13「ウェルハルトの説明」①
善行の結果、知らぬ間に敵を増やしていたレダ・ディクソンを守るため、王家が考えたことは爵位を与えることだった。
平民であるレダを王家が守るにも限界はある。ならば、取り込んでしまえばいいと考えるのが基本だ。
実際問題として、アストリット・ウィンザード第一王女と結婚している時点で取り込みは完了している。
ローデンヴァルト辺境伯の妹ヴァレリーも、派閥は王家だ。
辺境伯ティーダ・ローデンヴァルトとの関係は良好であり、彼が拠点とするアムルスに診療所を開き、根付いてくれた。
レダ・ディクソンは、貴族ではないが王家に取り込まれている。
その上、貴族たちはまだ知らぬ者は多いが、教皇ウィルソンと聖女ディアンヌをはじめ、教会との関係も深くなった。
正式ではないが、聖女の娘であるミナを娘にし、彼女の義姉を妻として娶っている。
もしかすると、聖女ディアンヌもレダと結婚する可能性があるのだ。
そして、ウェルハルトの周囲しか知らぬことだが、レダの周囲には元貴族の令嬢もいる。それも、死んだと思われていた方だ。生存が正式に確認されれば、貴族がひとつ動くだろう。
他にもレダの弟子たちには貴族の子女がいる。彼女らの家族を数に入れれば、後ろ盾だけならば十分すぎる。
しかし、悲しいかな、貴族は貴族と貴族以外を分けて考える者が多い。
特に、レダ・ディクソンによって「うまい汁」を奪われた貴族たちは、貴族と平民を別の生き物くらいに思っている場合もある。
ゆえに、危険なのだ。
遠いアムルスに普段はいても、いつ誰が、どこから、悪意を向けるのかわからない。
ウェルハルトが常に気を張っていても、すべてを防ぐことはできないのだ。
「――姉上も王女としてご公務をしていた時がありましたね。貴族との関わりもあったでしょう。貴族というのがどれだけ醜い存在か知っているはずです」
「言われなくともわかっているわ」
アストリットの顔に大きな傷を与え、視力を奪ったのも貴族だ。
彼女を捨てた元婚約者も貴族だ。
「僕としても、姉上たちには田舎でのんびり生活をしていてほしいと願っています。なので、肩書きだけでもつけさせていただきます。これは譲れません」
「……別に、私は反対しないわよ。ただ、レダが納得するかしら。あの人、謙虚すぎて頑固なところもあるわよ」
「そこがレダ兄上の美点です。綺麗事を綺麗事としてできる人間がどれだけいるでしょうか。レダ兄上には、強さがあります。いざという時に発揮する、強い意思の強さです。そこに皆様惹かれたのでしょう」
「――そうね」
「私も王子でなければ嫁ぎたかった」
「あなた、ちょくちょく変なこと言うのが好きね。それとも、真面目に言っているの?」
「ええ、真面目ですけど。変なところがありましたか?」
「……別にいいわ。それで、爵位は決まっているの?」
「はい。――男爵位です」
アストリットは内心驚いた。
一台限りの騎士爵を与えるくらいだと思っていたのだ。
「一代だけではありません。ディクソン男爵家となるでしょう。個人的には、美しい姉上の旦那様であるレダ兄上には国王になってほしいのですが……その案は会議で却下されました」
「むしろ、会議でそのことを言ったことに驚きよ」
アストリットは嘆息した。




