126「母と息子」③
「ありがとう、エンジー。本当に、ありがとう」
涙を流すマーゴットをディアンヌがそっと支える。
レダはほっと安堵の息を吐いた。
――もうふたりは大丈夫だ、と確信できた。
家族の問題ではあるのでどこまで干渉していいのか悩ましい問題ではあったが、エンジー自身が大きく成長したおかげでレダが不必要に口を挟む必要なかった。
エンジーがひとりでマーゴットと話をするのが抵抗があったので、必要な要因ではあったが、結果的にはエンジーが頑張って母親と向き合った結果だ。
その頑張りに貢献したのはミナだろう。
ミナの言葉によって、エンジーの背中が押されたことは間違いない。
(……なんというか、あっという間に大人になっていくんだなぁ)
ルナの時に思い知ったはずだったが、ミナもすぐに大人になるのだろう。
ただ、できることなら可愛い娘はまだ子供でいてほしいと思う。
(――俺のわがままだけど、もう少しお父さんって甘えてほしいな)
そんなレダの心情が筒抜けなのだろう。
ルナがニンマリした顔を向けている。
レダは苦笑で返した。
「――マーゴット殿、我々は少々意見の食い違いから疎遠になっていましたが、これを機に良い関係を再構築できると喜ばしいと思っています」
涙を拭き、落ち着きを見せたマーゴットにウィルソンが声をかけた。
その声は優しく気遣うものだ。
「……はい。私も同じです」
「それはよかった。では、教会はエンジー・ライリートが滞在中にマーゴット・ライリート殿が自由に出入りできる許可を出しましょう。自由に会いにきてください、もちろん、エンジーが会いにいくことももんだいありません。また、ご家族の皆様も教会を訪ねてくださって問題ありません」
「お心遣い感謝します」
「いいえ、お気になさらず。親子の関係が良いものになるよう祈っていましたので、喜ばしいのです。きっとレイニー伯爵も同じでしょう」
「……伯爵にはとてもお世話になりました。失礼な態度も……後日謝罪に伺いたいと思います」
「謝罪ではなく、お礼の方が彼は喜ぶでしょう」
「はい、そうさせていただきます」
教会も伯爵家もエンジーとマーゴットの関係に心を痛めていたが、エンジー側に立っていた。
見守っている側も思うことはたくさんあったはずだ。
親子の関係に上から命じても意味がないとわかっていたからこそ、見守っていたのだろう。
「ああ、本当に、本当に良かった」
ウィルソンの心からの言葉。
それがすべてだった。




