100「意外な集まり」
レダは覚えていなかったが、店員の男性はレダの顔をしっかりと覚えていたようで、大いに感謝されてしまった。
聞けば、男性はレダの治癒を腕に受けたおかげで、全く関係のない足の古傷もすっかり癒えたようだ。そのおかげで身体を動かして働けるようになり、その勤勉さを買われてこの店の女主人と出会い雇われたらしい。
彼が庇った妹も少し前に良い縁談があって結婚したとのこと。
「――ディクソン様には本当に感謝しています。あなたのことを探したのですが、あなたに救われた人を見つけることはあっても、ついぞあなたを見つけることができず諦めかけていたのですが、このようなご縁があるとは思いませんでした。本当に、その節はどうもありがとうございました」
「覚えていないこと、大変申し訳ありません。ですが、俺のしたことで、少しでも幸せになってくれたのであれば……これほど嬉しいことはありません」
しかし、なぜ探してもらったのに自分を見つけることができなかったのかと首を傾げた。
レダの行動範囲は決まっている。
王都は広いが、端から端まで行動する人間はいるかもしれないがあまりいないだろう。
「実を言うと、レダ様がお救いになった方の中に貴族の方もいらっしゃいまして」
「そうなんですか?」
「ええ。傷ついていたところをふらりと現れ、癒し、名乗りもせず消えていく。一部では、さすらいの治癒士と呼ばれております」
「以前もこんな感じの話を聞いた気が」
「レダ先生、貴族の方も治していたんですね」
「シュシュリーたちも貴族だから、ない、とは言い切れないのですが、さすがレダ先生ですね」
そもそも貴族でも治癒士に払わなければならない金額が高く困ることが多い。
怪我がひどければひどいほど高額だ。
例えば、貴族の令嬢が怪我をして傷を跡形もなく消したいというのであれば、できる治癒士がいるかどうかは別として、高額になる。それでも娘のために、と無理をして支払う親もいる。
それが、今までの治癒士と患者の関係だった。
現在は、アマンダが回復ギルドに改革を起こし、ギルド長になったことで支払う金額は大きく下がり、治癒士は人に寄り添おうと懸命だ。ただ、それに不満を抱くだく治癒士も多いらしい。
最低限の情報は伝わってくるが、あまりティーダ・アムルス・ローデンヴァルト辺境伯は「不愉快」な情報をレダの耳に入れたくないと思っているようだ。
それは王都に来てから、教会と王宮でも同じく感じている。
レダは、そこまで気を遣ってもらう必要はないと思っているが、ミナたちによくない話を聞かせなくていいので感謝もしていた。
「それでですね、とある貴族様が中心となり、レダ様に救われた人たちの会を立ち上げまして」
「――はい?」
「なんとその会員数三百名!」
「……いやいやいやいやいやいや」
「あ、もちろん、ディクソン様に助けていただいた方の家族を込みです」
嬉しそうにそんなことを言ってくる男性に、レダはどうしてそうなるのかわからず頬を引き攣らせた。




