1「ジールに対しての推測」
「聞けば聞くほど、前任者は不愉快な男だ。最後まで自分は悪くない、このくらい誰でもやっていると言い続けていたよ」
「上に立つには欲が強すぎる男でした。同時に、操りやすい男でもありました。前任者は、前任者で側近たちにいいように動かされていました。矢面に立つにはちょうどいい人間でした」
結局のところ、誰も彼も欲深いのが冒険者ギルド上層部の実態だった。
「君は知っているかな? どうしてパーティーリーダージールは最後までレダ兄上を利用しなかったのか。レダ兄上の性格だ、仲間が道を踏み外してしまったからこそなんとかしようと奔走していたはずだ。付け入ることはできただろう。我々としては、貴族に取り込まれていい思いをするのが嫌だったと考えているが……レダ兄上だけがいい思いをするとは思わない。付き合いが長い彼ならば、そのくらいわかるような気がするのだが」
「――推測ではありますが」
「構わないよ」
「ジールは、レダ・ディクソンを解放したのだと思います」
「面白いね、続けて」
ウェルハルトは身を乗り出して続きを促す。
「ジールは仲間たちと前ギルド長のもとでいくつか仕事をしていましたが、その仕事にレダ・ディクソンとアイーシャ・オールロは関わっていません。またふたりの前では、ジールの態度は決して悪いものではなかったようです。レダ殿が追放される少し前から、荒れて周囲に当たり散らすようになっていると報告を受けています。正義感の強いアイーシャともぶつかることが多くなったとも」
「……アイーシャ・オールロは知っているよ、現在、アムルスで防衛をになってくれている」
「はい。レダ殿を追放した後にアイーシャとジールが揉めて、飛び出した形になりました。もしかしたらジールも自分たちが取り返しのつかないところまできてしまったのだと理解していたのでしょう」
「それで、レダ兄上とアイーシャを逃した、と?」
「逃したというのは推測です……ですが、本当にレダ殿を利用したかったらできていました。アイテムボックスのことだって、言っていたはずです。私も知らなかった。だから、私の願望も入っていますが、ジールはレダ殿とアイーシャを守ったのです。冒険者にとって冒険者ギルド長は逆らえない存在ですからね……ただ、野盗に身を落としアムルスを襲撃したことは許されません。殺されて当然のことをしました。ですが、本当にただ、私の勝手な考えではありますが、レダ殿に助けを求めたかったのではないでしょうか」
「助けを求める行動ではないがね」
「失礼を承知で言わせていただきますと、一度どん底まで落ちてしまうと考えも変わってしまうものなのですよ」
多くの冒険者を見てきたマイオンの言葉は、重かった。
「……そうか。なるほど。であれば、最期はさておくとして、ジールにも善性が残っていた。レダ兄上とアイーシャは彼によって最悪の事態に巻き込まれることはなかった」
「そうであればいいと思います」
「なるほど。そうであればいいと私は願う。漆黒の狼リーダージールはレダ兄上とアイーシャの仲間であったと」




