04
女の視線が俺の髪から突然、別のところに移った。明らかにバルコニーの先を見ている。もしやと思った。さきほどバルコニーの外を何者かが月を遮ったのか一瞬、影が部屋の壁を通り過ぎていった。
俺はバルコニーに急いだ。やはりドラゴンである。バルコニーを背にして飯を食っていたので、全く見られなかった。今度のやつも人が乗っているのだろうか。ドラゴンのシルエットが崖下のドームへと吸い込まれていく。
またしてもドーム。そこでは何が行われているというのか。ラキラ・ハウルは行ったっきり戻ってこない。少し待って、とは言っていたが、一向に姿を現さない。きっとトラブルに巻き込まれている。
ほどなくして、またドラゴン。背中にはシーカーが乗り、マントを棚引かせていた。
なぜこんなにぎやかになっているのかは、大体想像出来る。原因は俺だ。カール・バージヴァルなら穏やかに話が済むのだろうが、相手がキース・バージヴァルである。おそらくは各地のシーカーの有力者がここに集まって来るのだろう。いくら酔いたい気分だといってもこれはもう、飲んではいられない。
ともかく、飯だけは食おう。シーカーたちの心証が悪くなる。些細なことでも抜けがないよう細心の注意が必要だ。ラキラ・ハウルに頼り切っていては、この状況は打開できない。俺の問題として俺が解決する気がなければ、俺は一生この地に縛り付けられる。
秘密は漏らしてはいけない。俺が目の当たりにしてしまっているのは、シーカーにとって最も重要な秘密なのだ。俺は完食して、旨かった、有難うと給仕の女を帰した。
思っていた通り、時間をおいて次から次へとドラゴンが飛来した。月夜に飛行するドラゴンは美しかった。天翔けるようなドラゴンがいたり、舞うようなのも、宙を切り裂くようなのもいた。
月光が醸し出す神秘的な雰囲気も画になった。青い光に照らされるシーカーたち。ドラゴンと一体となって夜空にあった。
始めは恐ろしくもあった。が、今は心が奪われている。ドラゴンの背にいる男たちはマジ英雄だ。敬意を払われるべき存在なのだ。
エンドガーデンで彼らがうとまれ、厄介払いされている事実を思うと寂しくなってしまう。敬意を払うどころか、エンドガーデンの民としてカウントされていない。必要な時だけ利用する王族の傲慢さもさることながら、彼らに興味を持とうとしない無知ぶりには呆れ果てて開いた口がふさがらない。
十一体目のドラゴンが飛来して一時間経った頃だった。俺は崖の下のドームに呼び出されていた。十二人のシーカーとラキラ・ハウルが、円を描いて椅子に座っている。テーブルはなく、床にローラム大陸が描かれていた。
俺はそのローラム大陸の真ん中に立たされていた。全方位から視線を受けている。パレードアーマーを一生懸命磨いたかいがあるってもんだ。エンドガーデンの王族の威厳は保てたに違いない。
と、まぁ、威勢を張ってみても、これは自虐ネタに他ならない。どこからどうみたって俺の立場は弱いってもんじゃない。エンドガーデンの厄介者と言われているシーカーらから見ても今の俺は、厄介者以外の何者でもないのだ。
彼らの言葉を待っている。彼らはもう結論に達しているはずだ。こっちからはガタガタ言うまい。下された結論如何で俺は言葉を発すればいい。堂々としていることが大切だ。
ろうそくの明かりに十二人とラキラが照らされている。その内十一人は、おそらくはさっきドラゴンに乗って来た者たちだ。マントを肩から掛けているやつ、ラキラのように宗教騎士が羽織るような外套を着るやつ、マント無しのロングコートタイプの鎧のやつ、死神風のフードが付いたローブのやつ、姿はそれぞれで、その誰もが威圧感を放っていた。
シーカーの間では名の知れた者たちなのであろう。当然、ラキラ・ハウルもその一人で、タイガーと二つ名を持つだけはある。他のどの椅子よりも大きな椅子に腰を掛けていた。彼女がこの十二人の英雄を束ねている。
とはいえ、堅い感じがする。疲れてもいるのだろう、腕を組んで目をつぶっている。別れるまでのラキラの雰囲気と今とではまるで違う。そりゃぁな、分かっているさ。既定路線を勝手にくつがえしたうえ、相手がキース・バージヴァルだ。いかにタイガーとは言え一筋縄ではいかなかったのだろう。
ロングコートタイプの鎧の男が言った。俺を監視していた兵士と同じ姿だった。
「二年前、ユーア国に突然ドラゴンが飛来した事件はご存知でしょう、キース・バージヴァル殿下」
「その件は、」 こいつがこの会のホスト。この村の長か、なんかだろう。「聞き及んでいる」
「エンドガーデンの者は皆、ドラゴンは海の向こう、ザザムかガリオンから来たと思っています」
「思っていますって? 違うのか?」
「ドラゴンは結界を越えてエンドガーデンに入った」
「ほう、面白い話だな。だが、それが本当なら大変だ」 はぐれドラゴンは結界を越えられない。「エンドガーデンの人々は安心して暮らせやしない」
「見た者がいます」
「見た者がいる? 何かの間違いではないか」
「我々もそう思いました。それで、ローラムの竜王に会うと決めた」
なるほど。カールも不思議に思っていたがそういう訳でタイガーのお出ましってことだったんだ。
「タイガーがおっしゃるにはロード・オブ・ザ・ロードでも異変があった。つまり、目撃証言の信ぴょう性が高くなったというわけです。どうやら事態は切迫しているようです。是が非でもローラムの竜王に会わなくてはならない。諦めるわけにはいかないのです」
「その件なら大丈夫だ」 確かにローラムの竜王に何かあったのは間違いない。「あなた方が心配する必要はない。俺はそこにいるタイガーと約束した」
「残念ながら、殿下がこの村から出ることは叶いません。いかにタイガーといえども習わしには逆らえないのです」
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