108「ライリート親子」①
「間に合いましたぁああああああああああああ!」
レイチェルがルナたちに追いつき、ガッツポーズをした。
「間に合ってないからぁ」
「とっくに終わっているぞ」
「ちょ、私の見せ場は? レダ様への好感度を高めるために、頑張ろうと思ったのに!」
「甘いわねぇ、パパは大きなことをしてもどっかーんって好感度上がるわけじゃないのよき。こつこつすることがだーいーじー!」
「うむ。そういうことだ」
「く、悔しい! このレダ様にお似合いの幼妻たちめ!」
「褒めてるじゃない。この子、面白いわねぇ」
「はっはっは、残念だが私は幼くはないぞ!」
悪漢たちを武力で圧倒したルナたちは余裕だ。
そんなルナたちの姿を見て、女性は少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「あらぁ、もう大丈夫ぅ? お話聞いてもいいかしらぁ?」
「――はい。助けてくださってどうもありがとうございました」
「いいのよぉ。困った時はお互い様ですものぉ。それで、こいつらってどこの誰? どうして襲われていたわけ? おばさんの身なりを見れば貴族様ってわかるんだけどぉ、こんな路地裏でぇ、いろいろ気になっちゃうんですけどぉ。話せるところまででいいからぁ、何か教えてくれるぅ?」
「ルナ、そんなに質問ばかりしても駄目だぞ。相手が貴族なら尚更だ。面倒ごとになるから貴族には関わらないようにとウィルソンおじさんが言っていただろう!」
「あ、そうだったぁ!」
甘ったるい声で質問を続けるルナをヒルデが嗜める。
ルナも無理やり聞き出そうと思ったわけではない。
暴漢に襲われて恐ろしかったのであれば、話をして気を紛らわしてもいいかと思ったのだ。ただ、初対面の人間と話す内容が特になかったので、状況を聞いただけのことだ。
「――あ」
全力で走ってきたせいで息を切らせていたレイチェルが、変な声をだした。
「――あなたは」
女性もレイチェルを見て、何かに気付いたようだ。
「マーゴット・ライリート様」
「……レイチェル・アンバー様」
ふたりは、お互いの顔と名前を知っていたようだ。
ならば、話は早い。
何があったのか知らないが、女性を家に送り届ければいいだけ。
「何よぉ、ふたりとも知り合いだったのぉ。でもいいわぁ、いろいろ手間が省けるからぁ。――あれ? ライリートってどこかで聞いたことあるんですけどぉ、なんだっけ?」
「ふむ……私も聞いたことがあるが……駄目だ、思い出せない。まあ、思い出せないのなら大したことではないのだろう。はっはっは!」
「ライリート」をどこかで聞いたことがあったが、まるで思い出せないふたり。
ヒルデに至っては、全く気にした様子もなく笑い飛ばしてしまう。
「あの、私は――」
「あのですね、こちらの方は――」
女性――マーゴット・ライリーとレイチェルが、何かを言いかけた時、
「ちょっと、ルナ、ヒルデ! ようやく追いついた……って、全部終わっているし!」
「はぁはぁ、体力ないから、倒れそう、です」
「だらしないな、エンジーと言いたいが、私も久しぶりに全力で走ったから辛い」
レダとエンジー、ルルウッドが遅れてやってきた。
彼らの背後には教会の護衛らしき人間もいる。
「――エンジー!」
「え? なんですか? ――あ」
名を呼ばれて、顔を上げたエンジーが硬直した。
「……お母、様?」
エンジーがマーゴットを母だと呼んだことに、レダたちは目を丸くした。




