8「ルナの出会い」③
――かたっ、かたかたかたかたっ、かたかたっ、かたっ!
布の下にある魔剣が音を鳴らしている。
魔力の込められた封印具によって封じられているというのに、動き出そうとしているようだ。
レダたちはすぐに身構える。
レダはルナとミナ、ヒルデを庇うように前に立ち、ウィルソンもディアンヌとエンジー、ルルウッドを庇った。エルザが腰の剣に手をかけ、いつでも対応できるように身を低くした。
マーゴットだけが平然と身構えている。
「お願いだから、店の中で暴れて弁償なんてことにならないでよ」
祈るようにレダが言う。
魔剣に言葉が届いたのか、さらに激しく暴れてしまう。
「……余計なことを言ったかもしれない」
「試すと言ったことがきっかけになったのかもしれませんね。魔剣側はやる気です」
「マーゴットさんは余裕ですね!?」
「商売をやっていれば、このくらいのことはよく起きます」
「よく起きていいことじゃないと思うんですけど!」
「ご安心を。仮にこの建物が焼けても皆様にご迷惑はおかけしません」
「ほっとしますけど、そういう問題じゃなくてですね」
商人というのはこうも肝が据わっているのだろうか。
それでも、弁償しなくていいことにほっとしてしまう自分が情けない。だが、この規模の商会に何かあったら一生かかっても弁償できないだろう。
「――くるわよぉ」
舌足らずだが、警戒の混ざったルナの声が届く。
次の瞬間、封印具の拘束を無理やり解き、ケージを両断して双剣が飛び出してきた。
「やっぱりこうなるんだね!」
湾曲した双剣はまるでブーメランのようにこちらに向かってくる。
否、ルナに向かって、だ。
「ルナ! 逃げるんだ!」
「パパのお願いでもできないかなぁ。あの子たち、私と勝負したいみたいだしぃ」
「魔剣に選ばれたのであれば、差し上げます。お金は一切いただきません」
「ラッキー! やる気でちゃうんですけどぉ!」
「マーゴットさん!? どうして焚き付けるんですか!?」
「いえ、もうここまできたらやるしかないのではと思いまして」
「そうですけど!」
「大丈夫よぉ、パパぁ。あたしって、超自信あるの! ママ、みんなのことよろしくねぇ」
「任せておけ。きちんと魔剣をモノにしてしまうといい」
「了解―!」
心配するレダをよそに、ルナはやる気になって床を蹴る。
大きく跳躍すると、店頭に飾ってあった違う双剣を握り、迫る魔剣に力強く振るう。
金属音が響き、魔剣が弾かれた。
左右に飛んだ魔剣が、再びルナに向かう。
くるり、と宙で一回転して床に綺麗に着地したルナは舌を舐めると再び跳躍すると、壁を走り始める。
魔剣がルナを追う。
ルナは壁を蹴り、天井を蹴り、地面を蹴り、縦横無尽に移動する。
その動きは、魔剣よりも速い。
何度も弾かれ、失速していく魔剣と距離が生まれていく。
ルナはさらに足に力を入れて、速度を上げる。
もう、魔剣は追いつけない。
ルナとどんどん距離は離され、そしてついに背後に回られた。
「ちょっと遅いんじゃない?」
双剣を手放し、魔剣の柄を握りしめた。
「――っ」
鋭い熱がルナを襲うが、このくらいで負けたりはしない。
しっかり握りしめた魔剣を大きく振りかぶり、床に突き立てた。
柄まで床に埋まった魔剣は動けなかったのか、それとも負けを認めたのか、静かになる。
額にうっすら汗を浮かべたルナは、魔剣から手を離すと腰に手を当て胸を張った。
「――あたしの勝ち!」




