98「レダ、懐かしむ」①
グラスの中で氷がからんと鳴る。
動き、人と話した後には冷たい紅茶がありがたかった。
「美味しいです、ありがとうございます」
「いえいえ、そう言っていただけますと嬉しくございます」
レダと変わらないか、少し若いくらいの男性はにこやかに微笑む。
「レダ先生は、この辺りにきたことはありますか?」
「お客としてはないかな。冒険者ギルドに行く時に通ったことはあるけどね」
「……僕も大通りは通ったことがあるくらいです」
「我が家では――大通りにある店でも呼んでいましたね」
エンジーから尋ねられてレダは答えた。
懐かしくも思うし、もう懐かしくも思えるのかと苦笑する。
エンジーもレダと同じように店の客としてくることはなかったようだ。
ルルウッドの母は、さすが伯爵夫人というべきか店が来るようだ。だが、思い返せば、貴族は基本的に店を呼ぶ。否、店が来るのだ。
数える程度だが、貴族から冒険者として仕事を受けたことがあるが、ギルドを介してだというのになぜか貴族に挨拶しに行った記憶がある。ギルド長も一緒に、だ。
(懐かしいなぁ。王都では良くも悪くもいろいろなことがあったからなぁ)
やはり王都の日々は懐かしかった。
ただ、戻りたいとは思わない。
レダにとって、今が幸せなのだから。
(そういえば……知り合いのみんなはどうしているだろうか?)
底辺冒険者のレダだが、友人がいなかったわけではない。
良くも悪くもパーティーの仲間と一緒の時間が長かっただけだ。ここ三年ほどは、伸び悩んで腐っていたせいで自宅で飲んだくれていた。
そんなレダに酒を教えてくれたベテラン冒険者がいた。
駆け出しの頃、面倒を見てくれた人もいた。
依頼の後に、安酒を一緒に飲んで依頼者の愚痴を言い合う仲間もいた。
(……アムルスに行くきっかけをくれたセイラさんは今も元気に受付をしているんだろうな)
偶然ではなったが、アムルスでの人材募集を見つけたのがきっかけだ。
アムルスへ行こうと決め、道中でミナと出会った。
あの一枚の書類がすべてのきっかけだったような気がする。
挨拶に行きたい気持ちはあるが、ウィルソンはあまり冒険者ギルドに関わってほしくないようだった。
まだ詳細を全て聞いているわけではないが、レダの知らないところで、自分に関わる「何か」が起きている。
きっとウィルソンたちも、レダが知る必要はないと気を利かせてくれているのだろう。全てが終わればこんなことがあったと簡単に説明をしてくれるかもしれない。
レダとしては、ありがたくもあり申し訳なくもある。
家族と一緒にいる以上、厄介ごとに首を突っ込むことは避けたい。同時に、自分にまつわる何かを対処してもらっているのに何も知らないことに罪悪感があるのだ。
(――冒険者ギルドか。いい思い出と悪い思い出は……半々かな)
レダは結構周りに好かれていますし、新人が怪我するとささっと回復してくれるので感謝されていました。
当時のレダは視野が狭く、またパーティーに囲われていたのでいろいろ気付けませんでした。
故郷の村で、厳しくも大事に育てられていたので、冒険者のあれこれに関しては少し甘かったのです。
レダに救われた人、友人たちはいずれ出てきます。つまりギルドと関わってしまうということです。
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