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06


 朝起きて、すっかり板についたパレードアーマーを着込んだ。ただ目に慣れただけかもしれないが、似合っていると思う。ブーたれていたのが嘘のようだ。今は愛着が湧いて大のお気に入りになっている。セットであるソードベルトも着用した。


 いつもの面子の前で朝食を食べているとラキラ・ハウルが現れた。彼女が言うには、デンゼルたちはイーグルの塔にいる。デンゼルとは、タイガーの影武者だった男だ。


 昨日、狼煙が搭の頭頂部から上がっていたそうだ。魔法が使えない彼らがそれ見た場合、地上五十メートルから突然煙が上がっているように見えるという。


 俺たちは、あの灰色のドラゴンに本隊から隔離された。本隊もボードゲームではないが、“スタートに戻る”を灰色のやつに強いられていた。


 灰色のドラゴンはローラムの竜王に命じられてそうした。命より大事なヤドリギから離れ、攻撃魔法ではなく、空間魔法を使った。ローラムの竜王に命じられる以外、賢いドラゴンがその様なことをするだろうか。


 だとしたらなぜ、俺たちだけが引き離されたのか。一方で他のシーカーらは元の位置、イーグルの塔に戻された。お前らには用がないと言わんばかりだ。そして、昨日ドームで言った俺の、異世界人だという言葉。ドームに集った十二人はその意味を考えた。


 俺が言うように、ローラムの竜王は俺に用があるに違いない。結界が一時的にしろ弱まったのも、ロード・オブ・ザ・ロードの庭師が朽ち果ててしまったのも、それに関係がある。


 まぁ、俺が異世界転移したのは百歩譲ってもしかして、ローラムの竜王の仕業なのかもしれない。が、しかし、呼び出されたと断言したのは全くの嘘、はったりだ。それによって別々な事柄を相手に勝手に結びつかせ、あたかも出された答えが理路整然としているように見せかける。ミスリードと言っていい。シーカーら十二人は俺にまんまと騙されたわけだ。


 俺はここを出ることを許された。なんにしろ、シーカーらは結果的に進むべき道を間違えなかったのだ。ラキラ・ハウルは俺を森に案内した。


 ドームから先に続く森の道。人の手で整備された自然公園のようだった。小川には橋が渡され、傾斜地には丸太の階段が付けられている。


 ラキラ・ハウルは森を奥へ奥へと進んだ。やがて立ち止まったところは森が開け、その先は農園のように多くの木々が整然と並んでいた。そして、どの木の下にもドラゴンが居た。


 丸まって寝ているやつ、鎌首を上げて俺たちを見ているやつ。四本足に翼のやつもいたし、前足が翼になっているやつもいた。蛇の様に長いやつもいたし、岩のようにゴツゴツしたやつもいた。


 驚くしかなかった。固唾を呑んでその光景を魅入っていた。昨夜、目にした光景から何匹かのドラゴンを飼っているとは思っていた。だが、これではまるで牧場だ。ざっと見、三十頭はいる。


「わたしたちはいつの頃からか、世界樹の栽培を始めました。実をたべるためです。栄養価が高く、飢餓に苦しむわたしたちを助けてくれました。その頃はまだ複雑な下処理をしなければ食べられないものでしたが、これもいつの頃かは分かりません。ドラゴンがヤドリギとした世界樹の実が、癖がなく、味がよくなることを知りました。実も多く成るのです。天候に左右されず、不作も無くなり、わたしたちの生活になくてはならないものとなっていったのです」


 ラキラ・ハウルが世界樹から実を一つもぎ取って、差し出した。リンゴのようだった。赤く丸みがあり、見ようによっては大きなさくらんぼのようでもある。


 ラキラはそれを俺に食べさそうとしている。だが、すぐ傍にはドラゴンがいた。寝ている姿はドラゴンと言われなければ岩だと思う。ゴツゴツしたやつで、大きさはゾウほどある。


 その実を手に取るには、俺はそこまで行かなければならない。距離にして五メートルほどある。もうすでに結構近付いているのに、まださらに近付けという。


 危険はないことは知っている。ラキラ・ハウルはドラゴンと話せるのだ。間違っても俺を襲って来やしない。


 とはいえ、慣れって言うものが必要だ。おそらくは、この岩っぽいやつがここいらで一番大人しいやつなんだろう。それを分かっていてラキラ・ハウルは俺を世界樹の袂に呼んでいる。


 恐る恐る近付いた。俺はドラゴンを絶えずチラ見しながらラキラの手から実を取った。ドラゴンは知らんぷりで俺に目を合わせようとはしない。ドラゴンも俺に気を使ってくれているのだろう。


 ちょっと笑えたが、声に出して笑える心境ではない。俺は実をかじった。果皮は薄く、果肉はシャキッとしていてびっしりと蜜が詰まっている。果汁は濃厚、口いっぱいに広がる甘みと最後に軽い酸味。


 高級フルーツだ。一度食べたら忘れられない味になること間違いなし。思わず全部食べてしまった。


「何代にも渡って世界樹とドラゴンとの生活を続けるうちに、わたしたちの中にドラゴンと話せる者が出ました。おそらくは世界樹の実の力のためなのでしょう」


 世界樹によって体質が変わった。あるいは、世界樹の実を食べることによって突然変異が起こった。賢いドラゴンは環境に合わせて独自の進化を遂げているとカールは言った。彼らは世界樹の実しか食べていない。


 もしかして、その環境に合わせるっていうのは間違いなのではなかろうか。世界樹はドラゴンと同じく魔法の産物だとされる。進化は意思であり、目的だったとしたら。突然変異などという偶然の結果ではない。


 これから人類の中でも淘汰が始まって行くのであろう。だが、言うにはまだ早急だ。環境に適応した進化こそが人類の未来だとは限らない。


 ドラゴンと話せる人間とそうでない人間は交わらない。シーカーはさげすまれている。シーカーが特別な力を得たと聞いたならエンドガーデンの人間がどんな行動を取るか、分かったものではない。


 カールのようにドラゴンを駆逐しようとする人間もいる。ドラゴンがいなくなればシーカーが得た力はないものと同じだ。いつしか力は忘れられ、初めからなかったかのように消え去って行く。






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