21「急な謝罪」②
なるほど、とレダは理解した。
かつて店から叩き出した男が、店主の知り合いとして現れたりしたらそれは驚くだろう。
レダが彼女を恨んでいれば、最悪の場合、仕事を失ってしまうのではないかと考えるのもわかる。
――だが、レダは彼女のことを覚えていなかったし、覚えていたとしてもいちいち誰かに言うこともしないし、罰を与えたいとも思わない;
店員はレダのことを覚えていた。
だが、当時のことを悪いと思って謝罪したいわけではない。
レダが店主であるマーゴットと知り合いだから、「形だけ」誤っているように見えてしまった。
「――私も当時のことを思い出しました。ですが、謝罪は結構です。その後で、親切な店で欲しいものを買えましたから、お気になさらず」
「……レダ様」
「……失礼。嫌味を言うつもりではなかったんです」
冒険者にとって、武器や防具など身につける装備品は命に直結する大切なものだ。
だから金があれば少しでも良いものを買おうとする。
もちろん、金はあっても、紹介状を持たなかったレダも悪い。しかし、紹介状が必要だったのは後であったし、紹介状がなくとも金があれば入店できることもあるようだ。
結局は、店員次第だと聞いた時には憤ったものの、確実な紹介状を用意しておけばよかったとレダ自身が反省した。
その後、自分をパーティーに迎えてくれたジールの行きつけの腕のいい職人から装備を買った。今でも、その時のものは大切に持っている。
もう戦いには使えないが、思い出として大事にしているのだ。
――なので、今さら過去の話をされても困る。
「私も気にしていないので、あなたも気にしないでください」
「……はい。申し訳ありませんでした」
女性の定員は謝罪をし、下がった。
少し冷たい対応だったかなとレダは考えたが、いや、と首を横に振る。
謝罪をしたのは彼女の都合で、こちらは受け入れた。
ならそれでいい。
(――この店を叩き出されたことをきっかけでジールに声をかけてもらったことを思い出すと、とても懐かしく、嬉しくて、胸が切ない)
「――ディアンヌさん、そろそろ帰りましょう」
「はい、レダ様。あの」
「はい?」
「……大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「おまっ、何やってんだよ! はぁ、この店を叩き出された? 馬鹿だなぁ、この店は店員の当たり外れがあるからちゃんと紹介状をだな……あー、あんた金はあるんだよな? なら、俺の行きつけの店を教えてやるよ。店主は死ぬほど不機嫌だけど、腕はいいんだ。それにお手頃価格なんだぜ? あ、そうだ。あんた、名前は? 俺はジール、よろしくな!」




