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07

 ブライアン王の執務室の前にバリー・レイズが立っていた。アーメットヘルムは脇に抱えられ被ってないもののフル装備である。


 エリノアの実家、パターソン家の私兵からブライアン王付きの騎士となっていた。なるほどエリノアはもうソーンダイク家の顔色をうかがわなくてもいいってわけだ。そりゃぁ、リーマンも警戒するわな。


 バリー・レイズの装備はどう見てもやっぱ鉄製ではなかった。つやつやとした漆黒色で、表面は鉄のように叩いて伸ばした感が全くなく、磨いて光らせた感もない。どちらかというとガラス細工のような滑らかさで、輝きである。この世界では見たことが無い。


 ヴァルファニル鋼。としか言いようがない。だが、しかし、フィルに教えてもらった『嘘つき勇者のアイザック』も連想してしまう。剣はボキボキ折れ、盾は砕かれたというが、実際その表現がガラスっぽく的を射ている。


 俺の世界には強化ガラスってのがある。スペーステブリがぶち当たっても割れない強度を誇っている。それと一緒ということか。いやいや、それは考えづらい。『嘘つき勇者のアイザック』では現に割れてしまったのだ。


 そのヴァルファニル鋼は偽物だったのではないか。安直にそう解釈しそうだが、そうとも言い切れない。目の前にあるそれはまさにもろそうだ。なのに戦場では戦えた。『嘘つき勇者のアイザック』の英雄譚えいゆうたんもあながち間違ってはいないかもしれん。


 ここは魔法の世界だ。俺の常識は通用しない。ヴァルファニル鋼には何か他に重大な秘密が隠されているのかもしれない。


「陛下がお待ちです」


 刺すような目つきとトゲのある言いぶり。バリー・レイズは執務室のドアを開けた。こいつ、俺に恨みでもあんのか。身に覚えは全然ないが、あのキース・バージヴァルだったらなぁ。裁判の証言者ものべつ幕無しだった。被害者がどこにいてもおかしくはない。


 王の執務室に入った。バリー・レイズも後ろについて来ている。凄い殺気だ。背中が寒い。マジで斬りかかって来るんじゃなかろうか。冗談抜きで俺はこいつに憎まれている。


 ブライアン王は大きな机に座っていた。以前そこにはアーロンが座っていた。あのとき机は書類が山積みだった。今はきれいさっぱりで、机の上には布が掛けられたサッカーボールほどもの物があるだけ。仕事をしていないってわけじゃない。政治の仕組みが変わっただけのことだ。


 ブライアン王の後ろには当然、エリノアもいた。ブライアン王は満面の笑みである。相変わらず背中は寒かった。俺の後ろにずっとバリー・レイズが張り付いている。


「陛下」 身を低くし、片膝を立て、頭を下げた。「キース・バージヴァル、参上仕さんじょうつかまつりました」


「よく来てくれました。兄上」 机に対してブライアンは小さすぎる。「母上、これを」


 エリノアは机の横に立った。机の上にあるサッカーボール大の何かを、下に引かれている布ごと俺に手渡した。


「陛下からのお礼の御品です。陛下がこの国最高の職人に作らせました。デザインも陛下のものです」


 お礼の品? ひざまずいたまま、被っている布を取った。骸骨をかたどった鉄製黒色のアーメットヘルムだった。


「陛下は決闘裁判を御観戦されていました」


 アレクシス・チャドラーとの戦いをか。なるほど、俺に頭部防具がないので作ってやらなくてはと心配した。それで骸骨か。俺の強化外骨格パワード・エクソスケルトンに合わせた。


 発想が捻りもなく安直過ぎる。子供の考えそうなことだ。だからこそ、ブライアンが試合を見てホントに考えたと言えるのだがな。


 子供が一生懸命考えて、画をかいている姿が目に浮かんでしまう。俺はやはりおっさんだった。そういうのにたまらなく心を揺さぶられる。


「兄上」 ブライアンは心配そうな顔つきだった。「気に入ってくれましたか」


「はい。もちろんです。陛下がお傍におられると思い、これから先、ずっと、身に付けさせていただきます」


「よかった」


「今、身に付けてもよろしいでしょうか」


「もちろん。その布はマントです。それも身に着けて下さい。世も見たい」


 アーメットヘルムの下に敷かれていた布はマントだった。確かにどの近衛兵もマントをしってからなぁ、王族が何もしてないのは可笑しいってことか。どれどれ、着てみっか。


「では」


 俺は骸骨のアーメットヘルムを被った。裏張りのインナーパットは革製である。


「着け心地は?」


「ピッタリです」 さすがはこの国最高の職人だ。「それに肌触りがいい」


「よかった。マントも着けてください」


「失礼いたします」 


 立ち上がり、布を広げた。黒地に白で大きく髑髏が描かれている。刺繡だ。アーメットヘルムといい、昨日今日では作れまい。ずっと前からブライアンは俺のために用意してくれていた。マントを羽織った。


「回ってくれませんか。マントも見せてください」


 立派だが、アーメットヘルムとこれとでは相当目立つぞ。俺はゆっくりと廻った。ブライアンは机に身を乗り出している。


「兄上、凄く似合っています。敵は恐れて近づきもしないでしょう。アメリアの死神って」


 ああ、そういうコンセプトね。しゃぁないか。子供が好きそうだしな。多分、一番ビビるのはカリム・サンたちだろうな、違った意味で。


「それで、チアナとイスランはどうでした。兄上はどうやって倒したのです」


 乗って来たな。王といえどもやっぱり子供か。


「はい。強敵でございました。コウ・ユーハン殿もウマル・ライスマン殿も敵ながら称賛に値するかと」


 敵の見事なまでの戦略と連携を話した。俺たちはそれにハマってまんまと追い詰められていった。勝てたのは防具と特性、竜王の加護のおかげだった。敵兵五十人をせん滅し、コウ・ユーハンとウマル・ライスマンは生け捕りにした。


 補足すると強化外骨格は魔法の産物でローラムの竜王に貰ったと竜王の門では周知されている。敵兵はというと全滅していない。生かしたとなればアトゥラトゥルのことを話さなければいけないからだ。


 ブライアンはコウ・ユーハンとウマル・ライスマンの魔法のくだりをいたく気に入ってくれた。


「兄上はなぜ魔法を使わなかったのですか」


 確かに俺は窮地に陥ったと言いながらも魔法を使っていない。素朴な質問だ。だが、魔法の使い手にとっては答えにくい質問でもある。


 背中から強い視線を感じる。バリー・レイズだ。よっぽど俺の魔法が気にかかるのだろう。エリノアの雰囲気も変わっていた。終始聞き流していた風であったのに目がすわっている。


 まさか俺が魔法の相性が悪かったとか、戦闘に不向きな魔法だとか答えるとは思ってないだろうな。それでなくとも魔法の使い手が己の手の内を見せたくないのは知っていよう。そんなに期待されてもねぇ。


 俺はあの時はまだ魔法を使う踏ん切りがついていなかっただけ。ただ、いよいよとなれば使うつもりではいた。つまりは、まぁ、出しそびれだ。


「必要としませんでした」


 ブライアンは俺の答えに手を叩いて喜んだ。さすがはわたしの兄上、とえらく興奮していた。


「陛下、この話はこの辺で」 逆にエリノアは面白くないようだった。「殿下に頼みたいことがおありなんでしょ」


 明るかったブライアンの表情が急に曇った。よっぽど言いにくいことなのだろう。


「そうでした。兄上」 うつむいた下で上目遣いだった。「申し訳ありませんが、一足先にユーア国に行ってもらえないでしょうか」





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