97「まずはお買い物」②
「たのもう!」
ルナの元気な声で洋服店に入ると、女主人が驚いた顔をしていたが、可愛らしい少女たちが入ってきたことを確認すると、頬を緩めた。
「いらっしゃいませ。まあまあ可愛らしい子たちね。今日は、お洋服を表目かしら?」
ドレスを身に纏った四十ほどの女主人は、ミナたちに優しく微笑んでくれた。
身なりと立ち振る舞いは優美であり、それなりの立場があることがわかる。
女主人はレダにも微笑んで声をかける。
「お父様かしら? 娘さんたちにお洋服を何着か購入でよろしいかしら?」
「はい。俺は服に詳しくないので似合うものを数着お願いしてもいいですか」
「ええ、ええ、もちろんですわ。お任せくださいね」
「ありがとうございます」
「可愛らしい娘さんたちに洋服を着てもらうことが好きでお店をやっているので、嬉しいわ」
レダは安堵した。
王都の大通りの店には、紹介がなければ入れない店もある。
その場合に備えてウィルソンから紹介状をもらっている。最悪、護衛としてついてくれている聖騎士に身分の証明をしてもらってもいいという。
ありがたいが、権力を使っているみたいで苦手だ。
最初に入った店が友好的に接してくれるのは嬉しい。
「申し遅れました、わたくし、この店「洋服の妖精」の店主フランセス・ソアレと申します」
「レダ・ディクソンと申します」
「娘のミナ・ディクソンです」
「妻のルナ・ディクソンですぅ」
「妻のヒルデガルダ・ディクソンだ」
レダたちに続き、エンジーたちも名乗り挨拶をする。
レイチェルが自分のことを妻と言おうとしたが、妹のシュシュリーに口を塞がれてしまい、もがもが言っているのは気にしないようにしよう。
「……ごめんなさい、妻? えっと、聞き間違えたからしら。こちらのチョコレートのような綺麗な肌をしたお嬢さんと、こちらの凛々しいお顔をしたお耳が素敵なお嬢さんが妻?」
「ええ、まあ、妻です」
「…………すう」
女主人フランセスは大きく息を吸うととても素敵な笑顔を作った。
「当店は決して幼女趣味のお客様でも差別など一切しませんわ」
「久しぶり言われたけど、そういう趣味じゃありません!」
「あたしは成人しているんですけどぉ!」
「私も大人だ!」
若干幼く見えるルナとヒルデを見て、そう言われるのは久しぶりだが、困る。
アムルスではルナたちのことを知っているので、いまさら趣味がどうこうとは言われないが、もしかしたら王都では会う人会う人に趣味を疑われるのではないかとレダは震えた。
「あらあら、わたくしったら。失礼いたしました。お詫びに、小物をひとつずつプレゼントさせていただきますわ。ささ、お嬢さんたちはこちらに、素敵なお洋服を選んでお父様、旦那さま、ご友人をびっくりあせてあげましょう」
フランセスはにこにこしながらシュシュリーとレイチェルも店の奥へと連れて行ってしまう。
レダは、ここにも服があるのになぜ、と首を傾げた。
「店の奥には店主がここぞという時に出すとっておきがある場合が多いのです」
ルルウッドが耳打ちしてくれて、なるほど、と納得した。
昔、堅物の武器屋の店主が認めた冒険者には良い品を売ってくれるのと同じだと理解した。
フランセスがミナたちと一緒に店の奥に入ると、入れ替わりでやはり身なりが整った男性がワゴンを押してにこやかな顔をして現れる。
「ただいま主人がお嬢様たちとお服を選んでいますので、その間にお座りになってお茶でもお飲みください。きっとお時間がかかりますので、ぜひに」
店員であろう男性にそう言ってもらい、レダたちはありがたくお茶を頂戴することにした。




