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03

「これは忌々(ゆゆ)しき問題です。バリー・レイズは平民にとって英雄かもしれませんが、我々にとっては文字通りキング・スレイヤー。リーバー王太子殿下なぞはあの様に笑顔を振り撒いていましておられましても、内心は王太后陛下にご疑念をお持ちです。あのような者を今まで公になさらずにいた。リーバー王太子殿下にさえ、話してなかったのです。なにより、バリー・レイズが王太后陛下のご実家パターソン家の私兵というのが恐ろしい。王太后陛下の一言で我々は寝首をかれてもおかしくはなかったのです」


 そりゃぁ、考えたらぞっとするだろうな。魔法が使えるから平民に殺されないとお前らは二千年もの長い間、高を括っていた。


「殿下は兄上と絶えず一緒におられます。これからも離れることはないように。バリー・レイズといえども流石に王族二人は持て余しましょう。チアナとイスランは、連合はしたけれど連携はとれてなかったようですな。おのおの個別に討たれたと聞き及びまする。わたくしめもこれからはリーバー王太子殿下と行動を共にする所存」


「一人より二人に越したことはない。そうすることとしよう」 忠告ありがとう。「で、俺が聞きたいことなんだが」


「はい。バリー・レイズはあの歳ですからまだ下級兵士なのかもしれません。上がまだ何人もいると考えられます。王太后陛下は、我が国からのエトイナ山行きメンバーにお身内のみを選出なされました。王太后陛下の魔法使いが宮廷をうろうろするって状況なって、そのうえ、もし、ご実家の私兵が竜王の門に入ったらどうなるか」


 今の状況が自分たちにとっていかに危険かをリーマンはずっと話している。俺を煽ってるつもりのようだが、俺が聞きたいことはそういうことではない。


「どうか、お力添えを」


 リーマンは深々と頭を下げた。話を閉めたのか? こんな話で俺が満足したと思ったのか。俺はキース・バージヴァルではない。バージヴァル家がどうなろうと知ったこっちゃない。


「バリー・レイズのことをまだ聞いていないが」


 リーマンは怪訝な顔をした。変なことを言ったか? 初めにバリー・レイズについて知りたいと言ったはずだが。


「わたくしの調べでは、バリー・レイズはパターソン家が営む孤児院の出です」


「孤児院」 


 なるほど、バリー・レイズ自体は取るに足らない人間というわけか。だが、確かにリーマンの言う通りかもしれない。バリー・レイズのような者がまだ何人もいる。己の才のみで一から技を磨き、あの歳で境地に達するというのは考えにくい。師がいるはずだし、仲間もいそうだ。


 孤児院っていうのがな、うさん臭すぎる。


「パターソン家について教えてくれ」


 リーマンはため息をついた。


「王太后陛下のご実家ですぞ。殿下はそういうところがあります。いいですか、パターソン家は臣民に下りましたが、今から三十二代前のパトリック王から別れた由緒ある家柄です。東部の海に面したザカリー州デレクに広大な土地を代々所有しておりまして、なかなか勤勉な一族です。古書などを何代にも渡って収集しておられるとか。王太后陛下もお血筋でございましょうなぁ。王都では聡明でとおり、それが縁でカールとお近づきになり、アーロン王と結ばれたのです」


 俺の聞きたいのはヴァルファニル鋼についてだ。ザザムやガリオンのドラゴンと対峙した時に必要となる。


「古書の収集とは? 何か特定のものを代々研究しているとか」


 俺はあえてヴァルファニル鋼という言葉を使わない。リーマンがそれを知らなければ、今はあえて教えることもあるまい。


「そうだな。例えば古代兵器とか」


「古代兵器ですか」 露骨に嫌な顔を見せた。「それはないでしょうな。あれはカールの趣味です。もしそうであるなら、アーロン王はカール捜索にデレクへ軍を向かわせたはずです」


 そんな顔するか。俺はただ、話が伝わるように古代兵器と例えただけだ。こいつ、古代兵器について訊かれて困ることでもあるっていうのか。


 ああ、古代兵器じゃなくてな、カールね。そうか、嫌な顔を見せたのはカールか。エリノアとカールは恋仲だった。カールが逃げた時、エリノアが真っ先に疑われてもおかしくなかった。


 向かわせたはず? アーロン王が? リーマンはアーロン王が王になる前からの参謀だった。アーロン王はおまえの言葉しか聞かないとリーマンがその口で言っていたじゃないか。


 リーマンはあの時しくじったと今更ながら後悔しているんだ。カール逃亡時、イーデンの妻子も真っ先に姿を消した。それにつられて動いてしまった。議会がカールからエリノアに鞍替えたのも知らずに。


 エリノアは自分に疑いの目を向けさせないように、議会の人間を使ってイーデン妻子に逃げるようそそのかした。


 もしカールがデレクに居ようとも、もう手出しは出来ない。カールはいつか戻って来る。リーマンがさっき言った、どうかお力添えを、とはその時は手を結ぼうってこと。カールに国を乗っ取られるかもしれないと怯えているんだ。


 陰険なカールのことだ。もちろん、その時は皆殺し。自分たちが亡き者となる。


「古代兵器というならハロルド・アバークロンビーですな、殿下が御そばに置いているあやつです。殿下の方がわたしよりお詳しいと思いますが」


 言葉にトゲがあるな。図星か。カールとパターソン家とのつながりに触れてもらいたくはないんだ。やはりリーマンはバリー・レイズにカールの陰を感じている。


 これは世迷い事ではない。俺以外誰も知らなかった。カールは古代兵器でローラムの竜王と戦おうとしていた。その目的からして、ヴァルファニル鋼の存在も知っていた可能性は大いにあり得る。


 パターソン家がヴァルファニル鋼を手に入れられた。もしそうだとしたら俺たちだって出来るのが道理。糸口がほしい。何の古書を集めていた。


「魔具の類とかはどうだろうか、リーマン殿」


「シーカーですか。パターソン家は元王族だと言っても大昔。その知識は失われているでしょう。過去から現在に至るまで、シーカーや魔具についての書物はなかったはずです。シーカーは王族以外、その存在は明るみにされていませんから。その情報を集めるとするのならば、やはり同じ元王家の家柄ですかな。口伝はされているかと思いますが、詳しく伝えられているかは名言できませぬ。我々はシーカーをゲテモノ扱いしていますから、あえて魔具について言葉を残すとは考えづらい。シーカーというなら、そちらも殿下のテリトリーなのでは?」


 リーマンの言う通り、確かにそれも俺になるか。ヴァルファニル鋼の存在を俺は長城の西で知った。が、もしカールが後ろで糸を引いていたとして、どこでどうやってやつはその存在を知った。タイガーを小馬鹿にするカールのことだ、シーカーからはあり得ない。やはりパターソン家か。


「殿下が何を知りたいのかよく分かりませんが、パターソン家に知識があるとすれば専ら魔法に関してでしょうな。常識的な答えで申し訳ありませんが、パターソン家だけでなく王家から別れたどの家もそうです。魔法を使えなくともどの家も魔法には詳しい。魔法は伝承されているはずです。王家だったあかしとして魔法書をお持ちですから」


 一般論か。俺はバリー・レイズが身に着けていたのがヴァルファニル鋼かどうかを知りたい。そして、それがどこで手に入れられるのか。それこそリーマンの言うとおりダメもとでハロルドに聞いてみるか。ハロルドは一時、カールと行動を共にしていた。


「ですが、皆さんは残念ながら魔法書を失うことになりますな。魔法の一括管理のために王太后陛下が全て召し上げているとか。わたくしめはすでに返却済みです」


 俺にも返せって言って来るよな、やっぱり。って、これじゃぁ単なる世間話だ。リーマンからはヴァルファニルのヴぁの字すら出てこない。出て来るのは保身と一般論だけ。


「魔法書か。魔法を研究すれば魔法に勝る方法を見つけられると思うか。どう思う、リーマン殿」


「魔法を研究いたしましょうが、魔法を破るには魔法しか御座いませんでしょうな」 


 やはりな。魔法博士のフィル・ロギンズもそう言っていた。完全に袋小路に陥った。


「殿下、一ついいですか。どうも殿下のご質問を聞いていると殿下は誤解なされているようにお見受け致します。バリー・レイズは殿下のように魔法攻撃に打ち勝ったのでは御座いませんよ。剣で魔法陣を切ったのです」







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