120「小休憩です」
――エンジーとマーゴットの話し合いは、教皇ウィルソンの提案により小休憩となった。
マーゴットから謝罪があった。それ以上に、お互いに想っていることを言うことができるようになった。
長年、エンジーを見守っていたウィルソンやルルウッドからすると、今日の話し合いの内容は大きな進展だったようだ。
マーゴットは、事前に用意してあった部屋に通されており、彼女も感情的になった心を落ち着かせているだろう。
「――エンジー、頑張ったね」
「はい。みんながいてくれたおかげです。言いたいことを言えたと思います。それに、お母様の想っていたことをわかることができました」
エンジーの表情はどこか明るい。
母親を憎んでいたわけではない。家族を嫌っていたわけでもない。
幼少期に負った心の傷の痛みと、抱いてしまった負の感情を持て余していただけなのかもしれない。
心の傷は時間と、友のおかげで癒えたのだろう。
何よりも彼自身の勇気によって乗り越えているのかもしれない。
まだレダとエンジーは出会って短いが、その間に多くの出来事があった。
今までの経験と、短くも濃厚なアムルスの日々が彼を成長させたのだろう。
今のエンジーだからこそ、マーゴットと向き合えたと思う。
「ミナ先輩、どうもありがとうございました。ミナ先輩のおかげです! あの時、がつんと言ってくれて、本当に嬉しかったです!」
「いいんだよ、エンジー。私は先輩だもん! それに……やっぱりお母さんとちゃんとお話しできた方がいいもんね」
「――はい」
ミナの一喝がなければ、ここまで話が進まなかった可能性は多いにあった。
ミナ自身も母ディアンヌの存在を知り、戸惑ったことはある。
だからこそ、エンジーのためにあの場で声を上げることができたのだ。
「レダくん、少しいですか?」
「もちろんです」
ウィルソンが手招きし、レダは一緒に部屋から出て廊下に。
「まだ話は続くでしょうが、ひとまずお疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
「いえ、私は何かしたわけではありません。最悪の場合を想定して割って入ろうとは想っていましたが、ミナちゃんのおかげで避けることができました。むしろ、良い方向に進みましたね」
本当にその通りだ、とレダはウィルソンに頷き同意した。
「マーゴット・ライリート男爵夫人も悪人ではありません。それは、私はもちろん、関わった誰もがわかっています。しかし、エンジーのような良くも悪くも純粋な人間には少々刺激が強すぎる――と、考えていましたが、アムルスでの日々は彼を大きく成長させましたね。わかっていたつもりですが、実際にこの目で見て本当の意味で理解できました」
以前のエンジーであれば、マーゴットをまっすぐ見ることもできなかっただおろう。
レダ以上に、エンジーのことを知っているウィルソンだからこその言葉だった。
「着地点はどこになるんでしょうか? エンジーのお母上は応援してくれるとおっしゃっていましたけど、実際は……」
「そうですね。親としてと、一個人としては想うことは違うでしょう。それでも、彼女は親なのです。悪いことにならないと思います。彼女の部屋には、ディアンヌを向かわせましたので、話し相手になってくれていると思います」
「ディアンヌさんが?」
「ええ、ミナのためにも頑張ると」
「…………おかしいな。エンジーのためじゃないんですね、ちょっとわからないなぁ」




