96「まずはお買い物」①
レダたちディクソン一家と、エンジーたちと二台の馬車に分かれ、王都の大通りに到着した。
「……うわ、久しぶりだな。って言っても、まだ一年も経っていないんだけど、まるで五年以上経っている感覚がするよ」
一年ほどでは大通りに大きな変化はなかった。
とはいえ、以前あった店がなくなっていて、なかった店があるようだとぼんやり思う。
冒険者ギルドへの行き来や、依頼を受けて王都の外に出る時に、この大通りを使うことがあったが、並ぶ店に入ったことはない。
大通りにある店は、貴族や、それなりに金を持っている人向けの店ばかりなのだ。
「お父さん、早く早く!」
「パパったら、早く!」
「ごめんごめん、今降りるよ」
レダが懐かしんでいる間に、家族たちは馬車を降りていた。
呼ばれたレダが慌てて降りる。
馬車で待ってくれるという御者に礼を言って、家族たちのもとへ駆け寄った。
「お待たせ」
エンジーたちも、合流した。
レダは、みんなの顔を見渡してから尋ねた。
「えっと、どこのお店に行くのか決まっていたりするの?」
女性陣が満面の笑みを浮かべて声をそろえた。
「――全部!」
そうきたか、とレダは笑うしかなかった。
「とりあえず洋服を買いたいわぁ! アムルスでは買えない流行りの洋服よぉ!」
鼻息荒くそう言うのはルナだった。
普段は軽装を好むルナは、あくまでも戦いの必要があるかもしれないからだ。仕事が終われば、おしゃれな格好をしている。
ルナも年頃の少女だ。ずっと過酷な時間を過ごしていたので、今はいろいろなことに興味津々のようだ。
最近はミナも一緒に、興味を共にしている。
王都から仕入れている、衣類のカタログに女性陣がみんなで一緒に見ては感想を言い合っていることは珍しくない。
そうなるとレダ一人だと肩身が狭いが、最近はエンジーが家にいることも多いので助かっていたりする。
「くふふふぅ、ウィルソンおじさんからお小遣いをたくさんもらったから買いたい放題よぉ!」
「……いつの間に」
「いいじゃない! ミナのママのお父さんなんだから、おじいちゃんからのお小遣いよぉ!」
ミナの母である聖女ディアンヌを我が子のように思っている教皇ウィルソンなので、ルナの言いたいことはわからなくもないが、少々強引な気がした。
「さすがにそれは」
「えー、でもウィルソンおじさんに、おじいちゃんってミナとヒルデと一緒に言ったら、満面の笑みでお金くれたよ?」
「……そういうことは駄目ぇ!」
ケラケラ笑うルナに、レダは頭痛を覚えた。
「ウィルソンさんのお小遣いはさておくとしてね、洋服は俺からプレゼントさせてくれないかな」
「――え?」
「普段、みんなのおかげでたくさん幸せにしてもらっているんだから、プレゼントさせてほしいな」
少し頬を染めたレダに、ルナ、ミナ、ヒルデが抱きついた。
「パパ大好きぃ!」
「お父さん大好き!」
「うむ、よき伴侶だ!」




