7「ルナの出会い」②
「ルナ、ちょっとごめんね」
レダは双剣を見つめるルナの目を手で塞いだ。
しばらくして、ルナの身体から力が抜ける。
「おっと」
背後から細い身体を抱き抱えると、マーゴットが声を張り上げた。
「――誰か椅子を!」
従業員がすぐに椅子を用意してくれて、ルナを座らせる。
その間に、マーゴットが双剣の入ったケージに布をかけてくれた。
「レダくん、ゆっくり手を離してください」
ウィルソンに言われ、そっと手を離す。
「……パパ? あれ? あたし、どうしたのかしらぁ?」
ルナはキョロキョロ周囲を見渡すと、少し前の出来事を思い出したように唾を飲んだ。
「……あの剣、とても素敵だったわぁ」
「ミナ」
「大丈夫よぉ、パパぁ。今は平気。ごめんなさい、みんなも」
ルナはもう大丈夫と笑い、立ち上がった。
「何があったのか説明できる?」
「うん。良い武器がないかなーって思っていたら、呼ぶ声が聞こえたのよねぇ。声の方に顔を向けたら、目が合った……剣に目はないんだけどぉ、こう通じたのよねぇ。それで、あ、逸らしたら負けだわぁって」
魅入られたというよりも、睨み合いだったらしい。
「先に視線を逸らしたら斬られちゃうわぁって。実際はそんなことはないんでしょけどぉ、さっきは本気でそう思って目を逸らせなかったのぉ」
「マーゴッド殿、先ほどの双剣は魔剣ですね?」
ウィルソンが尋ねると、マーゴットは首肯する。
「はい。誰が打ったものか不明ですが、どこからかこの国に流れてきた炎の魔剣です。遡っても使い手らしい使い手はおらず、不用意に扱おうとすると焼かれるという逸話があります」
「……よくそのような魔剣をお店に置いていますね」
「武器として扱おうとしなければ問題ないと聞き、いくつか試しました。意思があるとも聞いていたので、あくまでも展示用として静かに眠って欲しいと伝えたところ現在に至ります」
確かに、展示品としては素晴らしい物だ。
炎のような真っ赤な双剣。
赤みのかかった波模様がある刀身は、短剣よりも気持ち長いくらいだ。
「購入時の条件で、魔剣の使い手を探すというものがありましたので、もし真剣に意思がああるようならばお互いに見える場所が良いと考えたのです。実際に、一ヶ月にひとりは売って欲しいという申し出がありますが、触れるようとしては怯え逃げてしまいます」
「て、展示品としてそれはありなんでしょうか?」
「冒険者の方々が曰く付きを好みますので」
ふふふ、と微笑むマーゴットは商売人の顔をしていた。
「魔剣さんに呼ばれたお姉ちゃんは、選ばれたの?」
ミナが全員の疑問を代弁してくれた。
「わかりません。どうしますか、ルナさん。試してみますか?」
「――いいわねぇ。睨み合いは中途半端になっちゃったから決着をつけようじゃないの」
「こら、ルナ」
「いいでしょう、パパぁ!」
「せめて店内ではやめて! 弁償できないから!」
ルナが挑むと言ったら挑むだろう。
邪魔をする気はないが、店内で万が一が起きて周囲の物が焼けたら大事件だ。
(――そもそも、魔剣にルナが選ばれたとして……この魔剣は一体いくらするんだろう!?)
冒険者にとって魔剣は憧れた。
値段もピンキリではあるが、ライリート商会が自信を持って飾っているのだから、絶対に高い。
やる気にみなぎっているルナを応援すべきかどうか、レダは悩んでしまった。




