01
フィル・ロギンズによると、一瞬にして都市を砂漠に変える魔法がある。俺に核や反物質兵器を連想させた。
そんな強力な魔法は誰しも手に入れたいだろう。が、そうもいくまい。自分を中心に巨大なドームが出来たかと思うとその中が真空状態になり、地獄の火焔で満たされる。自分を中心に、ってとこがミソだ。
ちょっと聞けばリーマンが持つ自爆魔法の上位互換を思わせるのだが、ことはそう簡単には行かない。地獄の火焔はドラゴン語がやたらに長い。
リーマンの場合も長いのだろうが、生命力に比例して爆発の大きさも異なるという条件付きだ。だから、ドラゴン語の長さは地獄の火焔より断然短い。三分の一にも満たない。それでも長い。
とはいえ、自爆魔法は事前に魔法を施せるから実用的だ。地獄の火焔はドラゴン語が長いわ、リスクがデカいわで使いもんにならない。
ドラゴン語が長いと言えば時空間魔法だろう。時間や空間を操るのだから神のごとくである。
例えば、亜空間を作り、そこで生活する。これも気の遠くなるようなドラゴン語が必要だ。生物が入れないアイテムボックスならその下位互換。ドラゴン語の長さで言うなら、亜空間で生活できる魔法より四分の一の以下で済む。
同空間で行われる結界なぞは更に難易度が下がる。亜空間の構築と出入り口を必要としないからだ。もっというとカールが使ったジャンプ。時空間魔法にしてみればドラゴン語が非常に短い。戦闘中に十分使える短さだ。
理由がある。これも条件があるということだ。一度行ったところ、会った人のところ、触った物のところではないと魔法が発動しない。
ドラゴン語が短い。だが、絶大な効果を見込める魔法は条件があるとみていい。いや、そうとも言い切れない。地獄の火焔なぞは自身をも灰にしてしまう。
見方によれば、詠唱が延々と長い地獄の火焔も魔法の威力からしてみれば、短い方なのかもしれない。本来ならもっと長くドラゴン語を唱えないといけないが、リスクがある分、短くなっている。それだけの威力が地獄の火焔にはある、ということか。
いずれにしても戦闘中に施される魔法には向かない。そこにいくと時空間魔法はまだ使い出がある。事前に、トラップのように仕掛けられるからだ。
戦争において、自分の有利な地形に相手を誘い込むということは有史以来、言われ続けてきたことだ。戦いに時空間魔法を使うならそうする以外ない。
と、言うのがフィル・ロギンズの見解だ。そのうえで、俺は自分の魔法に時空間魔法を選んだ。自分自身には魔法を掛けられないということを踏まえて、偶発的に起こった戦いにおいてもこの魔法は十分に威力を発揮してくれると期待している。
セプトンの姿が消えていた。何かが爆発したように砂塵が舞っていた。セプトンの蹴った足の威力で砂が巻き上げられたのだ。
『ラウム・スム』(凍れる世界)
俺を中心に紫の魔方陣が現れたかと思うと波紋が広がるように、しかも、光が放たれたごとくに、物凄いスピードで魔法陣は地を走り、目に入るすべての光景を覆ってしまった。
セプトンが拳を上げた状態で宙に浮いて止まっている。俺に向けて飛んできていたのだ。それも低空飛行で。
俺へ真っ直線だ。今まさに十歩ほどの距離。動きが早すぎて分からなかった。砂煙も俺の視野を遮っていた。
甘く見ていた。凍れる世界を使わなかったら、あのでっかい岩のような拳で俺は跡形もなく粉砕されていた。
凍れる世界。この魔法は十秒間、時間を止められる。神のごとくな魔法だ。しかも、ドラゴン語が非常に短い。
そりゃぁ、そうだ。なんせ十秒間、時間を止められる、ってだけの魔法。魔法を放った本人も時間が止まったことに気付けない。なにしろ、自分も止まってしまう。
なんて馬鹿げた魔法だ。だが、致し方ない。だから、ドラゴン語が短いのだ。
もし、この魔法を使い、時間が止まったことを実感したいのなら、事前に結界を張らなければならない。亜空間の構築ではなく、結界だ。しかも、上等なやつを。
結界は用途のよって幾つかに分けられる。例えば、結界内の全てを無かったものとする目くらましの類だ。あるいは、ある特定の何かを侵入させない。悪意のある者を排除する。その方法も様々だが、結界に触れた者を痛い目に合わせるってのもある。
障壁を張って相手の物理攻撃にカウンターを食らわすようなのもある。もちろん、その魔法攻撃版もある。いずれにしても、フィル・ロギンズによると防御魔法に分類されている。
領域を指定できないからだ。ここが重要だ。いくら上等だからといってケツ丸出しでは話にならない。
全ての魔法の影響を、指定した領域から排除する。それこそ地獄の火焔をも。
そんな結界を張るドラゴン語は異常に長い。そのうえ結界という性質上、張った領域から一歩も外には出られない。時間の止まった世界を、ただ結界の中から見守るだけ。
人は魔法を四つまでしか覚えられない。その点から言えば、凍れる世界を使うならもう一枠もそれに割かないといけない。しかも、使用するとしてだ、シミュレーションをすると魔法排除の結界の中で凍れる世界のドラゴン語を唱える。
成功するのであろうか。激薄で、あたかもウエットスーツを着るかのような結界が張れるのならまさしも。
一見して使いやすく、効果もデカい、神の御業のごとくな魔法を誰も選ばないのはこのためだ。だが、俺にそれはあたらない。いや、これは俺のためにあるような魔法といって過言ではない。
特性、竜王の加護持ち。
龍哭岳の大岩壁の下、月明かりに照らされるラキラとアトゥラトゥル。
アトゥラトゥルの体は半分瓦礫に埋まり、ラキラはその瓦礫をアトゥラトゥルからどかそうとしていた。俺とセプトンの戦いが始まったのをラキラは知ってか瓦礫を持ったまま、視線を俺に向けている。
落下から俺たちを助けたジュールはというと、ラキラの元に向かう途中、カンバーバッチに制止させられた。ラキラを心配そうに見ている。
カンバーバッチは仲間と並んで高みの見物だ。俺たちを十分見渡せる位置で腕を組んで笑みを浮かべている。
そして、セプトン。さっきは竜人化し、飛行するアトゥラトゥルを俺たちもろとも地上に叩き落した。これから更に攻撃を俺に加えようとしている。
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