116「ミナの想い」①
今まで、レダとエンジー、マーゴットの話をハラハラしながら聞いていたミナが口を開き割って入ってきたことで、一同は驚き、言葉を止めた。
この場にいる人間には平等に発言する権利があるが、余計なことを言わずに見守っているべきであるとウィルソンをはじめ、ルナ、ミナは決めていた。
その上で、話が拗れそうになればルナとウィルソンのどちらかが割ってはいるとも、事前の相談でしていた。
ミナは、あくまでもエンジーのことを気にかけていたからこそ、同席している面が強い。そのミナが、何を言うのだろうか、と誰もが言葉の続きを待ってしまった。
「あのね、エンジー。お金ってとっても大事だよ。でも、エンジーの言いたいこともわかるし、間違っていないと思うの。でも、違うかな?」
「……ミナ先輩? 違うって、何がどうして」
「うんとね、私もうまく言えないんだけど、お金ってないと困るの。わたしね、お父さんに会う前に――怖い大人の人に捕まっていたの」
「――っ」
「でもね、逃げることができたんだけど、とってもお腹が空いて、街でごはんを食べたかったけど、誰も助けてくれなかった。少しでもお金があったら、食べられるのにってずっと思っていて、かなしくて、涙が出て、がまんできなくて街の外に出たの」
ミナが語ったことは、レダとルナ以外知らないことだ。
レダでさえ、最初は知らなかった。
あとで聞かされて、涙が出てきたことを今でも鮮明に覚えている。
「おとうさんが私を助けてくれたけど、みんながおとうさんみたいにやさしいわけじゃないよ? おとうさんだけが、わたしのことを助けてくれ、家族にしてくれたの。だから、わたしはお父さんが大好き。いつか、立派な治癒士になっておとうさんをもっともっと今以上に幸せにするって決めているの。だから、わたしはお金がたくさんほしい」
レダは絶句した。
ミナがそこまで考えてくれているとは思っていなかったのだ。
嬉しくもあり、そこまで頑張らなくていいと思ってしまうが、口にはしなかった。
今、ここで言ってはいけないと理解していた。
「お姉ちゃんのこともそう。わたしのせいで、つらいこといっぱいあったんだよ。だから、おねえちゃんにもとってもとっても幸せになってほしい。わたしが立派になって、恩返しをたくさんしたい」
「ミナ……あなた」
ルナもレダと同じだった。
暗殺者として才能があったのはそうだが、彼女が仕事を行なっていたのはミナが人質だったからだ。
ミナは幼くともちゃんとそのことを理解し、罪悪感を抱いているのだ。
その上で、卑屈になるのではなく、前向きになって恩返しをしようと考えている。
まだ子供だと思っていたが、心は立派な大人だった。
「エンジーのおかあさん」
「……なにかしら」
「わたしね、エンジーのおかあさんの言いたいことわかるよ。エンジーが心配なんだよね? ちゃんとごはんをお腹いっぱいに食べられているのか、よく眠れているのか、笑っているのか、近くで見ることができないって辛いもんね」
「――っ、そう、ね。いつもいつも心配しているわ」
だよね、とミナは微笑んだ。




