122「母親と母親」③
マーゴットは震えた。
教会は国で一番の組織だ。我が国だけではなく、隣国、否、大陸中にも広がっている。
そんな教会が後見人であり、教皇が目をかけているエンジーを乱暴な方法でアムルスから連れ去ったとして、そこに聖女と聖女の娘がいたとしたら大変なことになる。
知りませんでした、ではすまないことだ。
「……大変申し訳ございません」
「あ、いえ、責めているわけではなくてですね、エンジーのためにも大ごとにならなくてよかったと思っているとお伝えしたかったのです」
慌ててディアンヌは手を振って違うと言う。
マーゴットの態度から、ちょっと言い方が不味かったなと思ったのだ。
「エンジーとあなたは色々あって疎遠になってしまっていたのは事実ですが、縁が切れているわけではなく、憎み合いっているわけでもないのですから、あなたになにかあればエンジーが悲しみます。私も、ミナもレダ様も、みんながそんなことは望みません」
「そう言っていただけて、ありがとうございます」
「それに、エンジーは私の娘のお気に入りなんですよ」
ふふふ、と微笑むディアンヌにマーゴットは震えが止まった。
硬直したと言ってもいい。
(今の言葉の意味はどういう……もしかして、恋仲? いえ、そんなことはさすがに、でも、ディクソン殿も聖女様もエンジーのことを気にかけてくれて――っ)
思考を回すマーゴットはひとつのことに気づいてしまった。
ついエンジーのことを子供扱いしてしまうが、もう立派な成人男性だ。
そんな息子が、幼い少女と恋仲であることは問題だろう。
親としては応援したいが、それ以上にまず、相手の親御様に謝らなければならない。
「――大変申し訳ございません!」
「え!? どうして急に謝罪を!?」
「息子が……いくら息子と距離があったからと、まさかロ……幼い子が好きだたったなんてい知りもせずに!」
「あ、いえ、いえいえい! 誤解です! そういう意味で言ったわけではなくてですね! あれ、でも実際はどうなんでしょうか。お互いに憎からず思っているのかしら」
「大変申し訳なく! どうお詫びしていいか!」
「また余計なことを言っちゃいまいた。違うんです、マーゴット様、落ち着いてください。まだエンジーとミナは何もありません!」
「――まだ!?」
「…………どうしましょう、また誤解を。えっと、えっと、そう、姉弟子弟弟子の関係です! レダ様の一番弟子のミナと次の弟子たちのひとりであるエンジーは、ご飯をあーんしてもらったり、日々の生活を心配されたり、面倒を見る仲なのです」
「それは、その、ミナさんがエンジーの?」
「ええ! ミナはとても甲斐甲斐しくエンジーのお世話をするんですよ!」
「……息子が幼女のお世話に……本当に、申し訳ございませんっ!」
「あ、あれー?」
適切な言葉が見つからず、説明も下手なディアンヌさん。
エンジーママは息子が幼女のお世話にならなければちゃんとできないことに驚きと悲しみ。
まさかこの二人が……いえ、なんでもないです。
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