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  作者: 雪野 葵
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最初の依頼主


 千晶先輩が封筒から便せんを取り出す。それも、また、春らしいデ

ザインの可愛らしい便せんだった。

 そんな可愛らしさとは反対に、字はとても丁寧に書かれていた。几帳面な字だった。

 千晶先輩が静かに読み始める。

 私は、その邪魔をしない程度に横から覗いて読んだ。



 相談部のみなさんへ

 

 早速ですが、わたしの悩みを聞いてください。

 わたしには小さな頃から、ずっと一緒にいた幼なじみがいます。一人は、とても優しくて、いつもにこにこ笑っているような

優しい女の子の《Y》です。

 よく、同級生から嫌がらせを受けていましたが、それでも、私たちの前では笑顔を絶やさずにいました。

 そうして、もう一人は、世話焼きでしっかり者の男の子の《S》です。その時、《S》は野球部に入っており、今も続けています。わたしの初恋相手でもあります。


 幼なじみの《Y》と《S》は、両思いでした。私は、2人の想いを知っていました。なので、自分の想いは、ずっと心の中に閉じこめていました。


 二年前の夏、《Y》は飲酒運転のトラックにひかれ、死にました。不幸な事故でした。

 私はそれを、ただ見ていることしか出来ませんでした。大事な親友を見殺しにしました。


 最近、死んだ《Y》の夢をよく見るようになりました。夢の中で《Y》は、口を閉ざしたままで、何も言いません。

 けれども、自分は、責め続けられているような気がしてつらいのです。


 《Y》がわたしに伝えたいことは何なのでしょうか?

 そして、今、私がしなければならないことは一体、何でしょうか?

 お願いします。教えてください。



 便せんには、そう綴られていた。

 親友を見殺しにした。

 その一言が、私の心の奥底にあった記憶が引きずり出す。それは、思い出したくない記憶。ずっと私を縛り付けているもの。 

 私もこの依頼主と同じ…

 人を見殺しにした。

 助けられるはずの命を、見殺しにしてしまった。

 頭の中を駆け巡るのは、蒸し暑い夏のあの日。街中を歩くたくさんの人。ビルの屋上。周りが見上げるその先ーー

 何もかもがフラッシュバックして、走馬灯のように駆け巡る。


 『見殺しにしました』

 『見殺しにしました』


 その言葉が、昔の自分に鋭い矢を向け、何度も突き刺さす。


 あの時は、どうしようもなかったんだ。仕方がなかったんだ!自分のせいではないっ!

 ううん、違う…!!もし、あの時、声を出して叫んでいれば、あの人は助かっていたんだ!


 自分の心の中にあるのは、懺悔の気持ちだけ。

 ごめんなさい、ごめんなさい…と、誰に対してかも分からず、謝り続けたのでした。


 



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