17「ミナにも?」①
「――はぁ。一時はどうなることかと思った」
レダ・ディクソンは、無事に双剣の魔剣を支配下に置いたルナ・ディクソンの手のひらを治療すると、大きく安堵のため息を吐いた。
「やあねぇ、パパったら。ほら、お店の人たちもどうってことない顔をして片づけしているじゃない。これが日常茶飯なのよ」
「それはそれで怖いけどね。とにかく、ルナを信じていないわけじゃないけれど無茶はしないようにしてね」
「はーい。でも、あたし的には短い時間だったけど魔剣とやりあえて楽しかったわぁ」
「……ウキウキした顔だったもんね」
「うふふ。パパったら、魔剣に妬かない妬かない」
笑うルナだが、いつもよりも元気がない。
治癒は怪我を癒すことができるが、失った体力や気力まで癒すことはできないのだ。
「ディクソン様、よろしければこちらをお使いください」
そう言って声をかけてくれたのは、先ほどまでルナと魔剣との戦いのせいで商品が散乱してしまった店内の片付けの指揮をとっていた、マーゴット・ライリートだった。
彼女が手渡してきたのは、赤く頑丈な皮で作られた鞘がふたつ。
「双剣の炎を封じることができる鞘です。私の店に双剣が流れてくる何年も前に封印用に作られたものです」
レダが頬を引き攣らせた。
そんなものがあるのなら、最初から鞘にしまっておけ、と思ってしまった。
「きっと魔剣を最初から鞘にしまっておけと思ったでしょう」
「……ははは、そんなことはちっとも思っていま……すん」
「パパ、最後ちょっと抵抗したの聞こえたからぁ」
「いいえ、レダ様のおっしゃる通りです。私も最初に説明を受けた時にはなぜと思いましたが、鞘に収めてしまうと魔剣側が使い手を見つけることができないそうです。良い目玉商品でもありましたので、少々の被害など大したことではありません」
鞘を受け取ったルナは、「また後でね」と魔剣に微笑み収める。
魔剣から伝わる魔力が遮断されたのがわかった。
「店に関しては片づけ終わりましたので、どうぞお買い物を再開してください」
「……え?」
「一流の冒険者がこちらにきますと、このくらいのことは平然と起きますので、お気になさらずに」
「……は、ははは、それもそれでどうかと思いますが……お言葉に甘えます」
レダは顔を引き攣らせながらも、マーゴットの善意を受け取る。
そして、「そういえば他のみんなはどこに行ったのだろう」と考えた時、しゃらん、と背後で音がした。
振り返ると、愛娘のミナが銀色の錫杖を手にしていた。
「……あの、ミナ。それはどうしたのかな?」
「よくわからないんだけど! お片付けを手伝っていたら、ぴゅーって飛んできたの!」
「それってつまり」
「あたしみたいに選ばれたってことよねぇ」
ミナも若干困惑気味だった。
しかし、レダとルナは違った。
「――うちの娘すごい!」
「――うちの妹すごい!」
ミナが関わると、レダとルナも少し反応が過剰だった。




