123「母親と母親」④
一度、慌てふためいてしまったものの、ディアンヌもマーゴットもなんとか冷静さを取り戻した。
お茶を飲んで、一息つくと、会話を続けた。
「娘ミナは、エンジーを弟弟子といいますか、弟のように接しているのです。エンジーもそれをよかれと受け入れてくれています。だから、えっと、あまり、大きな問題ではないと思いますのでご心配なく?」
「は、はい、聖女様がそうおっしゃるのであれば、息子に大きな問題はない? ということにしておきましょう?」
冷静さを取り戻したはずだが、どこか成人男性が幼い少女に甲斐甲斐しく世話をされている姿を想像すると、問題なし、とは言い切れないようだった。
実際、エンジーは身の回りの世話は自分で最低限できる。ただ、それ以上にルルウッドが自立した大人としてあれこれてきぱきしているので、行動を共にしていたエンジーは少し甘えている部分があった。
また食べ物の好き嫌いもいくつかあったため、そこをミナが見つけ世話を始めしまったのだ。
ルナ曰く、いつも可愛がられているから可愛がる側に回りたいのではないかという。
元魔王であり現黒猫ノワールが、エンジーにたまに爪を立てているのは特に意味はないと思いたい。
「私もエンジーのことは見守ってきました。王都にいる時には面識はありませんでしたが、教皇様が気にかけている子として知っていましたので」
「息子のことを気にかけてくださりどうもありがとうございます」
「その上で、言わせていただきます」
「はい」
「――エンジーは大丈夫ですよ」
優しく、穏やかな声で、言い聞かせるように。
「彼はとても頑張っています。変わろうとして変われる人は決して多くありません。努力を継続することはあまりにも苦しいことなのです。しかし、エンジーは努力し、変わりました。立派な治癒士になりました。誇りに思ってあげてください」
「……聖女様、どうもありがとうございます。そう言っていただけて、本当に嬉しく思います」
「そして、あなたの気持ちもわかっているつもりです。同じ母親ですもの」
はっ、と息を呑んだマーゴットがディアンヌの目を見た。
「いくつかの事情があるのでしょう、様々な感情もあるのでしょう。ですが、母親ですもの、可愛い息子にそばにいてほしかった。それだけですよね」
マーゴットの瞳から涙が溢れた。
ぼろぼろと溢れ、止まらない。
「――はい。どうして素直に言えないのでしょうか。私は、ただ、エンジーにそばにいてほしかっただけなのです。傷つけてしまったことを、ごめんなさい、でも、心から愛しているのだと伝えたかっただけなのです」
マーゴットさんの考える、「治癒士をやるのなら王都でやればいい」という考えをはじめ、自分がそばにいれば力になれる、金もある、困ることはないという感情の根源は単純だったりします。ただ、言い方、伝え方、タイミング、あとは単純に言葉の足りなさ、会話の少なさ、仕事上必要なため身についた態度などもうまくいかなかったという感じです。
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毎週2話更新でお届けしている本作ですが、熱中症により倒れてしまったことで本日1話の更新のみで失礼致します。
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