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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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107「ルナとヒルデ無双」




 レイチェルは魔力で脚力を強化して裏路地を走った。

 声はまだ遠い。

 男の不快な声が壁にぶつかって反響していた。

 よほど大きな声を出しているのだろう、何を話しているのかまではわからないが、恫喝に近い声音であることはわかる。


「おっ先にー!」

「は? え?」


 声の主はルナだった。

 器用に壁を走りながら手を振っている。


「な、な、な」


 魔力を使っていない、純粋な脚力で軽やかに壁を走っていくルナの姿に足を止めずにレイチェルは口をぱくぱくさせた。


「すまん、先に行くぞ」

「ちょっ」


 ルナと反対側の壁をヒルデが走る姿に、レイチェルは愕然とした。

 そして、気づく。


「二人とも、サンダル……」


 魔力を使わず、サンダルで壁を走る少女ふたりの姿に、さすがに足を止めてしまう。


「ぐぬぬ。レダ様にいいところをみせようと思っていたのに! ――負けるものですか! 壁を走って何の役に立つの!? ならば私は地面を全力で走ります!」


 それはただ普通に走るだけなのだが、それを指摘する人間はいない。

 入り組んだ路地裏をレイチェルは魔力を全開にして走り続けた。




 ■




 ルナとヒルデは同時に襲われている女性を見つけた。

 上品なドレスを身に纏った女性だ。

 そのドレスも、暴漢たちに襲われたせいで汚れ、破れている。


「お先に!」

「後ろはまかせろ!」


 ナイフを構えたルナが先行した。

 たんっ、と軽く壁を蹴って大きく跳躍する。


「ちょっとぉ、なに昼間っから女性を襲うとか最低ぇ!」


 甘い声ながら、ルナは怒っていた。

 白昼堂々女性を裏路地で襲うとはいい度胸だ。


「これだから王都ってきらーい!」


 軽々と女性の前に立ち塞がりナイフを構える。

 男たちは空から降ってきた少女にあんぐりと顔を開けているだけで、驚き硬直していた。


「ねえ、助けちゃってもいいかしらぁ?」

「―――お、お願いします」


 女性の了解を得た瞬間、ルナの細い足がしなやかな鞭のように振るわれた。

 最初に蹴りを喰らったのは、眼前の大男だった。

 良い音を立てて膝の裏に蹴りを入れられると、痛みとバランスを崩してその場に膝をついてしまう。

 ルナにとって、ちょうどいい場所に頭が来たので二度目の蹴りを側頭部に入れた。

 白目を剥いた大男を踏み台にして、背後に立つ痩せた髭面の男の顔面に踵を落とす。

 鈍い音がして、仰向けに倒れた。

 鼻が潰れて血が出ているようだが、ルナは特に気にしない。

 気絶しているようで、静かだった。


「――てめえ!」


 ナイフを抜いた汚れた服を来ている男が迫るが、ナイフで怯えるルナではない。

 ルナはナイフで、男のナイフを器用に弾き飛ばす。

 握りが甘かったのか、握り方がなっていないのか、すっぽ抜けたナイフを見送った男の首に蹴りを入れて気絶させた。


「はぁーい、次ー」

「ふざけんな! まだこっちには仲間が……仲間、が?」


 唯一立っている男の声が弱々しくなった。

 背後にいた男たちはヒルデによってすべて気絶させられていたからだ。


「さぁて、どうするぅ? 命乞いするぅ? 勇敢に挑むぅ?」

「うわぁああああああああああああああああ!」


 ルナに選択を突きつけられた男は、背後に逃走する。

 だが、ヒルデが見逃してくれるわけがなく、顔面に拳を叩き込まれて地面に倒れ悶絶すると、容赦無く鳩尾を踏まれ失神した。


「ふむ。準備運動にもならなかったな」

「いや、こんな雑魚相手に運動もなにもないでしょぉ。ていうか、汚い男とか触りたくないからそっちの方が苦痛だったんですけどぉ」

「まったく同感だ! どういう理屈でこいつらはこんな不衛生なのだ!」


 男たちの汚さに辟易しながら、ルナとヒルデは助けた女性に向かい笑顔を向けた。






 ルナとヒルデにかかれば余裕です。

 そして間に合わなかったレイチェルさん(T . T)


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挿絵(By みてみん)

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