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02

 身長は三メートル。黒光りする甲冑を着込んだような姿で、バスケットボールより一回りも二回りも大きい拳を振り上げている。


 肩回りが異様にデカい。胸板も厚く、前腕に鎌のような爪が伸びている。背に砂塵の尾を引いて、低空で俺に向かって来ていた。


 十歩ほどの距離である。おそらくは俺の前二歩程のところで着地し、岩のような拳を俺に放つ。


 だが、不思議だ。魔法はもう見慣れていて、何があっても動じないと思ってた。だが、やっぱり考えてしまう。実際こりゃぁどういう仕組みなんだ。


 こういうもんだと言えばそれまでなんだが、あまりにも常識外れじゃないか。相対性理論も量子力学もあったもんじゃぁねえ。凍れる世界をこうやって眺めるとつくづくそう思う。


 月光を背にしているセプトン。赤く光る目は燃えるようだった。


 戸惑いを引っ込めて俺は五歩、前に進んだ。移動した場所はセプトンが着地するポイントのちょっと前。そして、強化外骨格の前腕部に仕込まれているカイザーナックルを起動させた。


 カイザーナックルは通常、甲プロテクターの外枠になっている。使用時は手首側にある軸を中心に百八十度回転して拳をガードする。鋭い金属音を立て、カイザーナックルが現れた。


 材質はグンニクル鋼で、俺の世界ではパワードスーツやロボット兵器、宇宙船などの素材に使われている。幅は五百ミリ。拳の前で逆Vの形状をしており、力加減によるが、突けば貫通も見込める。また、そこそこ幅もあるんで金づちのように拳を振り下ろすことで相手にダメージも加えられる。


 カウンターを狙う。足を広げ、捻って足裏を土に埋める。場を固めたら、腰を下ろす。衝撃に備えないといけない。相手は弾丸、いや、二十世紀にあったという砲弾のようなものだ。


 タイミングも合わせないといけない。凍れる世界の効果が切れると同時に、飛んでくるセプトンのどてっぱらに拳を叩きこむ。


 十秒という時間は訓練して体にしみ込ませてある。…。8。9。


「時間は動き出す」 


 鈍い爆発音。そして、血しぶき。俺はまるでダンプカーを押し返しているようだった。パワーで俺の体が後方に持っていかれる。踏ん張る両足が地面を削っていく。


 視界はセプトンの腹しかない。よく分からないが、血まみれであろう俺の体。


 地面を削りながら後退し、やっとセプトンの動きが止まった。俺の右腕はセプトンの腹を貫通していた。カイザーナックルはセプトンの背までに達している。


 まさか、とは思ったがここまでとは。カイザーナックルの威力を上げたのは強化外骨格の力ではなく、ほぼほぼセプトンの脚力だ。


 セプトンが倒れ掛かって来たのでつぶされないよう右腕を腹から抜いて半身にかわす。セプトン自身、何が起こったか分かっていないだろう。


 俺はセプトンの肉やら血やら体液をもろに浴びてしまっていた。べっちょべちょだ。ワンパンかました時の爆発音のような音は文字通り血肉がはじけ飛んだ打撃音。セプトンは力なく砂塵を上げて倒れ込んだ。


 俺は跳躍した。降り立った先はカンバーバッチの前。そして、胸倉を掴んで血まみれのカイザーナックルをカンバーバッチの頬にねじ付けた。


「回復魔法だっ! 早くしろっ! まずアトゥラトゥルだっ! お前らの大事なドラゴンも死ぬぞ!」


 カンバーバッチは訳が分かっていない。セプトンの血と肉を浴びた俺がなぜか自分を脅している。そして、セプトンはというと俺に瞬殺。身動きすらしない。


 取り巻き連中も驚きを隠せない。アワアワしている。俺はカンバーバッチを、強い力で一回揺さぶった。


「俺はドラゴンニュートを倒すと言ったろうが! それとも何か、他のドラゴンでもためすか!」


 はったりだ。俺は血肉のシャワーを浴びたようなものだ。もうこんなことは、金輪際お断りだ。


 ショックを受けていたカンバーバッチはやっと我に返ったようだ。頬にある俺のカイザーナックルを握った。手が震えている。


「回復魔法だっ!」 間髪入れず追い打ちをかける。「クソガキ、こいつらに早く命じろっ! まずアトゥラトゥルだっ!」


 カンバーバッチの震える手がカイザーナックルを強く握った。目に怒りの色が見て取れる。が、それももたなかった。俺から視線を外し、仲間に言った。


「わかった」 青ざめた表情で、言葉はたどたどしくかった。「サイモン、回復魔法だ」


 仲間の一人がコクっとうなずいた。ところがだ。サイモンというガキはカンバーバッチと目線も合わせない。それどころかその視線は遥か上。


 普通、目を合わせないにしろ、意気消沈しているのだから目線は下に向くはずだろ。ところが、上。


 俺はサイモンとかいうガキの視線を追った。そこにセプトンの姿があった。どてっぱらに大きな穴を空け、両の手を頭の上で握り、夜空の真っただ中を落ちて来ていた。


 やつぁ、釘のように俺を地面に打ち込むつもりだ!


 とっさに振り向き、俺はブラスターを取ろうとした。カンバーバッチが俺のカイザーナックルを強く握っていた。やつにしてみれば、俺の攻撃を遅らせようという魂胆だったのかもしれない。


 逆効果だった。おかげで俺は、右手がまだカイザーナックルでふさがれているのを知った。左手でブラスターを抜き、星空のセプトンにエネルギー弾を三発放った。


 頭に二つ命中。着地の態勢を崩させるための、おまけの一発もきちんと右足に当てられた。


 何とか対応できたが、本来なら凍れる世界を発動させるべきだった。俺は長年の癖でそれをまったく忘れていた。


 思惑通り、セプトンは頭を撃ち抜かれて宙でのバランスを失った。のけ反った形で落ちて来て、しかも、足先を失ったために着地にも失敗した。俺とは明後日の方向に両こぶしが落とされる。


 俺はカンバーバッチの手を振り切り、距離を取るべく飛びのいた。


「魔法のドラゴンを倒すのはそう簡単にはいかねぇ」 カンバーバッチは勝ち誇っている。「特にドラゴンニュートはなぁ」


 確かに、セプトンの頭半分はブラスターのエネルギー弾で吹き飛んでいた。右足先も失っている。


 もちろん、どてっぱらにはいまだ風穴が空いていた。それでも十分動けるのがドラゴンというのならアトゥラトゥルとて同じ。数千メートルの高さから落ちたとしても、そうそう死にはしまい。


 それはいいとしてだ。どうしたらセプトンのやつを倒せる。


 セプトンは魔法を発動した。回復魔法だ。瞬時に腹も、頭も、足も、元ある姿に戻ってしまった。








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