124「母と息子」①
一時間ほどの休憩を経て、再度レダたちはマーゴットと集まり、話をすることになった。
今回違うのは、マーゴットの隣にディアンヌが座っていることだった。
「同じ母親としてフォローが必要ならばお力をお貸ししますが、基本的には見守りたいと思います」
ディアンヌのスタンスはあくまでも見守ることだけだった。
レダも今までの話で何度か口を挟んでしまったので、今回はできるだけ黙っていようと思っている。
エンジー自身が、ちゃんと母と向き合うと決意しているのだから自分も必要な時だけ口を出さないと決めている。
最初にあった不安も、今はない。
マーゴット・ライリートは悪人ではない。
どこにでもいる息子を想う母親だ。
ならば、あとはエンジーとマーゴットの問題である。
突き放しているわけではない。
今のふたりならば、関係は改善すると信じているのだ。
すでに、言葉を交わし、想いをぶつけ合った。
感情的になりすぎてはいけないと時間をおいた。
冷静さを取り戻しているのであれば、大丈夫だ。
「――それでは、先ほどの話し合いの続きをしましょう。どちらも言いたことはあるでしょう、想うこともあるでしょう。その上で、相手を思いやることができると信じています」
ウィルソンの言葉に、エンジーもマーゴットも頷いた。
同席しているミナははらはらした様子で、ルナはそんな妹を微笑ましく見ている。
最初に口を開いたのは、エンジーだった。
「……あの、お母様」
ゆっくりと、しかし決意のこもった声だった。
「……なにかしら」
「最初に、ごめんなさい。僕はお母様が僕のことを考えてくれていると想像することができず、一方的に悪く思っていました。だから、ごめんなさい」
エンジーはしっかりと頭を下げた。
「顔を上げて、エンジー。いいのよ、私も謝らなければいけないわ。ごめんなさい、エンジー。こちらの感情ばかり押し付けてしまって申し訳ないと思っているわ」
「お母様……」
「友人に利用され傷ついているあなたを、結果的に利用することになってしまい心苦しく思っているわ」
「いいんです。僕は、友達だと思っていた人たちに裏切られた……その感情までお母様にぶつけていたのだと思います。謝罪するのは僕の方です」
「――そう、かもしれないわね。でもね、エンジー。傷ついていた我が子を心配しても、きっと大丈夫と勝手に願望を押し付けるべきではなかったわ。忙しいを理由に、時間が解決してくれるなどと考えるべきではなかったわ。私がすべきだったのは、全力で悲しむあなたを抱きしめることだった。だから、ごめんなさい」
「いえ、僕の方こそ」
エンジーとマーゴットがお互いに謝罪し合う。
そして、苦笑した。
「謝ってばかりですね」
「本当にそうね」
いつまでも謝罪してばかりのふたりは顔を見合わせて笑った。




