負けるもんか。
レベル・シックスの九十九パーセントがハッキングされた。
「負けるもんかぁあああっ…!」
いつしか叫んでいた。
そして。
レベル・シックスが、突破、された。
続く




