112「マーゴットとの話し合い」①
――午後。
昼食を軽く取ったレダたちは、教会の応接室を借りてマーゴット・ライリートと向かい合っていた。
人数は、できるだけ絞った。
まず、エンジーとマーゴット、話が感情的になりすぎないようにウィルソンが間に入ってくれることになった。
そして、レダ、ルナ、そして絶対に話し合いに参加すると譲らなかったミナ。
エンジーのサポート役としてルルウッドを含めて、七名だ。
「――改めて、先ほどは危ういところを助けてくださりどうもありがとうございました」
マーゴットの感謝の言葉から、話し合いは始まった。
「……エンジーのママが無事でよかったわぁ。どこか痛かったりしていないかしらぁ?」
マーゴットを救ったルナが言葉を返す。
単純に心配をしているのだ。
「少々、身体を擦りむいてはいましたが、治療していただきましたので問題ありません」
「ならよかったわぁ」
ルナはニコニコとしている。
ただ、少し、マーゴットの様子を伺っているようにもレダの目からも見えた。
こほん、とウィルソンが軽く咳払いをして話に割って入った。
「私からも、ライリート男爵夫人がご無事で何よりでした。お話を聞いた時には、肝が冷えたものです」
「……ウィルソン様、ご心配いただきどうもありがとうございました。教会の騎士に自宅までお送りしていただけたことも、感謝します」
「いいえ、騎士たちも当たり前のことをしただけですのでお気になさらずに。さて、今日はエンジーと話があるということでしたが、その話に移りましょうか。彼らも何かと忙しい身ですので、腹の探り合いはなしにしましょう」
「……はい」
ウィルソンは優しげな顔をそのままで、マーゴットに釘を刺す。
男爵夫人であると同時に、金貸しであり、商人でもある彼女がその気になれば、レダたちは口でいいように言い負かされる可能性もある。
その牽制だ。
「……エンジー、久しぶりね。大人になったあなたに大きくなったなんて言っていいのかわからないけれど、大きくなったわね。以前よりも自信があるように見えるわ」
「……お久しぶり、です。お母様」
言葉が少ないエンジー。
何をどう喋ればいいのかわからないのだろう。
それでも、下を向くことはなく、母をまっすぐ見ている。
「レダ・ディクソン殿、そしてご家族様、息子がお世話になっています」
「いえ、エンジーはいい子です。私たちの方が助けられています」
少々緊張しながら、レダはマーゴットに返す。
嘘ではない。
エンジーは少々頼りなかったが、今は違う。
治癒士としても育ち、災厄の獣と戦える気力も度胸もある。
十分すぎるほど、立派になった。
彼は家族であり、恩人だ。
「そう言っていただけると、母親として嬉しく思います。ルルウッド様にもずっと寄り添っていただけたので、感謝が尽きません」
「……私とエンジーは兄弟と言っても過言ではない関係ですので、お気遣いなく」
マーゴットの感謝に対し、ルルウッドの声は硬い。
彼は、エンジーと共に過ごし成長しているため、マーゴットに関して思うこともあるのだろう。ただ、この場で言っても仕方がないとわかっているので、最低限しか言葉にしない。
「ご無礼を承知で言わせていただきますと、息子が弟子入りした時にレダ・ディクソン殿の情報を調べました。最悪、アムルスからエンジーを連れて帰ることも考えていました」
マーゴットの告白に、レダは特に気にしなかった。
身元を調べられることくらい予想していた。
「ただし、私もことを荒げたくありませんし、息子に嫌われたくもない。ですので、支援させていただきたいと思っています」




