115「マーゴットとの話し合い」④
はっきり支援を断ったレダに、マーゴットは何か言うことはなかった。
「ディクソン様のお気持ちはわかりました。余計なことをしてしまったようで、お恥ずかしい限りです」
「いいえ、お心遣いに感謝します」
「――では、エンジーを王都に戻していただくことはできますか?」
「それは」
代わりとばかりに、マーゴットはエンジーの身柄を求めてきた。
関係が悪くとも彼女はエンジーの母親だ。気持ちはわかる。
「私にも情報は入ってきます。エンジーはディクソン殿と皆様のおかげで、立派になったと」
「――はい。彼は一人前です。尊敬すべき、治癒師です」
まだ学ぶことは多いだろう、それでも、災厄の獣に立ち向かえる彼を、街の人から愛される彼を半人前などと口が裂けても言えなかった。
「息子を育ててくださりどうもありがとうございました。エンジー、私はあなたのために王都に診療所を開く準備をしているわ。最近のことではないわ。あなたが治癒士の才能を開花させたその時から準備をしてきたの」
「……お母様、それは、あまりにも勝手です。僕はまだレダ先生のもとで学びたいんです」
「そうでしょうね。話を聞く限り、心地よい場所なのでしょう」
「なら!」
「では、一生ディクソン殿の元にいるのですか?」
「それは……許されるのであれば、そうしたいと思っています」
「……エンジー、私はそこが理解できないの」
マーゴットは困った顔をする。
呆れているのではない。
本当に、エンジーの言葉の意味が理解できていないようだ。
「才能があり、良き師と友に恵まれ、一人前になった。ならば、次に進むべきでしょう? 私が、親が、支援できる環境にあり、あなたが返事をすれば王都に診療所をすぐに作れるの。あなたの言う多くの人を救うことができるのに、なぜ?」
「僕は、子供でした。心も何もかもが未熟で、迷惑をかけました。ですが! アムルスの人たちはそんな僕を笑顔で迎えてくれた。失敗しても、勇気づけてくれた。レダ先生も、ミナ先輩も、ルナさんたちも、ルルウッドたちも僕を気にかけてくれたんです。まだ恩返しができていない。何も、返せていない!」
「――ならば、あなたが立派になることこそ恩返しではないの? 治癒士として多くを人を救い、金を稼ぎ、アムルスに寄付をするでもいい、勉強する機会に恵まれない子を支援してもいい」
「だから、お金は――」
「エンジー……お金は、大事だよ?」
「ミナ先輩?」




