01
「帰れませんでしたね、キースさん」
ラキラ・ハウルはそう言って、うつむいた。神秘体験したようなあの美しい光景を見たというのに元気がまるで感じられない。そりゃぁそうだ。ローラムの竜王がいなくなるっていうのだ。間違っても気分はアゲアゲにならない。俺を心配してくれているのは有難いがそれだって、やっとのことだろう。
俺たちはエトイナ山を後にし、ジンシェンの背に揺られている。見渡す限りの金床の森。左手の空には、はぐれドラゴンが何匹もいた。草原キングランズでハゲタカのように獲物を探している。
風に流れている赤い髪がラキラの表情を隠していた。気分は沈んでいるのだろうが、その雰囲気から悲しんでいるようにも感じられる。
「いいさ。始めっからこんなこったろうと思っていたんだ。それでも、帰るヒントは掴んだんだ。俺にしてみれば上出来だろ?」
ラキラは、俺のことなんて何も知らない。笑顔で、だろ?って言われてもラキラに返答のしようがない。無茶ぶりのようだが、ラキラには俺がバカっぽく見えたはずだ。能天気で、空気を読めていない。けど、俺が凹んでないっていうのも何となく分かってもらえたはずだ。
少しは元気を取り戻してもらいたい。俺は大丈夫。強がりでも何でもない。この歳になれば、期待する自分に裏切られる経験を何度もしている。それだって、自分自身が悪いのであって期待する行為そのものには何の問題もない。周りっくどい言い回しになったが、つまり、俺が言いたいのは、過度な期待はしないようにしているってことだ。
真の問題はだ、時間の余裕があまりないってことだ。俺の世界に行ったキース・バージヴァルは絶えず俺を不安にさせる。あまり長い時間、やつを自由にさせてはいけないんだ。
何とか出来ないものかと考えてみた。ローラムの竜王が言った、この世界の秘密を見つけろって言葉は、俺をこの世界に飛ばした張本人を見つけろってことに言い換えられる。おそらくそいつは、竜王をも超える存在なのだ。
それなのに、噂にも聞いたことが無い。ザザムの竜王か、ガリオンの竜王か。それだってローラムの竜王を越えることが出来なかった。ローラムの竜王が言っていた。ザザムもガリオンもローラム大陸を狙っていると。それは、ローラムの竜王を怖がってローラム大陸に手出しが出来なかった事実を物語っている。
ローラムの竜王を越える存在。そいつは歴史の闇でうごめき、誰にも気付かれずこの世界を動かしている。であれば、相当なやつだ。そんなやつの尻尾をこの俺が掴めるのだろうか。
ローラムの竜王が言っていた。俺は選択を迫られる。つまり、そいつが俺に何かさせようとしている。言い換えれば、どこかのタイミングで俺の前に現れる。弱みにつけ込んで俺を誘惑するんだ。
そいつは、いつもこんなことをやって歴史を操作している。幾ら俺が焦っても、元居た世界へは俺のタイミングで帰れない。
だが、俺に接触してくる前に、俺の方からやつの元に押しかけるって手も考えられる。あるいは、そういう意味でローラムの竜王は世界の秘密を見つけろと言ったのかもしれない。
ローラムの竜王はエトイナ山に人々を集める代償に、俺に力を分け与えた。その時の言葉も意味深だ。この力が世界の秘密を解く時にも助けになる。ローラムの竜王の望みに応えるということと、世界の秘密を知ることは結果的に、同じ道を歩むことなのかもしれない。
いずれにしても、今の俺には流れに身を任せる他に打つ手がない。出来ることといえばいつものように、キース・バージヴァルが向こうの世界で何かしでかしてないことを祈るだけだ。
『ラキラは、ドラゴンを戦いの道具にしたくないんだ』
ラキラの肩にドラゴンがいた。濃い紫色のカエルみたいなやつだ。カール・バージヴァルにヤドリギを奪われ、はぐれドラゴンになってしまうのをラキラに助けられたあのドラゴンだ。シーカーの村に置いてこられたと思っていたが、まだラキラから離れていなかった。
『マレビト、ご苦労だったな。自分の件は上手くいかなかったが、気を落とすな』
“マレビト”とは恐れ入った。ローラムの竜王に会った時もこいつはずっとラキラの懐にいて、俺たちの話を盗み聞きしていた。
『大丈夫。ラキラも帰れるようにしたいと思っている。気休めじゃないぞ。何か情報を得れば、おまえに伝えるってよ』
頭の中に直接話しかけられているような感じだ。カエルのドラゴンの前で黒い魔法陣が現れては消え、現れては消える。泣いたり怒ったりしなければ、魔法陣は黒一色で、色の変化はないようだ。
『シーカーの歴史で十二の主に乗れたのはラキラが初めてなんだぜ。他のやつはエラっそうなだけでラキラの半分にも満たない。あ、半分ってぇのはヤドリギの大きさな。ドラゴンライダーのレベルは、乗れるドラゴンのヤドリギを見れば分かる。逆を言えば、ヤドリギの大きさを見てドラゴンライダーは、乗れるドラゴンを選り分けている』
ドラゴンライダーって言うのか、あいつらは。それでもって、レベルがある。それにしてもベラベラと、こいつはどこまでも口が減らないやつだ。
『色々知っているんだな。ラキラに聞いたのか』
俺も、口の前に魔法陣を造っていた。一言二言だからパッと出てすぐ消える。なんつぅか、うっとうしい。慣れるまでに相当時間がかかりそうだ。
『違うよ。村で飼われていたやつに聞いたのさ』
飼われたやつとはあまりの言い草だ。ラキラにまとわりついている自分のことはいったいどう思っているのか。
『そういうことか。なら、ついでにもう一つ。なんでおまえは、はぐれドラゴンにならないんだ。ほら、随分長い時間、ヤドリギから離れているだろ?』
『それな。ドラゴンライダーもそうだけど、ラキラはヤドリギと一緒の力を持っているんだ』
なるほど、そういうことか。ドラゴンにとって一部のシーカーは世界樹の代わりになり得るんだ。例えるならラキラは巨大な大樹。
「蝶の塔が見えてきました」 ラキラは正面を指さした。「ロード・オブ・ザ・ロードに入ります」
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