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02


 俺にも蝶の塔がはっきりと見えていた。それは魔法が使えない者とって、ロード・オブ・ザ・ロードに入らない限り見えないものだった。ラキラはアーメット兜を被った。蝶の塔はもう目前だ。俺も兜を被った。


 ジンシェンは森に潜ったかと思うと蝶の塔で方向転換し、ロード・オブ・ザ・ロードに乗った。森のトンネルをひた走り、ライオンの塔、そして、イーグルの塔へと向かう。


 シーカーらの情報ではカール・バージヴァルやデンゼルらはイーグルの塔にいる。ラキラは彼らと合流し、シーカーの村を北から順に十二村全てを廻ろうとしていた。俺はというと、カールと一緒にアメリア国に戻り、アーロン王と対峙する。


 簡単な話ではないと思う。そもそもがアーロン王は俺たちを陥れようとしている。アーロン王が分別のある男で、己の野望と竜王の望みとを分けて考えられれば有難い話なのだが、ことはそうはいかない。


 魔法が使えるからこそ、王族なのだ。誰彼構わず魔法が使えるとなれば君主としての立場を失う。アーロン王にとってはそれこそ絶望の淵に叩き落されるようなものである。現に、カールとキースに対する行為そのものがアーロン王の恐れを物語っている。


 カールは議会と繋がっているし、キースは本人の自覚がないにせよイザイヤ教と繋がっていた。つまり、アーロン王は恐れのあまり、組織の純化、いわゆる独裁を目論んでいる。これは明らかに粛清である。


 彼にはそうしなければならない理由がある。バージヴァル家の名誉、存続を何よりも重んじている。それ以外に何も興味がない。生きる原動力であると同時に、それこそが己の生まれてきた意味だと思っている。でないと、息子を使って、もう一人の息子を殺そうなんてイカレたことは考えない。


 ライオンの塔を通過していた。俺は今、ローラムの竜王と会おうとしていた時と違った緊張感に襲われている。アーロン王を倒し、アメリア国をひっくり返すか。まさしくそれはクーデターだ。


 その考えが頭によぎる。出来れば平和的に解決したいものだ。アーロン王も俺の言葉に納得せざるを得ず、他国の王にも内政干渉させない。そして、ゆくゆくは他国もアメリア国に同調してもらう。


 これは人類存亡にかかわる問題だ。エンドガーデンが一つにならなければならないのに国同士が争っている場合じゃない。


 仲間が必要だ。俺の考えに賛同してくれる有力者を探さなければならない。それにはまず、俺が生き残らなくてはならない。


 あまり時間も掛けられない。ローラムの竜王の寿命はあと三年か、一年か、半年か、一か月か。向こうの世界にいる妻子も気に掛かる。





 イーグルの塔に、なぜかカール・バージヴァルはいなかった。デンゼルが言うには灰色のドラゴンに一緒に飛ばされたはず。そのうえで、どこかに逃げたのかもしれないというのが彼の言い分なのだが、それはもういい。訳の分からないやつだったし、カールに頼ることはもう何もない。せめて俺の邪魔だけはしないでほしいと心から願うばかりだ。


 俺たちに会って、デンゼルらの喜びようはなかった。何よりもラキラの無事を喜んだのだろう。ラキラはというと、デンゼルらにエトイナ山での出来事を克明に話した。真剣に聞く様子から、彼らは一丸となってラキラの手助けをするのだろう。うらやましい限りだ。


 俺はラキラと一時の別れを告げ、ロード・オブ・ザ・ロードをアメリア国に向けて馬でひた走る。王都から連れて来た馬は、二頭ともイーグルの塔にいた。ご丁寧にも灰色のやつは、デンゼルらと一緒に馬も飛ばしてくれていた。


 二頭いるのだから乗り換えれば馬にかかる負担を減らせられる。命一杯飛ばすことが可能だ。道も石畳。焦る気持ちもあった。俺は馬に鞭打った。その姿は客観的に見て馬に当たってるようで、うっぷん晴らしをしているのではないかと言われても返す言葉はない。


 しばらくしてロード・オブ・ザ・ロードの終着点に到達した。以前来た時は低木が折り重なって道を閉ざしていたはずだが、そんなものは見当たらない。石製のアーチ型門があり、石畳はそこで途絶えていた。


 ここまでが竜王のジェントリ、煙嵐公の領地だ。こっから先は支配の空白地帯ウインドウと呼ばれる地域となる。設置された四つのケルンを辿って王都に帰還するのだ。


 確か近くに四つ目のケルンがあるはずだ。道に迷ってはいられない。視線を巡らすと樹木の向こうに光りを見つけた。焚火とか松明とかの明かりではない。馬を引いてそこに行く。ケルンがあった。無造作に石を積まれているようだがその先端は輝き、レーザーのような光線を東に向けて発していた。


 光は三つ目のケルンの方向を指しているのだろう。魔法に目覚めたからそれが見えるようになった。ぼおっと馬に乗っていたカールが森を迷わず、ロード・オブ・ザ・ロードの入口にたどり着けたのはこのためだった。


 四つ目と三つ目のケルンの間はまだ、煙嵐の森の延長なのだろう、森はうっそうとしていた。進むのに苦労した記憶がある。今回は二度目だし、三つ目のケルンまでの我慢だと思えばそんなに苦痛ではなかった。


 光の導きに従って三つ目を通過し、その後二時間で二つ目まで来た。その頃には、日は暮れようとしていた。この日は早朝にシーカーの村を出て、エトイナ山で竜王に会い、イーグルの塔でラキラと別れた。とんでもなく忙しい一日であったが、それでももうひと踏ん張りしようと思う。


 光の導きがあるおかげで暗くても迷うことはない。すでにここは支配の空白地帯だ。はくれドラゴンに襲われる心配もない。一つ目のケルンまで足を延ばし、そこで野営する。


 アメリア国で歓迎されないのは分かっている。カール・バージヴァルもどこに行ったのか分からない。何があったのか問いただされるだろう。だが、ローラムの竜王が消えて無くなってしまうことだけは何があっても言うまい。


 カールが居なくなったこととそれが一緒になれば国民はパニックに陥る。ローラムの竜王は健在で、カールは冒険者となり、人類の発展のためローラム大陸の西へと向かった、とでもしておこうか。それがやつのためでもある。


 アーロン王との対決はもう少し先に延ばすつもりだ。同志を募らなければならない。準備ができ次第、秘密裏にローラムの竜王の元へ仲間を送る。力をつけるまでは何としてでも粛清から逃れる。明日はその第一歩となろう。


 野営するのは一つ目のケルン。王都センターパレスに最も近い地点だ。日の出とともに旅立ち、昼までには竜王の門を潜る。心の余裕を持ってアーロン王と会いまみえたい。


 だが、そんな俺の目論見ははなからもろくも崩れた。一つ目のケルンにカール・バージヴァルが居たのだ。石の囲炉裏に火をくべて、兎を焼いている。カールは、来た時の様にケルンの台座に腰を落とし、炎を眺めていた。






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