決意
「……ゆきちゃん??大丈夫?」
「は、はい…。すみません、考え事しちゃって…」
「具合悪いなら言ってね」
「大丈夫です。…すみません」
心臓がどきどきしてる。冷や汗や手の震えが止まらない…
大丈夫、大丈夫と自分に何度も言い聞かせる。そうじゃないと、自分が自分でなくなりそうな気がした。
やっとのことで呼吸を整えて、心配している千晶先輩の前で笑って見せた。
千晶先輩は、まだ、心配そうに私を見つめていたけれど、ゆっくりと便せんの方へ目を向けた。
「…人が死んだんだね。しかも、目の前で」
「つらいですね」
「依頼主は、幼なじみの死を目の前で見てしまった。そして、幼なじみを助けられなかったことを、後悔している。夢にまで出てくるようになった…ということだね」
死んだ親友が夢にまで出てくる。
そうしたら、私も、責められているように感じるのかもしれない。
自分が見殺しにしたと思えば、余計に……
その罪の重さに押しつぶされるぐらいつらいはずだ。
「ゆきちゃんは、どうしたい?」
「…??」
「無理に、この依頼主の相談に乗らなくてもいいんだよ。ゆきちゃんの荷が重くなってしまうのであれば、僕が変わりに依頼を受ける。
あとは、ゆきちゃんがどうしたいかだよ」
千晶先輩が微笑む。
それは、千晶先輩の優しさであり、気遣いなのだと私は感じた。
私は自分の心で考える。
私の中で一番強い想い。それは、依頼主を助けたいという気持ち…
苦しんでいる依頼主を救いたいという気持ち…
「私は…」
言いかけた言葉が、急に止まる。
助けたい。けれども、怖い。
でも、もし、過去の自分のように苦しんでいるのであれば…
私は……
「い、依頼は私が受けます」
はっきりとした自分の気持ちを、千晶先輩に伝えた。
千晶先輩は、嬉しそうに微笑む。
不安で苦しかった呼吸が、その微笑みのおかげで少しずつ楽になっていった。
日溜まりみたいなあたたかい微笑み…
その微笑み方が、ちょっとだけ優しかったあのおばあちゃんに似ていたのでした。




