15「ウェルハルトの説明」③
はっきりと言葉にするウェルハルトにアストリットは苦笑いを浮かべてしまった。
王族を支える貴族といえば聞こえはいいが、実際はそれほど良い関係ではない。
例えば、公爵は王族の血を濃く引いているため、王位継承もある。
いつ王位を狙うのかわからないという心配だってあるのだ。
公爵家は王家に協力的であるが、過去に王位を狙った者がいないわけがない。
侯爵家も、王族との繋がりはある。
あわよくば、王家の血を濃く一族に取り込もうと企む者も多い。
また、公爵にも侯爵にも派閥があるため、ギスギスしているのだ。
過去には、ウェルハルトを王子にするか、他の人間を連れてくるかで揉めていたこともあったようだ。
そして伯爵家。
王家との血の繋がりこそ薄くなるが、まったくないわけではない。
何よりも、国を支える重鎮たちだ。
古い一族になると建国から続く家もある。
そんな貴族たちが、レダに味方してくれるということがアストリットには不思議でならない。
いくらレダが優れた治癒士であったとしても、王家と教会と繋がりができた以上、おいそれと利用することはできない。
無論、困っていると頼めば断らないだろうが。
レダのアイテムボックスの中にある、「災厄の獣」の魔石も王家に献上することが決まっているので、横から奪い取るなんてことは絶対にできないのだ。
ならば、なぜ、とアストリットが考えるのは自然のことだった。
「一生懸命考えている姉上の表情を見ているだけで、ゾクゾクします!」
「そ、そう。私は弟の発言にゾクゾクするわ」
「お揃いですね!」
「そういうのはいいから、どうして公爵家たちがレダの件に協力的なのか教えてちょうだい」
「姉上はせっかちですね! それも素敵です! ――まあ、レダ兄上にご家族を救われた方々がいると言うことです。おそらくレダ兄上は、救ったお相手が貴族であることはわからなかったでしょう。貴族側も隠していたでしょうし。いえ、レダ兄上ならば、相手が貴族か貴族ではないということなど関係ないでしょうね」
レダは良心的な治癒士だ。
以前は一介の冒険者でしかなかったが、その時に知る人ぞ知る治癒を持つ人間だった。
冒険者ギルドがレダの情報を隠さなければ、彼は大きく出世していただろう。
「助けてもらったあとにふらりと消えてしまうので探そうと、冒険者ギルドを頼っても、その冒険者ギルドがレダ兄上を貴族に渡したくありませんでしたからね。冒険者ギルドのやらかしが判明し、レダ兄上を探していた貴族たちが道理で見つからないわけだと納得し、お怒りでした」
「……結局、レダの善行のおかげね」
「――その通りです。そして、期待があるのです」
「期待?」
ウェルハルトはにこやかなまま、言葉を続けた。
「王家が保管していた魔導書がレダ兄上に届いたはずです」
「――――っ、まさか」
「そう、そのまさかです。父上、いえ、陛下を含めて皆がレダ兄上の成果に期待しているのです」




