4「買い物リベンジ」②
馬車に揺られて再び大通りを移動するレダたち。
昨日世話になった店よりも、貴族の住宅街に近い場所に馬車が止まった。
「…………この店が、マーゴットさんの?」
馬車から降りたレダたちは、三階建の建物を前に少々萎縮していた。
ただ三階建の建物であれば、そう驚かなかっただろう。
三階建の商店は珍しくない。
しかし、レダたちを驚かせたのは、店の規模だ。
周囲にある店の三倍、横に広い。
王都の一等地にこの規模の店を出せるのは、商才云々の話ではない。
「エンジー、あんたぁ、実家継いだほうがお金持ちじゃないのぉ?」
ルナが揶揄うように言うも、エンジーは苦笑いする。
「ルナさん、自慢になりませんが……僕が仮にこの店を運営する立場だったら、一日で潰すか乗っ取られる自信があります」
「本当に自慢にならない自信ねぇ。ある意味、エンジーらしいといえばらいいんだけどぉ」
店の大きさに驚いているのは、レダ、ルナ、ミナ、ヒルデだけ。
エンジーはもちろん、ルルウッド、ウィルソン、ディアンヌ、エルザは違った。
王都に住んでいるのであれば、この店を知っているだろう。
エルザだけが、「いや、世話になっている教会の方が大きいではないか」と少々感覚が違うことを言っていた。
「……この店が、マーゴットさんのお店かー。そうかー。そうだったんだー」
レダはなんともいえない顔をしていた。
「お父さん、どうしたの?」
父の変化に気づいたミナが尋ね、レダが肩をすくめ、過去を懐かしむように語る。
「……昔、この店で武器を買うのを憧れていたんだ。うん、それだけさ」
「そうなんだね! じゃあ、お父さんの夢が今日叶うんだね!」
「ははは、そうだね」
我がことのように喜んでくれる優しい娘の頭を撫でる。
(――さすがに、この店から蹴り出されたことがあるとは言えないよなぁ)
冒険者時代、お金を貯めて入ろうとしたが、紹介状もなく、ランクの低い冒険者だったレダは容赦無く蹴り出されたのだ。
いつかこの店で堂々と買い物をしたい、という夢を持ったことがあるが、王都での辛い日々を過ごしていたことですっかり忘れていた。
久しぶりに、この店の前にたち思い出した。
(……そういえば、この店から蹴り出された後に、ジールに声をかけられたんだっけ。お前田舎から出て来ただろって)
故郷から出てきて初めて受けた王都の洗礼。そして、大切な仲間との出会いが、この商店だった。
まさか治癒士になり、娘と妻と弟子を連れて、しかも教皇と聖女と一緒に再び訪れる日が来るとはいくらなんでも当時は夢にも思わなかった。
「それでは、行きましょう」
当時と比べて、年を重ね、いろいろなことがあった実感を背負いながらレダは娘と手を繋いで店の門を潜った。




